ライフスタイル

Bose & セク山のナナメ上行く車のマナー。

2024年5月17日

車はともだち。


illustration: Jose Franky
text: Izumi Karashima
2024年6月 926号初出

 シティボーイはどんなドライバーでありパッセンジャーであるべきなのか。車好きの先輩、スチャダラパーのBoseさんと、「助手席のプロ」を自任するDJのセク山さんが爽快なドライブのためのマナーについてあれこれ考察。

01. 短くて面白い話を用意する。

セク山(以下S):助手席ストとしては、運転手を楽しませたいと思ってるんすよ。労をねぎらうためにも気分を盛り上げたい。気を使ってると思われないように、さりげなく。
Bose(以下B):それは大事。やっぱ、乗せて楽しい人を乗せたいと思うもん、運転する身としては。スチャダラパーのアニは沈黙に耐えられるほうだけど、僕はちょっとつらい。助手席スト歴の長いリリー(・フランキー)さんがそうだけど、ちょっとした小咄が得意だったりするといいよね。あまりにも面白すぎちゃうと気を取られちゃうから、面白すぎない程度のやつで。

02. 寝てなかった振りはしない。

S:僕はなるべく寝ないように必死に頑張るんですけど、気付くと寝ちゃってる場合があって。で、つい「寝てません」ってポーズを取っちゃうんです(笑)。
B:運転できない「後ろメタファー」がそうさせるんだよね(笑)。でも、寝たいなら「寝ます」って言ったほうがいい。
S:妻にもいっつもそう言われるんすよ。「ウソつかなくていいから」(笑)。
B:僕も全然気にならないよ。奥さんと子供が寝てたら、ああ安心してるなって。てか、みんな寝たら自分の好きな曲をかけられるから、逆に早く寝てくださいって(笑)。

03. 高校野球の応援歌コンピを流す。

S:前にアニさんと一緒に出かけたときに、僕の友達が運転して、アニさんは後部座席で、僕は助手席だったっすけど、そのときに、「セク山、なんかかけて」ってアニさんに言われ、高校生のブラスバンドの応援歌のプレイリストをかけて。
B:なにそれ(笑)。甲子園とかのやつ?
S:そうです。「紅」とか「狙いうち」とか「タッチ」とか定番の応援歌。車内がめちゃめちゃ盛り上がりました(笑)。
B:さ〜すが助手席DJ(笑)。てか、誰の車でも盛り上がるよね。面白い話とか用意しなくてもそれでOKだわ(笑)。

04. イチイチ運転者に報告しない。

B:僕も奥さん運転の隣に座ることはあるけど、そのときに「ブレーキ遅いよ!」とか「一時停止!」とか、つい言っちゃう。
S:「自転車きてる!」「わかってる!」「うん、わかってるね」って(笑)。
B:見えてないなってときは言ったほうがいいけど、いちいち言うと角が立つんだよ。ブレーキは感覚の違いだしね。
S:イライラし始めたのがわかると「大丈夫。悪くないよ」ってなだめたりはします(笑)。とにかく、「優しくいこう」というのは常に心がけてます、はい。
B:助手席ストは潤滑油にならないとね。

05. 小銭とアメはすぐ出せるように。

B:運転しながら食べるのは難しいのよ。
S:そういう場合は、袋をあけて待つ感じでサポートします。信号で止まったときに「はい」って。すると、「いらない」って言われることが結構あるんすよ。お菓子のタイミング、難しいなって(笑)。
B:うちの子はポテチを1枚ずつ口に入れたりしてくれるの。ホントはいらないんだけど、それはそれで嬉しい(笑)。
S:あと、助手席ストの矜持として小銭を用意してます。いつでも出せるように。あと、駐車場代とかガソリン代とかも多めに出そうというのはいつも考えますね。

06. 駐車がうまくいったら褒める。

S:妻が駐車場に一発で入ったときは褒めるんですよ。めちゃめちゃ褒めるっす。
B:ガハハハハ!
S:「すごいじゃん! マジでうまくない?」。ワザとじゃなく、自分は運転できないからホントにすごいと思ってて。「それ、過剰」って言われますけど。
B:よく思うのは、駐車するとき、バンパーがちょっと擦るぐらいはOKでいいんじゃないかと。ヨーロッパだと、バンパーを擦って停めるのはデフォルトで、そのためにバンパーがあるわけで。みんなそういうマインドになればいいのになあ。

