カルチャー
残暑の疲れも吹き飛ばしながら訪れたい展示4選。
さーて、9月はどんな展示に行こうかな。
2025年9月8日
text: Ryoma Uchida
慶應義塾ミュージアム・コモンズ×飯沼観音圓福寺
嵯峨本の誘惑:豪華活字本にみた夢
@慶應義塾ミュージアム・コモンズ
所蔵はすべて飯沼観音圓福寺
突然ですが「嵯峨本」はご存知? 色鮮やかな料紙、きらきら光る地模様、斬新な挿絵に端麗な活字。素晴らしいデザインと工夫がこらされ、江戸時代初期に作られて以来、日本の出版史上最も美しい書物とも称される本だ。戦乱が止み、文化の花開く泰平の世を謳歌する人々の情熱、好奇心を反映するかの如く『伊勢物語』『方丈記』『徒然草』などの古典文学を、膨大な手間と高度な技術を惜しみなく注いで制作された、まさに芸術品。本展では、世界有数の嵯峨本の所蔵数を誇る、千葉県銚子市・飯沼観音圓福寺の多彩なコレクションを中心に、慶應義塾が所蔵する貴重な蔵書も加えて展示。シンポジウムも開催しながら、いまだに謎多き嵯峨本をめぐる研究の最前線を紹介する。この夏の終わりに、美しき豪華本の世界へ飛び込んでみよう!
インフォメーション
慶應義塾ミュージアム・コモンズ×飯沼観音圓福寺 嵯峨本の誘惑:豪華活字本にみた夢
会場:慶應義塾ミュージアム・コモンズ(三田キャンパス東別館)
会期:2025年 9月30日(火)〜11月28日(金)
時間:11:00〜18:00※予約不要
休み:土日祝休館
特別開館:10月4日(土)、11月15日(土)
臨時休館:10月6日(月)、11月17日(月)
料金:無料
Official Website
https://kemco.keio.ac.jp/all-post/20250930/
時代のプリズム:日本で生まれた美術表現 1989-2010
@国立新美術館
ナムジュン・パイク、ヨーゼフ・ボイス《2台ピアノのためのパフォーマンス》|撮影:安齊重男 草月ホール、1984年6月2日【1984年6月2日】 ゼラチン・シルバー・プリント 24.0×29.6cm 国立新美術館ANZAÏフォトアーカイブ © Estate of Shigeo Anzaï, 1984. Courtesy of ANZAÏ Photo Archive, The National Art Center, Tokyo.
森村泰昌《肖像(双子)》1989年 Cプリント、透明メディウム 210×300cm 所蔵:森美術館、東京 © MORIMURA Yasumasa. 展示撮影:武藤滋生
大竹伸朗《網膜(ワイヤー・ホライズン、タンジェ)》1990-93年 油彩、オイルスティック、ウレタン塗料、樹脂、紙、ホチキス、ハトメ、その他/木製パネル 274×187×20cm 東京国立近代美術館蔵 © Shinro Ohtake. 撮影:大谷一郎
ダムタイプ《S/N》1995/2005年 ヴィデオ(カラー、ステレオサウンド) 87分 作家蔵 撮影:WOWOW(1995年 スパイラルホール、東京) 編集:高谷史郎 写真:高谷桜子
イ・ブル《受難への遺憾―私はピクニックしている子犬だと思う?》1990年 パフォーマンス記録写真を編集した映像 3分50 秒 作家蔵 © Lee Bul. Courtesy of the artist
小沢剛《ベジタブル・ウェポン-さんまのつみれ鍋/東京》2001年 Cプリント 113.0×156.0cm 国立国際美術館蔵 © Tsuyoshi Ozawa
戦後80年、放送100年、三島由紀夫生誕100年、昭和100年etc。今年は様々な「周年」が重なる年でもあって、歴史に思いを巡らせた人も多いはず。そこで、現代日本の美術の歴史にフォーカスした本展はどうだろう。タイトルにある「1989年から2010年」とは、昭和が終わり、平成の始まった日本のこと。どのような美術が生まれ、日本からどのような表現が発信されたのかを探る。戦後、80年代の国際交流、森村泰昌や大竹伸朗らによる批評的な取り組み、山城知佳子、ヤノベケンジ、会田誠ら戦後生まれの作家たちの制作、ダムタイプ、束芋らの問いかけ、小沢剛や志賀理江子らによる思考などなど、オールスター級で超豪華な展示作家だけじゃなく、香港の美術館「M+」との協働で行われた独自のキュレーションにも要注目だ。「時代」は一面的なものとしては捉えられないはず。日本の美術界で挑戦してきたアーティストの作品が放つ「プリズム」を感知しに行こう!
