TOWN TALK / 1か月限定の週1寄稿コラム
【#4】お雑煮を象に
執筆:桂九ノ一
2026年1月2日
先日、立ち呑み屋で汚いおっさんに
『お前はええ顔してる。わしの若い頃にそっくりや』と言われました。
未来が怖くて仕方がないです。
どうも落語家の桂九ノ一です。
年が明けて、2026年は師匠九雀に入門して10年の節目。
入門時から相も変わらず、たいした努力もせず、しょうもない嘘をつき、怒られ、恥をかき、枕を濡らし、乾かし、ええ加減に過ごしてきた。
世間の同世代は出世を重ね、
やれ直列6気筒だ
やれエスプレッソマシーンだ
とアメリカンドリームを手にしているが、
伝統芸能のこの世界で10年程度では若手も若手。
エスプレッソを飲むどころか、嫌いな先輩に薄いお茶を出す事で自我を保つ日々。
後輩が入らなければ優雅にお茶を飲む事も叶わないこの世界。
どっこいところがさあ大変。
入門者が減っている。
落語家になりたい人が減っている。
大変困った。
募集をかけるものでは無いが、人材不足の現在、背に腹は変えられぬ。噺家にならないか。私のために。
『落語聞いた事ないよ』というあなた。ご安心を。小さい頃から落語が好きで入ってくる方も居られるが、そうとも限らないのがこの世界の不思議なところ。落語を聞かずに入ってくる酔狂人もそれなりに居て、かえって粋だと褒められたりもする。
先輩方に聞いても、志した理由は様々で、
・落語なら出来ると思った
・座って仕事がしたかった
・お姉ちゃんが勝手に応募して
・ほんの出来心で
・最初は遊びのつもりだった
など
かく言う私は
中学時代に立ち読みした音楽雑誌で、
ザ・クロマニヨンズのマーシーが
『落語は面白いよ、休みは寄席に行っている』
というインタビューを読み、落語家になったらマーシーに会えるんちゃうかと言う下心ひとつで入門して今に至っている。
そして、落語を聞くとこれが面白い。目線ひとつで情景を表現して、喋り方ひとつでお客さんがドッと湧く。千度聞いた話でもお腹を抱えて笑う事も感動することもある。10年経ったが、わからない事だらけで、ずっと難しく楽しい。マーシーも夢中になるはずだ。
変に凝り性で、ロマンチストで、だらし無いあなた。いっぺん寄席に遊びにおいでなすって。
そして、私にエスプレッソを淹れてほしい。
あけましておめでとうございます。
プロフィール
桂九ノ一
かつら・くのいち|2016年桂九雀に入門。NHK新人落語大賞に2年連続決勝進出。アナログDJとしても活動しておりFUJIROCK FESTIVAL’25に出演。東京大阪の二拠点生活中。
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