07. 「乗ってく?」の言葉を引き出す。

B:仕事に出かけるときとかは奥さんが車で駅まで送ってくれたりするの?
S:自分では言わないっす。で、聞かれてもないのに「今日、10時に出るから」って言って、「じゃ、送ってく?」「いいの?」みたいな展開を待つっていう。
B:ガハハハハ! じゃあ、みんなと渋谷とかにいて帰りが遅くなった場合は?
S:「あ、終電が……。でもまあなんとなかります」みたいなことを言ってみるっす。
B:そうすると、僕みたいな車持ちが「じゃあ、乗ってく?」って言うよね。
S:「え、いいんすか?」って(笑)。

08. 窓を勝手に開けない。

B:僕は運転するのが好きだし、車は自分のコントロール下におきたいから、人の車に乗るとか、そういうことをほぼしないんですよ。気遣いするのもしんどいし。セク山くんはどういうことにいちばん気を使う? 奥さんの車じゃない車に乗るときは。
S:窓を勝手に開けない、ですかね。「開けていいですか」って絶対聞きます。
B:ある。突然開けられてビックリすることってある。高速乗ってるときは特に。
S:あと、念のため、土足禁止かどうかも最初に聞いて乗りますかね。
B:そんなやついまの時代にまだいる?

09.感謝のハザードを求めない。

B:昔から言ってることだけど。高速の合流で、「入れてくれてありがとう」っていう意味でハザードランプをチカチカってつけるじゃない。あれ、まったく必要ない。「入れなくちゃいけない」んだから、本来は。
S:僕、「ありがとう」ハザードはいつも積極的に押してあげてました。妻の代わりに(笑)。あれって、ダメっすか。
B:いや、いいんです、感謝したいときはやっても。ただ、運転って譲り合いが基本だし、合流はその最たるもの。譲り合うのは当然。だから、入れてあげたからとハザードを要求するのも違うのよ。

10.対向車とバイブスを合わせる。

B:カナダに行ったとき、ドライバーが想像以上にやさしくて。人間性なのか、国の豊かさなのか、ルールが厳しいからなのか、とにかく、譲り合いがすごく気持ちよかったんですよ。おばあちゃんが横断歩道を渡るのをずっと辛抱強く待ったり。なんかこう、心の余裕がある感じなんだよね。狭い道を通るときも対向車と息を合わせる部分があるというかさ。
S:バイブスを合わせる感じ。
B:そう。日本だと、こっちが先だからオマエ下がれ、みたいになりがちだけど、もっとやさしくならなきゃだめだなって。

11. ヤバめのクルマは早めに避ける。

B:僕いまダイハツのアトレーっていう小っちゃいバンにも乗ってて。’90年代モデルのマニュアルのターボ車だけど、めちゃめちゃ煽られるんですよ、軽だから。
S:うちもそうです。後ろから煽られたときは、「なんかきてるけど、大丈夫だよ!」って妻を励ましてます(笑)。
B:僕は結構前の段階ですぐ気付くんですよ。ヤバいやつが近づいてきてるなって。そうなったらすぐに道を変える。あと、「撮影してます」ってステッカー、アレを貼るとわりと効くらしい。毎朝同じヤツから嫌がらせを受けてた人が貼ったら止んだって。

12. コンビニ察知能力を高める。

B:子供ができてからコンビニ察知能力が上がった。どのコンビニだとトイレを貸してくれるか。子供って急にトイレとか言うから大変。高速だとパーキングエリアが15㎞ごとにあるけど、一般道はね。
S:自分も姪っ子がいるからわかりますけど、子供って長時間車に乗るのは結構大変っすよね。車酔いしたりもするし。
B:そうなの。だから高速で十何㎞先のパーキングエリアまでもたないとなった場合は、即断して下りたほうがいい。高速の出入り口にはガソリンスタンドとかコンビニとかいろいろ揃ってるからね。

運転手はMC、助手席はDJの気分で。

Bose(以下B) 僕は19のときに免許を取ったから、かれこれ三十数年になるかな、ドライバー歴は。

セク山(以下S) 自分、いっつも妻が運転するホンダN-ONEの隣に座ってるんすよ。助手席オンリーの「助手席スト」なんで(笑)。

B え、免許持ってないんだっけ?

