カルチャー
刀剣造りの技法を取り入れたペティナイフを『藤原照康刃物工芸』で。
東京五十音散策 学芸大学⑦
2024年8月20日
photo: Hiroshi Nakamura
text: Fuya Uto
edit: Toromatsu
東京都内の駅名を「あ」から五十音順に選出し、その駅の気になる店やスポットなどをぶらりと周っていく連載企画「東京五十音散策」。「か」は学芸大学へ。
左手に野菜、右手にペティナイフ。まな板は使わない。料理家の土井光さんが連載初回で豚汁の具材を仕立てるときにそうしていて、なんてクールなんだろうと思った。それくらいよく切れる1本があれば、日々の料理がもっと楽しくなるに違いない。
学芸大学駅から西小山方面へ徒歩20分。碑文谷の閑静な住宅街にポツンと佇む『藤原照康刃物工芸』では、そんな相棒をリーズナブルに手に入れることができる。明治3年に創業。長らく刀工として日本刀を制作していた老舗で、刀剣造りの技法を落とし込んだ「総手造り鍛造包丁」が並んでいるのだ。
代表の渡辺周太郎さんいわく、刀鍛冶の「鍛接」という技法を用いて形作られたそれらは、鋼をステンレスでサンドウィッチする3層構造。ゆえに鋼の鋭い切れ味を持っているにもかかわらず、ステンレスの錆びにくさも併せ持つのが特徴だ。今回実際に試し切りをさせてもらうと、急に料理が上手くなったと錯覚するくらい薄く、スーッと切れる……。しかも、押しも引きもせず、ただ真っ直ぐに刃を落とすだけで。
「力は必要なくって、包丁の重みで切るんです。例えば玉ねぎを切るときに出るあの涙も繊維を壊しているのが原因で、切り口がキレイだと摩擦がなく栄養も損なわない。こういった和包丁を求めて海外からいらっしゃるお客さんも多く、丁寧に日本のいいモノを伝えていきたいですね」
東京の伝統工芸品でもあるここの包丁は、店頭で研ぎ直しのオーダーもできる。年に1度研ぎ直せば20年以上は使えるという、まさに一生モノのケアを気軽に頼めるのも街の鍛冶屋ならでは。さらには、柄の太さも無償で代えてくれるサービスも行っている。取材終わり、自分の手に馴染むペティナイフを使い続けていく未来が見えた。
各包丁が陳列された飾り棚の下段にはひっそりと砥石も販売。とても自信がないけど、家で使う際は10円玉2枚分の厚みの角度で刃を当てると上手くいくらしい。オーダーでの研ぎ直しの期間は1週間ほど(1本¥1,100〜)。
120mm〜150mmの3種類のペティナイフ。サイズ、刃、柄がそれぞれ違って迷うけれど、鋼の包丁がはじめての方は、切った素材が刃にくっつきにくい「梨地」と呼ばれる造りの150mmの和包丁(写真右)がオススメとのこと(¥13,200)。
野菜を持参すれば誰でも試し切りができる。取材時は25年ほど使っていた包丁を使わせていただいたけど、それでもこの切れ味。料理の幅がグッと広がるはず。
3層構造という意味がよくわかる成形前の原料。これを1000℃近くまで焚き付けられた炉の中で赤めて、ハンマーで打ちつけ徐々に包丁の形にしていく。
インフォメーション
藤原照康刃物工芸
ペティナイフ以外にも、台所の定番の三徳、牛刀、菜切など13種類の包丁を中心に、一枚板のヒノキのまな板や魚の骨抜きのピンセットといった調理道具を販売している。今年9月14日〜15日に行われる地域の夏祭り「碑文谷八幡宮秋季例大祭」にあわせて、5年ぶりにすべての商品が3〜4割引きとなる特売セールが行われるらしい。ぜひ足を運んでみよう!
◯東京都目黒区碑文谷1丁目20−2 9:00〜18:00 日休
Official Website
https://www.teruyasu.jp/
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