カルチャー
現代サーフシーンに“全く需要のない”旧式フィンが復刻された。
2024年4月5日
どんなものでもどんどんバージョンアップしていくのはいいけど、過去に作ったものをないがしろにするのはいかがなものか。修理したくてメーカーに問い合わせると、自社の製品にもかかわらず「パーツがない」って、おたくが作った製品でしょうが! と文句のひとつでも言いたくなる。その点、頼りになるのはアメリカだ。あくまで空冷VWのような趣味性の高いものに限るが、彼らの国では例えメーカーに在庫がなくてもファンがパーツを勝手に作ってしまうし、なんならそれを自分のためだけでなく、製品として世に送り出すシェア精神さえ持っている。
で、そんな需要がなくても作って発売までしてしまう趣味の国がまたやってくれた。彼らが今回作ったのは昔のサーフボードフィン。それも超マニアックな「スターフィン」の復刻物ときた(!) この復刻フィンは、’70年代後半~’80年代初期に一部のサーフボードに採用されていた〈スターシステム〉のフィンボックスにつけるためのもの。元来、サーフボードフィンはサーフボードと一体となっているものだったが、トリップで飛行機に積む際などにフィンを邪魔に思うサーファーが増え、’70年代初期から脱着式が用いられるようになっていった。いくつかのフィンシステムが誕生していくなか、我こそはと生まれたひとつがこの〈スターシステム〉だったのだ。
ほとんどのサーフボードに用いられることなく短命に終わった〈スターシステム〉。
現在普及しているサーフボードはフィンをボルトで留めるのに対し(というか当時からほぼこれ一択)、このシステムはボルト要らずで着脱が可能。 “ワンタッチ”で付け外しができるというのが最大の個性とされていた。しかし、その長所とは裏腹に、フィンがプラスチック製で作られていたからとにかく割れやすいというデメリットも持っていて、市民権を得ることができずに終わってしまった。ヴィンテージ・サーフボードユーザーがこのシステムを採用したサーフボードを欲しがること自体ほぼないのだが、ひとつだけ例外がある。〈スターシステム〉があった時代に4度の世界タイトルを獲得したスーパースター、マーク・リチャーズのシグネチャーツインフィンがそれである。
つまるところマーク・リチャーズのヴィンテージ・サーフボードファンのためにだけあるこれを復刻したのはアメリカのフィンメーカー〈NVS〉。なぜこんなものを作ったのか不思議に思ったが、米・サーフショップ「バードサーフシェッド」のオーナーでサンディエゴの世界的サーフボードコレクター、バード・ハフマンが話を持ち掛けたと聞けばナットク。プロフェッショナルのフィンメーカーが積層板で作ったことで、強度はもちろん、乗り味もかつてのプラスチックのものとは比較にならないほどにレベルアップ。しかも120ドルとなかなかリーズナブルで有難い。
フィンにロゴがいっぱい入ってしまっているのは、ちょっぴりご愛敬だけど、そんなのはサンディングでロゴを軽く削れば写真のとおり。かつてこれが採用されていた〈マーク・リチャーズ・サーフボード〉のヴィンテージボードに付けても違和感なしとなる。なにはともあれ、メーカーにないからとはいえ、″ほぼ需要のないフィン”まで作ってしまうアメリカ人の心意気にはアタマがあがらない。
ピックアップ

PROMOTION
Gramicci Fall & Winter 25 Collection
GRAMICCI
2025年9月11日

PROMOTION
僕と彼女とパサデナ。
BIRKENSTOCK
2025年9月17日

PROMOTION
〈ポロ ラルフ ローレン〉の服には、変わらない“青春”が宿る。
POLO RALPH LAUREN
2025年9月9日

PROMOTION
〈エル・エル・ビーン〉のフィールド・コートとシティボーイ。
L.L.Bean
2025年9月9日

PROMOTION
軽やかで香り高いビールとの邂逅。地中海の風を感じる、ペローニ ナストロアズーロ。
ASAHI BREWERIES
2025年9月9日

PROMOTION
『la Galerie du 19M Tokyo』で体感する、メティエダールの神髄と未来。
CHANEL
2025年9月17日