TOWN TALK / 1か月限定の週1寄稿コラム

【#1】ワテらカタギやないんやで

執筆:桂九ノ一

2025年12月12日

正座とは罪人に罪を白状させる座り方で、そのようなスタイルで人を笑わせたり膝を笑わせたりしております上方の落語家の桂九ノ一です。

今月いっぱい、こちらで駄文をダブンダブンと書かせていただきます。稚拙な文章は持ち前の愛嬌でカバーするとして、本日は落語家の年始の風景についてお話しします。

元旦から寄席の方では正月公演がはじまり、朝から晩まで特別興行を打ち、晴れ着姿が客席を彩り、舞台は餅花で飾られて、やんちゃな師匠方はお酒を呑まれてベロベロで高座にあがり、普段は15分かかる古典落語をなにがどうなったか6分で降りてきたりします。若手の方はお年玉を貰い、即開封し、中身が少ない師匠のお茶を薄めに提供し、新しいスニーカーを買う算段を立てたりと、千差万別の春景色でとても賑やかです。

後輩に渡すお年玉。私のステッカーを貼って渡します。

お正月、落語家はなにかとバタバタで忙しい。

そうなると一門が集まることはなかなか出来ません。

そこで『ちょっと早い目に新年の挨拶やっとこうや』となり、上方落語界では古くから『事始め』を行います。

毎年12月13日になると門弟が師匠宅に集まり、一年間のお礼を伝え、床間に鏡餅を飾り、師匠にお小言をいただき、それを忘れ、鍋をつつき、同業者の悪口を垂れ、円安を恨み、平和を願う。最終的にはみんなでマイムマイムを踊るという

『ワテら堅気やないんやで』と一門の結束を強くする極めて珍しい文化です。

九雀一門宅での事始め桂九ノ一、お囃子の岡野鏡、桂九寿玉の鏡餅

他に事始めをやっておられるのは京都の花柳界と関西を拠点にされてるヤの付くこわい商売の方々で皆様もれなくマイムマイムを踊れるとの事。

想像すると恐ろしいですね。

動揺(童謡)がかくせませんワワワ。

お後と交代です。

プロフィール

桂九ノ一

かつら・くのいち|2016年桂九雀に入門。NHK新人落語大賞に2年連続決勝進出。アナログDJとしても活動しておりFUJIROCK FESTIVAL’25に出演。東京大阪の二拠点生活中。

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