カルチャー
【#3】私の南極探検(担当・大傍正規)
国立映画アーカイブ 研究員4名によるリレー形式コラム
2021年6月25日
text: Masaki Daibo

前人未踏の地点への到達を目指した白瀬矗中尉の南極探検(1910-1912)。
100年以上も昔の明治時代末の話だ。
お酒もタバコも、温かい飲み物さえ口にしない、寒くても火にあたらない…超ストイックな白瀬中尉に率いられた26名の隊員らは、ひとりひとり血判を押して決死の探検に挑み、全員が無事帰還するという、離れ業をやってのけた。
驚くことに、この白瀬隊に同行した弱冠22歳のキャメラマンが記録した映画フィルムが、現存している。わが国最古の長編記録映画として名高い『日本南極探検』だ。

遠いむかしの話だが、この記録映画の研究に足掛け7年もの月日を費やしている私の周辺では、近年、南極探検がホットな話題を提供してくれている。
昨年の第162回直木賞受賞作『熱源』(川越宗一著)が、この白瀬隊に参加した樺太アイヌを物語の中心にすえていたのが記憶に新しい。白瀬の出生地である秋田県には、白瀬が果たせなかった南極点への足跡をたどりつつ、人類未踏の徒歩ルートで極点への到達を目指す阿部雅龍さんという冒険家もいる。
思い返せば、私と南極との出会いも、小学3年生の時に転校先で仲良くなったサッカー少年のお母さまに連れられて、映画館で生まれて初めて見た映画――高倉健主演の『南極物語』(1983年)だった。
南極探検後援会長の大隈重信(1838-1922年)が創設した早稲田大学で、例年、非常勤講師として『日本南極探検』の講義をしているのも、何かの奇縁だろう。国立映画アーカイブが運営するWEBサイト「映像でみる明治の日本」で公開中の『日本南極探検』では、ほんの一瞬だが早稲田大学に現存する最古の建物を目にすることができる。大隈邸のかつての門衛所が、今では早稲田生の憩いの場であるUni.Shop&Café 125の前に静かに佇んでいる。


冒頭で紹介した、白瀬隊の無事帰還を讃える大隈と、先に帰国していた軍服姿の白瀬をとらえた『日本南極探検』の一場面。配信動画上では、大隈と白瀬の首から上が無くて、これがなかなか怖い。配信動画の18分1秒の箇所と、次のフィルムコマを見て頂けば分かるのだが、そもそもフィルム上に映像が焼き付けられていないのだから仕方がない(首から上の映像が存在するのは、近年になって別のフィルムが発掘されたから…)。映画を1本1本、目を凝らすように見て、その知られざる姿を特定することが私たちフィルムアーキビストに課せられた楽しい仕事のひとつだ。

私の研究テーマ柄、南極地域観測隊に帯同された経験のある方々や支援者から、南極での越冬を勧められることもある。私が南極の地を踏むことになるのは、そう遠くないのかもしれない。
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