トリップ
今にも落ちてきそうな星空の下、“エモロフ”の意味を知った。
@モンゴル テレルジ
2024年8月4日
僕の熱帯アジアひとり旅
photo: Ryohei Ambo
coordination: Bayasgalan Ganbat, Ankhbayar Chuluubaatar, Nomin Gankhyag
edit: Koji Toyoda
2024年8月 928号初出
サインシャンドからウランバートルへ帰還後、すぐに向かったのがモンゴル屈指の避暑地、テレルジ国立公園! 今回の一人旅のもう一つの目的が、モンゴルらしい宿、ゲルに泊まってみることだった。テレルジは、ウランバートル民が週末になるとこぞって訪れる場所でゲルキャンプ場も多く、密かに気になっていた巨大なチンギス・ハーン像(なんとそのデカさは台座を含めて40m!)や、亀の形をした巨岩、タートルロックからも近いので我ながらベストチョイス。今回、予約したのは、その外れにある「ドリーム アドベンチャー モンゴリア」。高級なリゾート風ゲルが多い中で、ウェブサイトに載っていたクラシックなゲルスタイルに妙に惹かれたのだ。
ところが、いざゲルへ行かんとなった夕暮れ時に問題発生。なんとそこに辿り着くには、川を2つ、3つ越えないといけない事実が発覚。貸し切りにしていたタクシーの運ちゃんもお手上げだと首を横に振る始末。まじかよ! と途方に暮れていると、ゲルのオーナーのプレフさんから「まだかい? 川で立ち往生しているならば迎えに行こうか?」と救いの電話が。ここからが目まぐるしかった。15分後、やたらとハイテンションなプレフさんが四駆で乗り付けると、「さぁ行くぞ!」という掛け声とともに、猛スピードで林道を爆走し、川もジャブジャブと駆け抜ける。丘の下り坂コーナーに差し掛かるもスピードは緩めることなく、ほとんどフルスロットル! 上に下に横に揺れまくる車内で〝アドベンチャー〟の意味をようやく悟る。アドレナリンの放出もマックスに達したところで辿り着いたのは、今までの破茶滅茶なドライブが嘘のように静かで美しい楽園だった。「どうだ、最高だろう?」と彼が言ったか定かではないが、一瞬で心を奪われたのは覚えてる。草と岩で覆われた山肌に立つゲルの向かい側の森では、ヤクやウマの群れがのどかに草を食む。ドラマチックに暮れゆく夕日に合わせて、テーブルに供される羊肉と野菜を煮込んだ温かいスープにパン。薪ストーブに屋内を照らす蝋燭の穏やかな明かり。辺りが暗闇に包まれたと同時に夜空に輝く、天然のプラネタリウム。ここはすべてが完璧に仕上がったユートピア。モンゴルの若者の間では、〝エモロフ〟(エモいの意)という言葉が流行っているらしいが、これぞエモロフなゲルだ。寝ることも忘れて、子供のように星空をずっと眺めていた。
宇宙にも手が届きそうな、山の上に佇む極上のゲル。
Dream Adventure Mongolia
ドリーム アドベンチャー モンゴリア
リゾートゲルだらけのテレルジ国立公園内にあって、この宿はかなり穴場。岩と草の山に佇むゲルは空もだいぶ近く、夜になれば無数に散らばる星々がこぼれ落ちてきそうな錯覚に陥るほど。周りを見渡しても草原と渓谷が延々と続くだけで、携帯の電波も届かない。モンゴルの自然と思う存分向き合える最高のスポットなのは間違いない。「美しい環境の中できっと本物のモンゴル体験できるはずさ」とオーナーのプレフさんも自信満々。
インフォメーション
ドリーム アドベンチャー モンゴリア
料金は1人115ドル(相部屋。3食、乗馬付き)。1ゲル貸しは340ドル。ウランバートル市街へ車での送迎あり(片道$30)。
◯Gatsuurt, Gorkhi-Terelj National Park, Ulaanbaatar
Official Website
https://dreamadventuremn.com/
チンギス・ハーンは、やっぱり偉大なり。
Chinggis Khaan Statue Complex
チンギス・ハーン像
間近で見上げるとそのデカさにびっくりする巨像。その馬のたてがみ部分は展望台になっていて、エレベーターや階段でアクセス可能。そこから眺めるモンゴルの大草原は、まるで覇王になった気分に浸れる絶景だ。眼下の広場では、乗馬やラクダが常駐。1回2万トゥグルグを払えば、乗ることもできる。
インフォメーション
チンギス・ハーン像
1階は、土産店が多数。キーホルダーやバッジはここで。
◯Tuv Aimag, Erdene Sum 10:00〜18:00 入場料₮30,000(外国人)
遊牧民のゲルに突撃、隣の昼ご飯。
タクシーの運ちゃんに「寄ってくか?」と提案され、寄り道したテレルジ近辺の遊牧民のゲル。ウランバートル駅でたまたま買っていた土産を渡したら大歓迎。ウルムという伝統的な乳製品(バターと生クリームのいいとこ取り)と揚げパン、ミルクティーを出してくれた。このウルムを塗りたくったパンが驚くほど絶品で、現地の人もわざわざ知り合いの遊牧民の家に食べに行くらしい。子供たちは騎馬民族のDNAを受け継ぎ、みんなたくましかった。
草原の中の轍(といっても、かなり凸凹)を全速力で駆け抜ける。よもや移動のタイミングで、こんなアトラクションが待ち受けているとは! モンゴル恐るべし。
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