TOWN TALK / 1か月限定の週1寄稿コラム

【#2】季節は巡る

執筆:川内倫子

2025年6月20日

いまお米のことで日本は揺れている。

うちは娘用に白米にもち麦を混ぜたものと、夫と自分用に発酵玄米の両方をいつも常備しているが、お米を食べるのはそれぞれ1日1食くらいなのでそんなに消費量が多いわけではない。
しかし今の時季だけは実家から届いた豆で豆ご飯をせっせと炊くので普段よりも米が必要になる。豆ご飯はどちらかというと苦手だったのに、いつのまにか好物になったのは、採れたての豆で炊く美味しさがわかるようになったから。
だけど毎年炊くのに毎年うまく炊けるわけではない。米と水とお酒と昆布と塩を入れた土鍋が沸騰してから豆を投入するのだが、豆の量が多すぎると豆が固くなってしまうし、蒸らしすぎると豆の色がきれいな緑にならない。

ことしは初回、2回目はうまく炊けたと満足していたが、友人が来た際におにぎりにしてみたら塩が多すぎてしょっぱくて失敗した。友人とおしゃべりしながら握ったせいか、集中できていなかったのがよくなかった。なおかつその日は季節外れの気温で4月上旬並みに肌寒く、おにぎりが予想以上に冷えてしまったということもある。
「ああ!しょっぱい!ごめんね〜」と友人に謝ると、そんなことないよ、わたしのは美味しかったよ、となぐさめてくれたが自分は納得できなかったのだった。

反省を活かし、昨夜来客の際には炊き立ての豆ご飯を振る舞ったのだが、豆が採れたてではなかったせいもあり、しっかり柔らかくできなかった。フレッシュではないことを想定して多めに蒸らしたのに、である。
20年くらい続けて毎年作っているのに、ことしは何度も失敗したことに身悶えした。来年は全食失敗なく炊きたい。

プロフィール

川内倫子

かわうち・りんこ|1972年、滋賀県生まれ。写真家。2002年に『うたたね』『花火』で第27回木村伊兵衛写真賞受賞。2023年にソニーワールドフォトグラフィーアワードのOutstanding Contribution to Photography(特別功労賞)を受賞するなど、国際的にも高い評価を受け、国内外で数多くの展覧会を行う。主な著作に『Illuminance』(2011年)、『あめつち』(2013年)、『Halo』(2017年)など。2022〜2023年に東京オペラシティ アートギャラリーでと滋賀県立美術館で大規模個展「川内倫子:M/E 球体の上 無限の連なり」を開催。現在、個展「a faraway shining star, twinkling in hand」が世界各国のFotografiskaで巡回中。2025年に写真集『M/E』、篠原雅武との共著『光に住み着く Inhabiting Light』を刊行。