カルチャー
小春日和の映画館で浸りたい3作。
11月はこんな映画を観ようかな。
2024年11月1日
text: Keisuke Kagiwada
『ヴァラエティ』
ベット・ゴードン(監)
70年代末から80年代にかけて、アングラカルチャーの震源地だったNY。その渦中で頭角を表した、知る人ぞ知る鬼才ベット・ゴードンの作品を集めた特集上映「ベット・ゴードン エンプティ ニューヨーク」が開催される。中でも注目は、長編第1作『ヴァラエティ』。1980年代のNYを舞台に、ポルノ映画館「Variety」でもぎりをする女性が、彼女をナンパしてきた常連客の男を尾行するうちに、この街の裏の顔を垣間見るというエクストリームな探偵映画だ。脚本を『血みどろ贓物ハイスクール』などで知られ、”女バロウズ”の異名を取るキャシー・アッカー、音楽をジャームッシュ作品の初期を支えたジョン・ルーリー、さらにはドキュメンタリー『美と殺戮のすべて』の記憶も新しい写真家ナン・ゴールディンまでが脇役として登場するなど、一番アツかった時代のNYアンダーグラウンドの記憶を真空パックしたような作品だ。特集上映「ベット・ゴードン エンプティ ニューヨーク」は、11月16日から渋谷シアターイメージフォーラムで開催。他にも『エンプティ・スーツケース』『エニバディズ・ウーマン』を上映。
『クルージング』
ウィリアム・フリードキン(監)
1970年代、NYでゲイ男性ばかりを狙った連続猟奇殺人事件が勃発した。その報に接してしたたかな衝撃を受けたのは、ウィリアム・フリードキン監督だ。なぜなら、犯人が自作『エクソシスト』に出演していた男だったから。その後、犯人と面会したというフリードキンが、事件に着想を得て1980年に手掛けたのが『クルージング』。このたび43年ぶりに再公開される本作が描くのは、身分を偽って夜な夜なゲイたちが集まるSMクラブに潜入する刑事が、犯人を探す過程でだんだんとアイデンティティクライシスに陥っていく姿だ。製作に当たって、フリードキンは徹底取材を遂行し、劇中では実際のSMクラブも登場。その意味で、上で紹介した『ヴァラエティ』と合わせて観ると、80年代のNYアンダーグラウンドのクイアな側面が、より立体的に浮かび上がってくるかもしれない。11月8日より公開。
『チネチッタで会いましょう』
ナンニ・モレッティ(監)
1956年、ソ連によるハンガリー侵攻が進むなか、当時のイタリア共産党がいかにソ連から脱却し、最終的に独立の道を歩む機会を逸したのか……。ナンニ・モレッティ自身が演じる映画監督のジョヴァンニは、そんな内容の政治映画を撮影しているのだが、彼の面倒臭い性格が災いし、現場は大混乱。しかも、これまで一緒に映画を作ってきたパートナーであり、私生活では妻でもあるパオラに別れを告げられてしまったんだから、さぁ大変。果たして彼は映画を完成できるのか? という話がさまざまな映画への言及たっぷりに描かれるのだが、決してシリアスな映画ではないので安心してほしい。実際、ジョヴァンニが急に女性の履くミュールをスリッパだとして徹底批判したり、随所にジョークが挟まれるコメディだ。そして、そんな脱線とも思われるシーンをこれでもかと入れながら100分以内に収めてしまう手腕には、アッパレと言うしかない。11月22日より全国公開。
関連記事
カルチャー
PARAKEET CINEMA CLASS Vol.14/『至福のレストラン 三つ星トロワグロ』(監督:フレデリック・ワイズマン)
「ワイズマンの新作タイトルにはなぜ『苗字』が含まれているのか?」
2024年8月26日
カルチャー
PARAKEET CINEMA CLASS Vol.13/『フェラーリ』(監督:マイケル・マン)
「アダム・ドライバーはまたしても”しょうもない男”なのか?」
2024年7月8日
カルチャー
おもしろい映画、知らない?/宇多丸
夫婦の倦怠期を描いた映画
2021年11月10日
カルチャー
おもしろい映画、知らない?/W.デーヴィッド・マークス
音楽が重要な役割を果たすコメディ映画
2021年11月20日
カルチャー
VHSでしか観られない映画ベスト10
2021年11月4日
カルチャー
サンドイッチと映画
映画を見る片手間に食べられるから相性がいいなんて思ってほしくない。 この2つにはもっと人間の深い部分に関わっているんだから。
2021年4月20日
カルチャー
エンドロールを眺めるだけの日々はこれで終わりにしよう。
2021年11月4日
カルチャー
“関西弁フィルム・ノワール”を目指して作りました。
映画『BAD LANDS バッド・ランズ』の原田眞人監督にインタビュー。
2023年10月2日
ピックアップ
PROMOTION
〈ザ・ノース・フェイス〉のサーキュラーウールコレクション。
THE NORTH FACE
2024年10月25日
PROMOTION
〈バーバリー〉のアウターに息づく、クラシカルな気品と軽やかさ。
BURBERRY
2024年11月12日
PROMOTION
介護がもっと身近になるケアギビングコラム。
介護の現場を知りたくて。Vol.3
2024年10月23日
PROMOTION
人生を生き抜くヒントがある。北村一輝が選ぶ、”映画のおまかせ”。
TVer
2024年11月11日
PROMOTION
〈ナナミカ〉と迎えた、秋のはじまり。
2024年10月25日
PROMOTION
〈バレンシアガ〉と〈アンダーアーマー〉、増幅するイマジネーション。
BALENCIAGA
2024年11月12日
PROMOTION
〈ティンバーランド〉の新作ブーツで、エスプレッソな冬のはじまり。
Timberland
2024年11月8日
PROMOTION
〈ハミルトン〉と映画のもっと深い話。
HAMILTON
2024年11月15日
PROMOTION
君たちは、〈Puma〉をどう着るか?
Puma
2024年10月25日
PROMOTION
うん。確かにこれは着やすい〈TATRAS〉だ。
TATRAS
2024年11月12日