TOWN TALK / 1か月限定の週1寄稿コラム

【#1】孤独=個特

執筆:miu

2025年1月12日

私が今住んでいるヨーロッパは音楽の文化的中心地の一つであり、海外アーティストのライブが多く情報をチェックするのが日課になっている。

そんなある日、Ill consideredブリュッセル公演を見つけた。

とっておきの音楽旅になるだろうとビールの酔いに身を委ねチケット、宿、航空券を予約した。

ブリュッセルに着いて一枚目に撮った写真。

ブランコを漕ぐ1人の少女を見つめ、1人の余韻が生む日常の隙間に心を弾ませる。

ブリュッセル二日目。

ハイキング後のいい疲れに浸りながらライブの開始時間を確認しようとチケットを探すが見つからない。

「そんなはずはない!」

とわめきながらもう一度探すが見つからない。

やってしまった。

ブリュッセルに来ただけになってしまった。

落ち込む無駄を選ばず気持ちと目的地を切り替えようと、翌日のティルブルフでの公演についていくことにした。

チケット、宿、航空券を再度予約。

とりあえずブリュッセルでは何かしらの音楽を聞こうとライブ情報をチェックすると運良くHuman Leagueの公演。

今回の旅の目的を取り返せるそう思った途端、なぜかこのタイミングでIll consideredブリュッセル公演のチケットが見つかる。

自分の仕掛けた罠に自分で引っかかってしまったのであった。

あー旅、あー人生。

旅がもたらす心の開放と人生の薮に潜む蛇。

自分の中だけで起きた勘違いにつじつまを合わせたつもりで明後日の方向にふて寝する。

ブリュッセルではBrussels Philharmonicによる『Moondog Symphonic』、

そして、Ill consideredによる『The Moondog Songbook』。

指先一つで音が目覚めるような、音楽で引き継ぐmoondogの偉大な旋律を感じた。

ティルブルフではParadoxというローカルで歴史のあるジャズクラブでの演奏だった。

即興が生み出すその場限りの運命のような音にみんなでついていった、そんな体験をした。

思いもよらぬ自分のミスが二つの音の幸せを生み、二度と無い音楽旅になった。

「孤独=個特」

これは私が作った言葉。

1人だからこそ見逃さない景色、聞き逃さない身の回りの音、そして今回の旅のように誤魔化せる失敗、、、。

どれも自分で選んだとっても特別なものになる。

そんななんちゃって名言集を作って開き直った鈍臭旅であった。

簡単にアーティストの紹介を。

Ill considered

ロンドンを拠点に活動するアフロジャズバンド。

ジャズの伝統的な要素を持ちながらも、ファンク、ソウル、ヒップホップなどのジャンルをクロスオーバーさせ、独自の音楽スタイルを生み出している。

Moondog

盲目の音楽家で、ニューヨークのストリートで生活しながら演奏していた。北欧神話のオーディンを自分なりに解釈して作り出した服を身にまとい、「6番街のヴァイキング」と呼ばれ、独自の音楽スタイルや手作りの楽器で多くの影響を与えた。

この旅を思い出すかのように空に浮かんだ幻月を見た。

プロフィール

【#1】孤独=個特

miu

ミユ | 1996年生まれ、滋賀県出身。モデル。
19歳からモデル活動をスタート。
「ViVi」の専属モデルを経て、現在は国内外のファッションブランドの広告やカタログなどで活躍。

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