TOWN TALK / 1か月限定の週1寄稿コラム
【#4】ヴィラ九条山
執筆:セザール・ドゥバルグ
2025年8月4日
銭湯文化をリサーチするなかで、思いがけない出来事が次々と起こり、ついに一つの夢が叶いました。
京都にあるフランスの名門アーティスト・レジデンス『ヴィラ九条山』に選ばれ、銭湯にまつわるプロジェクトに本格的に取り組む機会を得たのです。
1月から4ヶ月にわたるリサーチのため京都に滞在。たくさん絵を描き、毎日銭湯に通う日々が始まりました。
ヴィラ九条山での滞在中のポートレートとリサーチ風景
© カミーユ・レ ヴィラ九条山
今回の滞在では、銭湯とデザイン、そして工芸との関係に焦点を当てました。
私にとって銭湯は、ただの癒しの空間ではなく、生きたミュージアムのような場所でもあるのです。
入り口の暖簾に始まり、富士山のペンキ絵、タイルの模様や壁画、建築、木桶、イラスト入りの手ぬぐいまで。さまざまな職人技が空間に溶け込んでいます。
京都『梅湯』の暖簾、東京『稲荷湯』のペンキ絵と乱れかご
写真:ルナ・デュショフォール=ローレンス
滞在中は、いろんな作り手の方に会うことができました。なかでも印象的だったのが、京藍染師の松﨑陸さん。
彼と一緒に、私の描いた“温泉フェイス”をモチーフにした、藍染めの暖簾を作りました。



松﨑さんとともに体験した京藍染めの様子
この暖簾は、いま京都の『芋松温泉』にかかっています。
地元の人たちが毎日楽しくくぐってくれたら嬉しいです。
京都は、銭湯文化がいまも熱く息づく土地でもあります。
滞在中は、〈ゆとなみ社〉の仲間や、〈VOU / 棒〉ギャラリーとともに、銭湯文化をテーマにした「Get湯!」というイベントを企画しました。ライブ、トーク、展示など、銭湯の魅力を色々な角度から楽しめる盛りだくさんな内容でした。
「Get湯!」のために制作したフライヤー、ドローイング、手ぬぐい
そして、世界の公衆浴場文化を記録するプロジェクト「Sauna Channel」が、私の制作過程と京都の『梅湯』、『鴨川湯』、『源湯』とのコラボレーションの様子を撮影してくれました。
動画はこちらからご覧いただけます。
これからの予定としては、写真ドキュメンタリー『浮雲』が秋に開催される「屋久島国際写真祭」で展示されます。
また、パリの出版社〈OK DES PARIS〉と一緒に新しい銭湯の本のイラストも作成中です。
これからも、できるだけ長く銭湯を楽しみ続けたい。
そのためにも、自分にできる形で、この文化を支え続けていきたいと思っています。
プロフィール
セザール・ドゥバルグ
イラストレーター、グラフィックデザイナー、編集者として活動。
パリの国立高等装飾美術学校(通称アール・デコ)、ジュネーブのHEAD、そして京都芸術大学で学ぶ。フランス、イタリア、日本のあいだで、報道・ファッション・文化機関(ニューヨーク・タイムズ、ルイ・ヴィトン、エルメス財団など)とのさまざまなコラボレーションを通じて、ドローイングの表現を磨いてきた。
そうした制作と並行して、2018年以降は個人プロジェクトや共同企画も展開しており、なかでも京都を拠点に、日本の公衆浴場・銭湯文化のリサーチや、梅湯をはじめとする銭湯との継続的な取り組みなど、温浴文化をテーマとした活動に注力している。
Instagram
https://www.instagram.com/cesardebargue/