ファッション
チロルのレトロスキーコレクター。
2024年1月13日

STYLE SAMPLE ’24
photo: Hubert Bachnetzer
text: Koji Toyoda
cooperation: Yusuke Mizusawa
2024年2月 922号初出
ウィンタースポーツの本場、オーストリアのチロル地方で、クレイジーすぎるスキーウェアマニアを発見! 膨大なコレクションをもとにその歴史を紐解いてみよう。

変型ハイネックのリブセーターにバルーンパンツ。裾はロングソックスで覆い隠したスタイルが、’30~’40年代の欧州スキーヤーの定番。「板もポールも木製だったよ」

’50年代も変わらず素朴。「チロルのスキーヤーは、伝統的なチロリアンジャケットをアウターにしていたときも」。ゴーグルは、バイク用を選ぶのがこの時代の常識。

「蛙の目のようなサングラスが、’50年代の欧州スキーヤーのトレンドだったみたいさ」。セーターの上には地元チロルの老舗〈SCHLEMMER INNSBRUCK〉の外套。

「’60年代は、意匠がスポーティに。上はセーターが多かったみたいだ」。誇らしげに着るのは、オーストリアの伝説のスキーヤー、カール・シュランツのセーター。

ポップなオレンジのセットアップは、1976年にインスブルックで開催された冬季オリンピックのオフィシャルウェア。「審判用だよ。ニット帽も大会オリジナルさ」

「このパンツも1976年冬季オリンピックのもの。開幕試合で選手が着たレアものなんだ」。合わせるのはオーストリアのスキーブランド〈EISBÄR〉の当時もののニット。

〈エレッセ〉のパンツを主役に、スキー板もポールもイタリアンカラーで統一。「でも〈DIANA〉のセーターも、〈EISBÄR〉のニット帽も、実はオーストリア製だ」

鮮烈な赤が眩しいスキーレーシングスーツは、’70年代のオーストリアンスキーメーカー〈feller〉。「ベリータイトなフィットで、やっとの思いで着れたよ(笑)」
インスタで偶然見つけたアカウント名は〝retro_skifluencer_tyrol〟。その直球すぎるネーミングは伊達じゃなく、589件に及ぶ投稿(’23年12月現在)は、何十本も並んだ年代物のスキー板をはじめ、ウェアやブーツで埋め尽くされる。ヨーロッパやアメリカでレトロスキーファッションが密かに盛り上がっていることは知っていたけれど、ここまで〝愛〟に溢れた人ってそういない。一体、彼は何者?
「グーテン・ターク! 僕はトーマス・バッハネッツァー。チロルに住む氷河考古学者だよ。1890年代~1990年代までのアイテムを趣味で集めていて、板は約1,300組、ウェアやギアは5,000~6,000点くらい。6年前に祖母にもらった’70年代のビンディングがきっかけでこの世界にハマったんだ。なぜスキーか? それは僕たちの生活に根ざした身近なスポーツだからだ。デザインの変遷も面白くて、’50年代頃までは天然素材のウェアに木製の板。’60~’70年代はスポーティでシック、’80~’90年代にはポップなネオンカラーがその象徴だね。今はオーストリアものが中心だけど、まだまだ集めたいよ」
そんなスキーウェア〝考古学者〟のトーマスさんに、今回は’30~’90年代のスタイルを再現してもらいスナップ。70年に亘るスキーファッションをおさらいしてみようじゃないか。

「’80年代初期は、ワントーンが主流の時代」。その象徴だと言って彼が選んだ一着は、地元スキーメーカー〈ANBA〉。1980年冬季オリンピックの代表ウェアだ。

グレーのレーシングスーツはチロルが生んだエクストリーマー、ヴェルナー・グリスマンモデル。「トップ選手の彼が着用しただけあり、当時最先端のスキーウェア」

「オーストリア代表チームのスキーセーターに、同系色のパンツ。ニット帽は、警察官の父からもらった官給品だよ」。オーストリア愛が強い’80年代初期スタイル。

「’80年代後半に差し掛かると、色が派手になるね。ネオンカラーのウェアはこの頃から」。オーストリアの英雄フランツ・クラマーモデルの板もどこかポストモダン的。

アバンギャルドすぎる〈STEFFNER〉のセーターにミントグリーンの〈アシックス〉のパンツ。そして、ゴーグルはネオンイエロー! 「これぞ’80~’90年代ってものさ」

時代の波はオーストリア代表のチームウェアにも押し寄せ、バキバキのネオンカラーに。「’93年に発売されたウェアで、なんと〈アシックス〉が作っているんだよ」

チロルのスキーブランド〈KNEISSL〉が発売したショートスキー「ビッグフット」がきっかけで’93~’94年頃はパーティルックが大流行。「かなりぶっ飛んでいたよ」

クレイジーカラーに、パッチやテープ使いもユニークな’90年代のスーツは、ドイツのスキーブランド〈SKIMUDA〉。「どうやらヴィンテージラバーにも人気みたいだね」
プロフィール
Thomas Bachnetzer
トーマス・バッハネッツァー︱1978年、オーストリア・チロル生まれ。地元インスブルック大学に勤める考古学者。チロルではレトロスキーおじさんとして知られ、地元のTVや新聞に載ったことも。スキーの腕前はインストラクター級。
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