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あらためて遊歩大全 Vol.1/外壁編

用具を保護するバックパック。

2021年6月11日

photo: Hiromichi Uchida(Book)
composition: Kyosuke Nitta
cooperation: Kazuhiko Kai
2014年12月 812号初出

 時は1968年。反社会運動真っ只中のカリフォルニアにて、新しい発想での自然回帰・ウォーキング哲学を提唱し、ヒッピーを大自然へと誘った『The Complete Walker』(著・コリン・フレッチャー)は、全米でベストセラーに。その後改訂版として登場した『The New Complete Walker』を、1978年に芦沢一洋が熱のこもった言葉で翻訳・出版し、日本でも空前絶後のバックパッキングブームが巻き起こった…。


 それ以降、山を歩いて旅する者たちのバイブルとなった『遊歩大全』。文庫版ですら976ページもあるこの長旅をギュッとまとめて、目次順に解説! 3回目は『wall 外壁』。

– 堅牢なフレーム&バッグを。 –

 状況によって最適なバッグパックは異なるが、荷が35ポンド(15kg)を超えたらバックフレームとバックパックのコンビネーションが必要。ただしコリンは15年間、日帰りハイキングでもどこでも、<トレイルワイズ>のフレーム&フルレングスの大型バッグ「エクスペディション」を使用。

– シンプルさこそ、ベスト! –

 コリン自身のバックパックから、優れた仕様を見てみよう。バックフレームは、アルミニウム合金チューブのフレームで、最強の溶接法・ヘリアークを採用。S字にカーブして上半身にフィットし、シンプルで頑丈。ショルダーストラップはエンソライトパッド入り。バックサポートはフルレングスのナイロンメッシュで、荷重の分配、ベンチレーションともに有効。「肩の代わりにヒップに重量を背負わせる」ためのウェストベルトは腰を一周し、フォームバッド入りの高機能型。また、バッグは寝袋を下につけないフルレングス型で、仕切りなしのワンルーム。生地はタフなヘビーナイロンダックで、内側にウレタンコーティングをした防水仕様。バックパックは多種多様すぎて選択が大変だが、”keep things simple.” シンプルさこそベスト。このマーフィーの法則はすべての用具と技術に共通である。

– 自分仕様にして、自由に使う。 –

 バックパックの使い方は自分のアイデア次第。DIYでカスタムもしよう。夏の日中、コリンはシャツを着ないで歩くから、胸ポケットの代わりとなるデニム地のポケットをヨークに縫い付け「オフィス」と名付け、ノート、地図、サングラスなどを入れた。

1987年には上下2巻が1冊(左)に。その後に絶版となり、入手困難な状態が続いたため“伝説のバイブル”と呼ばれていたが、2012年に山と渓谷社より文庫版(4・厚さ3.5㎝。¥2,200)が登場した。(右)