S 昔、持ってたんですけど更新するのを忘れて失効しちゃったっす。

B バカだなあ~(笑)。

S でも、失効するまで2回しか運転してなくて。地元が川崎なんで、1回目は海ほたるへ行ったっすけど。

B てことは、免許取るのに30万くらいかかるから、1回15万じゃん! 高すぎるよ、その免許(笑)。

S なんですけど、自分には向いてないなって。海ほたるまで行ってみたはいいけど、帰りが怖くて、もう。

B 運転って慣れだから。僕だって最初のうちは東京のゴミゴミする道を運転するのはめっちゃ怖かったよ。うちの奥さんも結婚して子供が生まれるからって免許を取ったけど、いまは1人でグングン走ってるもん。

S いやでも、俺にはセンスがないと海ほたるで悟ったっす。しかも、川崎だと渋谷まで電車で30分、横浜も10分、車は必要ないなって。でもいま、街中じゃなく海辺のほうに住んでるんで、やっぱ車がないと行動範囲が狭まっちゃうなあ、と。

B そうなんだよ。僕もいま鎌倉だから、地方にいると車は必需品なんだよね。じゃあ、いまは奥さんが?

S はい。「助手席のプロ」として妻をサポートしたり楽しませたりしてます。「青でーす」「音楽かけまーす」「次、左でーす」(笑)。

B 僕は誰かの車に乗せてもらうことがほぼないんだけど、やっぱ乗っけてもらう場合、謙虚に、っていうのはあるでしょ。奥さんだとしても。

S どうしても負い目がありますからね。俺は運転ができない、という。

B みうらじゅんさんいわくの「後ろメタファー」が(笑)。

S だから他の人の車に乗せてもらう場合もそうですけど、DJに徹するんです。運転の邪魔にならない程度に楽しませよう、というのはあって。「助手席DJ」を自負してます。

B ガハハハハ。しかしさ、車が欲しいと思うのは、この年になれば家族のためとか、仕事のためとか実用のためが主なんだけど、ポパイを読んでるような若者にとっては、「遊ぶため」がいちばんの動機だよね。どこか遠くへ行きたいから。思いついたときに遠くへ行けるって、それだけでイノベーションじゃん。意味なく箱根までドライブして、芦ノ湖眺めて、「何もないなあ」って帰るだけでも。大阪だと生駒山辺りに行くんだろうけど。でも、車ってそういうことのためにあると思うもん。

S スチャダラパーの「サマージャム’95」的なことですよね。

B そうそう。あの歌って、クラブで朝まで遊んで、そのままみんなでレンタカー借りてプールへ行くって詞なんだけど、実話だもん。アニとシンコ、川辺ヒロシくん、ロボ宙もいたんだけど、朝まで遊んで徹夜のまんまどっか遠くへ行っちゃおう! ってなって、当時発売されたばっかりのエスティマを借りてアニの運転で富士急ハイランドへ行った、っていう。全員でプール入ったなあ、海パンがダサかったなあ、ってそれだけだけど、そういうなんでもないことってなぜかずっと残るんですよ。

S そういえば、この間、ボーズさんの車に乗せてもらって思ったっすけど、視野がハンパなく広いっすよね。結構おしゃべりもしてるのに、ちゃんといろいろ見てるんだなって。そりゃ、広い視野で運転するのは当たり前っちゃ当たり前なんすけど。

B やっぱ車好きだから。運転するのも気持ちいいし、運転しながら人とおしゃべりするのも好き。ずっとそのフローを楽しんでるっていうか。

S ゲーム性を楽しむ感じすか?

B そう。だからルールを乱すやつがいると、ものすごくカチンとくる。例えば、高速道路の3車線って、左が遅い車、真ん中が走行車線、右が追い越し車線って決まってるし、区間によって80キロとか100キロとか出せるスピードも決まってる。なのに、ものすごいスピードを出すとか、車間を異様に詰めるとか、左から追い越しをするとか、合流ポイントで突然合流するとか、合流させないとか、そういうことをすると、無駄なブレーキを踏むから、全体の流れが乱れる。すると、渋滞するし、最悪、事故も起きる。僕は、自分が、じゃなく、全体がうまくいくように運転してるんですよ。なのに、そこを乱されると全体が滞って効率が悪くなる。それがイヤ。ドライバーが全員、全体のことを考えて運転すれば、渋滞もしないと思うんだけど。

S さすがMCっすね!

B 関係ないから(笑)。やっぱ、人は車の乗り方で人間力が試されるっていうのはあるよね。運転するにしても、助手席に乗るにしても。

S 自分、助手席では直角になります! 後ろに人がいる場合は。

B そこまでやんなくていい(笑)。