From Editors

ルールを知ってこそ、ルールは破れる。

NO.935

2025年2月6日

毎年恒例の部屋特集、僕個人としては4回目の担当となりました。繰り返し同じテーマの特集を作っていると、前にあれをやったから、今回これはできないなという制約を考えてしまいがちですが、逆に言えば蓄積はあるし、考え方もアップデートされているとも言える。では、次なる一手は? 

そこで今回、常々思っていたことを形にしてみることにしました。それが「着こなしのように部屋作りを考える」です。様々な洋服があり、そこに自分自身のキャラクターや体型が掛け合わされることによってスタイルは生み出されるものだと思います。部屋も同じ。必要な家具は毎日着る洋服と一緒で、セレクトにその人の個性が表れるわけだし、物件の間取りや面積も様々あるわけで。小難しいことは置いといて、スタイリングと同じようにインテリアを考えたらもっと部屋作りが楽しくなるのではないか?と思い、部屋を単純にスナップするに留まらず、住む人にこだわっているポイントをマイルールとして聞いて回りました。取材をしてみると、本人も意識していないこだわりやポイントが言語化され、まるで着こなしのHow Toのような様々な方程式が積み上がっていったのでした。もちろん、お洒落な部屋はそこに何が置かれているのか、どんなふうに飾っているのかを眺めているだけで、インスピレーション源となり、真似できることを盗んでいけばいいのですが、今回は世界各地の素敵な部屋を見せながら、各々のルールを立てることで、素敵な部屋がなぜ素敵なのかという法則がより明快になっていると思います。

そして、今回意識したのは「性別の壁を越える」こと。「Magazine for City Boys」と銘打っているだけあって、これまではあくまで男性の部屋に限るという暗黙のルールのようなものがありましたが、インテリアに性別は関係ないと常々思っていたので、女性の部屋もいくつか取材しました。特にインドのメヘクさんやNYのエイヴァさんの部屋は個性全開で、家での時間を楽しんでいるのだなと見ているだけで惚れ惚れします。彼女たちの感性はそれこそ爆発していますが、参考になる部分もあると思いますので、女性読者にもぜひ手に取っていただけたらと思っています。

他にも、山の麓で暮らしている人たちの暮らしぶり、アイデア次第で面白いインテリアが作れるDIY指南、屋上と船上にある家、洒落た小物のスタイルサンプル、インテリア賢人が参考にした本、インディペンデントな家具の作り手取材、ぶっ飛んだ家具カタログなど、いろんな角度と視点で部屋作りを楽しむ読み物が掲載されています。

「部屋作りのマイルール」というタイトルではありますが、部屋作りの固定観念を突き破る一冊になることを目指したPOPEYE3月号。ルールに縛られず、自由な発想で物事を捉え、何より、どんなことも全力で楽しもうという姿勢が『POPEYE』という雑誌の身上でもあると思っています。今号は、POPEYE編集部で雑誌作りに励んできた僕の卒業制作でもありました。楽しいことも苦しいことも、様々な思い出が詰まった編集部ですが、一度武者修行に旅立ちます。時代が変わっても、誰にもわかってもらえなくても、何かにワクワクする情熱を絶やさずに。シティボーイよ、永遠なれ。

これまで僕が担当した部屋号たち。クリストフ・ルメールの部屋を取材したり、BADなインテリアアイデアを考えたり。その興奮は、どれも昨日のことのように思い出されます。

(本誌担当編集)角田貴宏