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いいパッキングができたら、旅は成功したも同然だ!

2024年8月6日

僕の熱帯アジアひとり旅


photo: Kazuharu Igarashi
illustration: Yoshifumi Takeda
styling: Takeshi Toyoshima
edit: Koji Toyoda
2024年8月 928号初出

 旅を決意してから、ずっと頭を悩ませる〝何を持っていくか〟問題。いわば、これが解決したら、いい旅になること間違いなし。リゾートでバカンスじゃなく、〝何でも見てやろう〟精神で歩き回るわけだから、コンパクトかつ機能的なのは必須条件だろう。スーツケースは便利だけど、なんか違う。自由を謳歌するバックパッカーに倣えばいい、と思いつつ、はたしてメインとなるバッグはどんな形状がベストか。どんな服装を選ぶと、現地で身軽かつ快適に過ごせるのか。考えても先には進まない。ここは、いつもポパイがお世話になっている〝旅のエキスパート〟3人に聞いてみよう。

土屋智哉/『ハイカーズデポ』店主

つちや・ともよし|1971年生まれ。2008年、ウルトラライトハイキングをテーマにしたショップ『ハイカーズデポ』を開く。日本におけるULカルチャーの第一人者。

田窪 朗/『山荘 飯島』店主

たくぼ・あきら|1986年生まれ。アパレルメーカー勤務を経て、2021年に『山荘 飯島』をオープン。カジュアルウェアを野外用として見立てるセンスに定評あり。

土井 健/『プロップスストア』共同経営者

どい・たけし|1979年生まれ。2006年、原宿で『プロップスストア』をスタート。頻繁にアメリカへ商品買い付けに出かけた経験からミニマルなパッキング術を会得。

まずはバックパックをどうするのか?

『山荘 飯島』の田窪朗さんの元を訪ねると即答でUL文脈が作るバックパックを選んでくれた。「移動に次ぐ移動を強いられることもあり、常に背負っている状況も想定すべきで、とにかく軽量なのが望ましい」。『ハイカーズデポ』の土屋智哉さんも同じ視点で「荷物の量に応じて収納性が可変する巾着型やロールトップ型だとなお便利」とのこと。確かに荷物が少ないときはミニマムに、土産が増えたときは1.5~2倍の容量に増えるこのタイプは理想的。早くも候補は絞られた。あとは細かいデザインや色の好みで、今回の旅の“相棒”を決めるとしよう。

重さは340g。大きな巾着袋にショルダーストラップを付けたシンプルな構造は、アメリカ・オハイオ州のガレージギアブランド〈ジマービルト〉のシグネチャー。最大容量は35L。バックパック「パイカパック」¥29,700(ジマービルト/ハイカーズデポ☎0422・70・3190)

同じくUL文脈でも〈ユーエルエー イクイップメント〉は、下から上に行くに従って広がるデザイン。パッキングもしやすく、肩周りから荷重がかかるよう設計されるので、背負ったときの軽さは格別だ。最大容量は54L。バックパック「シーディーティー」¥50,600(ユーエルエー イクイップメント/バンブー シュート☎03・5720・1677) キャップ¥7,700(フーディニ/フルマークス cs@full-marks.com) その他は私物

バックパック内の空きを増やしたくて。

 衣類を収納するドライバッグ選びも重要(だと聞いた)。洋服や下着、靴下は最低限の量を持っていくにしても、バックパック内でスペースを取ってしまったらすべてが台無しだ。「その点、〈キバ アウトドアーズ〉のスタッフサックは優秀。上からギュッと体重をかけて閉めると背面のeVent層から空気が抜けて布団圧縮袋のようにコンパクトにまとまる。パッキングで容積を取らない優れものです」と田窪さん。防水性も高く、濡れた衣類を突っ込んでも、鞄の中が水浸しになる恐れもないそう。これはいいアイテムを教えてもらった。

『山荘 飯島』では、5Lと10Lの2種類展開。前者を靴下やアンダーウェア用に、後者は衣類用に使い分けるのもありだ。〈キバ アウトドアーズ〉自体は、もともとスリーピングバッグやエアマット作りが得意なアメリカ生まれのアウトドアメーカー。ドライバッグ¥2,860~(キバ アウトドアーズ/山荘 飯島)

右/タブレットの充電器や海外用電源プラグなどのデジタルガジェットは、それ専用の防水ケースに入れるのも得策。その道のスペシャリスト〈エクスペド〉の一品。財布の紐を緩めるグッドなデザイン。A6サイズ防水ケース¥3,520(エクスペド/山荘 飯島) 左/土井さん肝入りの〈pake〉は、グルーミング用品の収納用に。ジッパーバッグ¥660(パケ×ペンコ/ハイタイド☎092・533・3335)

旅のシューズに、防水性は必要なのか。

 さて、靴だ。初めての海外だし、ここは思い切って新調しよう! となれば、やっぱり防水性バッチリなゴアテックスがいいよね。そんな短絡的な見解に土屋さんからも田窪さんからも「NO!」を突きつけられた。ともに「スコールに降られて隙間から水が浸入したら、“ゴア”の場合、なかなか乾燥しない。防水性よりも水抜けが良くて、軽量なトレランシューズを選ぶほうがおすすめ」だって。肝心の履き心地については、地下足袋フィリングの薄いソールのものがいいと土屋さんが言えば、田窪さんと土井さんはクッション性のあるソールが疲れないと話す。ここは個人のフィット感の好みもあるから、実際に履いてしっくりくる靴を選ぼう。

田窪さんが薦めてくれたのは、トレランシューズブランド〈アルトラ〉の「オリンパス5」。ソール内部に水抜け穴のある速乾仕様。超厚底でクッション性も高く、足の形をしたフットシェイプを採用しているので安定感は随一。ポップなカラーリングも良し。シューズ¥25,300(アルトラ)、ソックス¥2,420(ドライマックス/ともに山荘 飯島☎03・6762・6244)

近頃人気のトレランシューズブランド〈ノルダ〉に一票を投じるのは、土井さん。「旅だけじゃなく、帰国後も普段履きするとしたらこのグッドデザインはベスト。〈アルトラ〉にも通ずる、足の指が広がる系だから歩きやすさは格別」。シューズ「001」¥42,900(ノルダ/ダウンビート ランニング☎03・6457・7544) ソックス¥2,420(ドライマックス/山荘 飯島)

土屋さんが推すのは、〈ゼロシューズ〉の「メサトレイル2」。「両足合わせても362g。軽量で、薄底だからそれはもう素足のような履き心地。ソールは申し分のない耐久性で、1000㎞歩いても壊れません」。シューズ¥16,500(ゼロシューズ)、ソックス¥3,080(インジンジ/ともにハイカーズデポ)