ファッション

デザイン性も高く、山でも有効なライフスタイルシューズ。

あの人の、偏愛スタンダード。

2025年12月30日

photo: Shunsuke Shiga
illustration: Hitoshi Kuroki
edit: Koji Toyoda
2025年9月 942号初出

NEW BALANCE

一方で〈ニューバランス〉のベアフットシューズ「ミニマス」シリーズも愛用中。きっかけとなったのは「MT10O」。「’10年代のベアフットシューズの復刻モデルですが、シルバーカラーや巧みなメッシュ使いがモード的。ファッション文脈で捉えてもかっこいいなと思いまして。だから、〈ディガウェル〉のワイドストレートパンツともこんなふうに息がぴったり。その上、ジャージ素材は風抜けも良くて、『MT10O』のソールはグリップ力も抜群。つまりシティハイクの相棒としてもかなり優秀なんですよ」

ASICS × HIDDEN NY

最近、田窪さんが山でセルフテストを行い、そのポテンシャルの高さに夢中なのが、〈アシックス〉のライフスタイルシューズ「ゲルベンチャー6」。「ご覧のとおりのシティな顔つきですが、想像以上に路面のホールド力が高くてびっくり。どうやらトレイルシューズのソールパターンを応用しているみたいなんです。これに〈バル〉のトラックパンツを合わせれば、軽登山くらいなら問題なし。リップストップナイロンがきちんと防風してくれますし、下山してもそのまま街に溶け込めるのもいいんです」

「何も山に行くからといって、ガチガチなアウトドアウェアを一通り揃える必要はありません。僕たちが普段着として手に取るデザイナーズブランドの洋服や靴でもアウトドアで十分に使えるものは山ほどあります。『これいいな』と思ったものは迷わず山でフィールドテストを行ってふるいにかけて、『使えるもの』と『使えないもの』に分ける。そうした工程を何度も経て、僕の中で徐々にマイ定番というものが定まってくる。山に登ることと同じく、新しきも古きもファッションをこよなく愛するがゆえに編み出した僕なりのフィロソフィーなのですが、なかでも最近はその道筋をすっ飛ばして突如ニュースタンダードに昇格したのが、こちらの〈ニューバランス〉や〈アシックス〉のライフスタイルシューズですね。元々はハイテクな機能をのせた、専門性の高いトレランやランニング用でしたが、今をときめくファッションデザイナーやセレクトショップがアレンジを加えたものがどんどん誕生し、今やファッション文脈で語られるスニーカーとなりました。つまり、そのもの自体がファッションとアウトドアが混ざり合って一体化した僕にとって願ってもない最高の存在なんです。こういったものに、山目線で適度に機能的だと判断した〈オーラリー〉のウールスラックスや〈ディガウェル〉のジャージなどのシティウェアをミックスすると日常を快適に楽しめる。アーバンアウトドアとはまさにこのことです」

NEW BALANCE × JUNYA WATANABE MAN

オールホワイトな色合いに薄底のソールも合わさって、クラシックなデッキシューズのようなベアフットシューズ「UX200」。実は〈ジュンヤ ワタナベ マン〉と〈ニューバランス〉のコラボアイテムだ。「ハイテクスニーカーなのにトラッドな雰囲気なので、写真のように〈オーラリー〉のスラックスを合わせるのも手。ウール素材だから調温機能にも優れていて、少しくらいだったら連続で履いても匂いません(笑)。それに『UX200』の薄底ソールに足底が鍛えられて、正しい歩き方を覚えられる副産物付きです!」

ASICS

アシックス熱に背中を押されて、2足目として手に入れたのが「HN1-S ゲルベンチャー7」。ファッションデザイナーのキコ・コスタディノフさんが率いるチームがデザインを手掛けた代物で、つま先のメロンみたいなエンボス加工までとことん洒落た作り。「隙のないファッションデザインですが、ベースモデルはトレイルランニングシューズ。気が向いたら、山やハイキングにそのまま行ける仕様なのが嬉しい。冬のマイ定番〈221ヴィレッジ〉のウール混パイルスウェットパンツともベストマッチ」

プロフィール

デザイン性も高く、山でも有効なライフスタイルシューズ。

田窪 朗 『山荘 飯島』オーナー

たくぼ・あきら|1986年、栃木県生まれ。アパレルメーカー勤務を経て、2021年、経堂に山と街をつなぐセレクトショップ『山荘 飯島』をオープン。若い頃から山登りが趣味で、今でも月1登山は欠かさない。