ファッション
〈ジョルジオ アルマーニ〉、ワイドテーパード、2タックパンツ
文・長谷川昭雄/スタイリスト、ファッションディレクター
2024年4月25日
ぼくと服と東京の暮らし。
photo: Seishi Shirakawa
direction, styling & text: Akio Hasegawa
grooming: Kenichi Yaguchi
edit: Shigeru Nakagawa
2024年5月 925号初出
たしかあれは1995年の夏の手前頃の昼下がり。僕の師匠は、数年前から愛用しているというアルマーニのワイドテーパードなシルエットの2タックパンツを着用し、その唯一無二の素晴らしさについて力説してくれた。太くてシルエットが美しい。それだけのことなのだが、メンズファッションにおいては、最も重要なことである。
実際、僕も毎回、スタイリングをするときにまず考えるのは、パンツのこと。この人に似合うパンツってなんだろう? 雑誌だったらクレジットを入れないといけないから、いいパンツを借りられるところって、どこかあるかな、ということ。それが決まらないと、はじまらない。しかし、これが意外とないから困っている。
厳密に言えば、いろいろあるとは思う。単純に、自分が好むようなものであったり、モデルとなる男性に描いているイメージと合うものがないのだ。しかも、多くのブランドが、毎シーズン、ころころとシルエットを変えていってしまうことが多くて、パンツどころか、全体像を確認するのにも時間がかかってしまう。いつも、変わらずに太い2タックパンツを扱ってくれたらいいなぁと、願っているだけなのだが。
先輩である、『ビームス』の加藤忠幸さんがやっている〈SSZ〉〈ブローシャー〉といったあたりなら1タックチノがある。〈ポロ ラルフ ローレン〉のビッグチノなんかも最高だ。それはそれでいいのだけど、それだけじゃ、毎回同じになってしまう。それに、できたら’90 年代のアルマーニ的な大人な印象のスラックスが欲しい。でも、それこそなかなか見つからない。そんなことを思うたびに、師匠のアルマーニの2タックパンツを思い出す。
3年くらい前に、『プロップスストア アネックス』で〈ジョルジオ アルマーニ〉のヴィンテージの2タックパンツを手に入れた。グレーのフラノのスラックスで、裾が広めのワイドシルエットで気に入っている。だけど、春にはくにはちと暑い。薄手なものはないかと古着で探すのだが、そもそもアルマーニのパンツが見つからない。そんななか、ある日、銀座の〈ジョルジオ アルマーニ〉の前を通ると、ウィンドウの中に、太い2タックパンツをはくトルソーがいた。もはや現行には細いパンツしかないと思っていたから、目を疑いつつも、嬉しくなり、二度見、三度見したのだが、〈ジョルジオ アルマーニ〉の店に入るのは、なかなか勇気がいる。こんな仕事している僕がそう思うのだから、他の職業の人はもっと思うのではないだろうか。数日後、意を決して店内に入ると、メンズは3階だという。エレベーターでたどり着くと、そこにはパンツだけでなく、気になるトップスもたくさん並ぶ、夢のような世界が広がっていた。プレーンな無地のクルーネックセーター! シンプルな薄手のスエードジャケット! そして2タックパンツたち。もう、天国やん。2024年の今、販売されている服の中で、一番好きやで。やっと会えたね、アルマーニ。僕の求めていたシルエットは、現行の〈ジョルジオ アルマーニ〉にあったのだ。もっと早くに気づいていればよかった。その日は2タックパンツを3本購入。僕にしては爆買いである。
なかでも一番気に入っているのがこのワイドテーパードされた2タックパンツ。あらためてブランドのウェブサイトで商品を確認すると、190㎝のモデルが、サイズ48をハイウエスト、クロップド丈で着用していた。でも、今回、モデルとして着てもらったジュリアンは、178㎝でサイズ50を着用。少し腰ばき。だいぶ違うけど、これくらいの感じが、僕にとっての理想のフォルム。当然、僕も店で試着したときは、腰ばきだった。本当はくるぶし丈なんだろうけど(笑)。いい感じにクッションが入っていると思って満足気に鏡を見ている僕に、販売員の方は、動揺していただろう。まぁでも、そんなこと言いにくくて、言えないだろうなぁ……。
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