ファッション

パッと見はいたって普通。その裏側が奥深く面白い。

2025年3月28日

服と着こなしの細かい話。


photo: Shunsuke Shiga
styling: Yutaka Aoki
grooming: Risa Fukushima
text: Neo Iida
edit: Koji Toyoda
2025年4月 936号初出

ヨーコ サカモトと素材。

 普通に見えるけど奥深い、そんな二重の楽しさを感じられる服がある。〈ヨーコ サカモト〉が作るのは、スタンダードでデイリーなアイテムだ。その普遍の先に細やかなアイデアが息づいている。デザイナーの阪本洋子さんは「この生地にこの染色っていう、あえてプラスとマイナスを足して化学変化を楽しむ作業をよくします」と話す。確かにスーパーゼロ素材のショーツとか、とちの実染めのジーンズとか、仕様がひとクセ効いている。「まず汎用性のある着やすいデザインが肝で、生地と加工技術でオリジナリティを出しています。今タッグを組んでる京都の染め職人さんが日本で古くから使われる材料や技術の知識が豊富で、加工のアイデアが異例で面白いんですよ。鞄のコーティングに馬のタンパク質からできたニカワを使ったことも」。目的はカッコいい服を作ること。その過程で見つけた自然素材や日本古来の製法は、彼女が目指す“洗える服”にも繋がっている。「繊細に着ないといけない服が苦手で、『買ったあとに洗えるかな』っていつも考えるんです。だからガンガン洗える、イージーケアでも大丈夫な服が作りたい。どんどん着込んで味を出してほしいと思います」

シルクとリネンのワークジャケット

ジャケット¥68,200(ヨーコ サカモト☎03·5430·9577) その他は私物

 古き良きテーラードジャケットがベースのワークジャケット。縦糸にシルク紬糸、横糸にリネンを使ったオリジナル素材。コットンにおける「落ち綿」のように紡績の過程で落ちたシルクを使っているため、柔らかくネップ感の強い平織り生地が誕生した。

ギャバジンのコート

コート¥82,500(ヨーコ サカモト) その他は私物

 コットン100%のベンタイルギャバジンを使ったコート。限界密度まで織り上げることで、天然素材でありながら防水性、防風性、通気性、耐久性を実現している。BIO加工と含浸加工を施し、撥水性もバッチリ。身幅やアームホールが広いため、どんな服にも羽織れる大人のコート。

撥水ヌバックのジャケット

ジャケット¥165,000(ヨーコ サカモト) ユーズドの〈パナソニック〉のキャップ¥7,920(アンダーザサン☎03·4285·3765) その他は私物

 気軽に着られるレザージャケットを目指し、熟練の職人と一緒に考え抜いた国産ヌバックレザー&国内生産のジャケット。撥水性があり、水に濡れても革が変化しづらい。0.8㎜という厚さのため軽く、ライダースよりもさらっと羽織れるのが魅力。袖口はゴム仕様、裾にはドローコードが付いた、カジュアルな革ジャン。

とちの実染めのデニム

パンツ¥48,400(ヨーコ サカモト) その他は私物

 ウエストにゴムを入れたバギーシルエットのイージーパンツ。「XX」のデニムを追求し、紡績ムラを再現した糸を使ったセルヴィッジデニムを使用。京都の染工場で熟練の職人がガーメントダイを用い、日本のナッツ的なとちの実で淡いピンクに染めた。経年変化にも期待!

コットンラミーのシャツとショートパンツ

シャツ¥44,000、ショーツ¥33,000(ともにヨーコ サカモト) その他は私物

 富士吉田の機屋で旧式の織機で製織したオリジナル素材「コットンラミー」を使ったシャツとショーツ。リネンに比べて節が少なく繊維長の長い、100/1のラミーを限界密度に打ち込むことで、透け感とハリのある生地を作り出している。柔らかく上品な肌触りだが、それでいてテロテロにならない独特の質感。

SUPER ZERO ®のショートパンツ

ショーツ¥33,000(ヨーコ サカモト) ユーズドのアノラックパーカ¥9,900(アンダーザサン) その他は私物

「SUPER ZERO ®」とは尾州の浅野撚糸が開発した高機能素材。高密度由来のコシを残しながらも柔らかく、吸水性に富むためタオルに使われることが多い。この糸を使ってチノパンのようなオリジナル生地を作り、ショートパンツに仕立てた。風合いのある、軽やかなはき心地。