インフォメーション
時代のプリズム:日本で生まれた美術表現 1989-2010
会場:国立新美術館
会期:2025年9月3日(水)~2025年12月8日(月)
時間:10:00~18:00※毎週金・土曜日は20:00まで、入場は閉館の30分前まで
休み:火曜日※ただし9月23日(火・祝)は開館、9月24日(水)は休館
料金:一般2,000円、大学生1,000円、高校生500円、中学生以下無料※オンラインチケットあり
Official Website
https://www.nact.jp/exhibition_special/2025/JCAW/
佐井好子原画展
@ビリケンギャラリー
’75年にデビューし、4年の間に4枚のアルバムをリリース。’70年代の日本を代表する孤高のシンガーであり、現在も、復刻アルバム全集は即完するほどの人気を誇る佐井好子。夢野久作や江戸川乱歩らに影響を受けたという文学的な詩、自身が手がけたジャケットから垣間見える妖艶な世界観、そしてなんといってもそれらが織りなす唯一無二の魅力的な音楽。今や世界のディガーたちからも熱視線をあつめる、そんな彼女の個展が青山「ビリケンギャラリー」にて開催! 画家としても優れた手腕を発揮する佐井の、20点近くの原画が展示・販売されるほか、本人のトークイベント(要予約)も開催。10月にCDがリリース予定の音源『1976 スタジオ・リハーサル』もゲットしたいし、ぜひともお財布の紐を少々ゆるめつつ、この貴重な機会を見逃さぬようにしよう!
インフォメーション
佐井好子原画展
会場:ビリケンギャラリー(東京都港区南青山5-17-6-101)
会期:2025年9月13日(土)〜9月28日(日)
時間:12:00~19:00
休み:月、火曜日※9月15日(月)祝日営業
料金:無料
Official Website
https://billiken-shokai.co.jp/wp/category/gallery/
『白樺』 日本における西洋美術の導入と広がり
@茅ヶ崎市美術館
明治末期から大正時代にかけ、日本の文芸の世界に新たな風をなびかせた「白樺派」。日本史や国語の教科書で知った方も多いのではなかろうか。大正デモクラシーの自由主義的な風潮を背景に自由な表現を追求する。この思潮の元は、武者小路実篤や志賀直哉ら学習院同窓を中心に、1923年まで刊行された雑誌『白樺』だ。岸田劉生による美しい装丁(「麗子像」的なものもある)を見れば分かる通り、誌面は、彼らの小説や批評を発表する場であるだけにとどまらない。芸術表現の背景にある精神性にも焦点を当てながら、レンブラントやジョルジュ・ルオーといった西洋美術を紹介する新たなメディアとしての役割も担っていたのだ。本展は『白樺』にフォーカスしながら、貴重な武者小路実篤の油彩画やスケッチブック、白樺派が主催した西洋美術の展覧会、同時期に生まれた美術雑誌、文芸雑誌を紹介する。雑誌の面白さに改めて気づくと同時に、本来目には見えてこないような、理念や価値観といった精神性の広がりを総覧できる興味深い試みだ! 本づくり、しおりづくりワークショップ、講演会なども要チェック。
インフォメーション
『白樺』 日本における西洋美術の導入と広がり
会場:茅ヶ崎市美術館
会期:2025年9月2日(火)〜11月9日(日)
時間:10:00〜17:00(入館は16:30まで)
休み:月曜日(9月15日、10月13日、11月3日は開館)、9月16日(火)、10月14日(火)、11月4日(火)
料金:一般800円、大学生600円、市内在住65歳以上400円、
※高校生以下、障がい者およびその介護者は無料
Official Website
https://www.chigasaki-museum.jp/exhibition/9410/
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