ライフスタイル

僕の車。/NISSAN PAO 1989

2022年5月21日

photo: Jun Nakagawa
text: Ku Ishikawa
2022年6月 902号初出

最高の気分で「コレだ」という一台を持っている人の話。どうやって選んでいるのか、心の内側も覗き見ながら、彼らの視点とグッドな車をカテゴライズ。

小さいクルマ。
NISSAN PAO 1989

NISSAN PAO 1989

 無駄なく気軽に楽しめる。都会で小さい車を選ぶ人たちのカーライフは足取りよく快活な感じだ。この「無駄がない」というストレスの少ない感覚がいいね。あるカーデザイナーに「日本の平均乗車人数は1台に1.3人くらい」と聞いて、もっと省スペースで十分じゃない? っていう気がリアルに湧いてきているし(1㎞の間に全長4000㎜の車とスマートを並べると100台以上差が出るよ)、ジムニーやレックスのような軽自動車を選べば車検も安い。あと「車の魅力は身体の拡張だ」なんて話があるけど、小さい車はその点まさに身近で、相棒というか自分自身。『Dr.スランプ』で描かれるコンパクトカーみたいに“人車一体”でウキウキと走れば心が弾むよね。

NISSAN PAO 1989
木の棚を入れて積載性をアップ。テント、コット、寝袋など、この日は1泊分のキャンプ道具がぎっしり。

 革小物職人の樋下田さんは、日本の古道具でキャンプをするのが休日の息抜き。1989年に初期型のマーチをベースに「サファリ」「冒険」をコンセプトに生まれたパオだから、アウトドアにもよく似合う。一見レトロで可愛らしいけど、ヒンジが外に出ていたり、バンパーがパイプ状だったりと随所にインダストリアルで力強い雰囲気もある。「そんな見た目に中学2年生で一目惚れをして、25歳で初めて買って以来、これが3台目。乗れば乗るほど、カシャというドアの開閉音や、三角窓から爽やかに吹き込む風など、細かいところまでこの車の虜に。純正のパーツがなくなってきて、維持に手間もお金もかかりますが、それ以上に小さな幸せが積み重なる一台です」

OWNER
樋下田 歩/38
革小物職人