カルチャー

私的にいいとこ、詩的なところ。Vol.16/玉川野毛町公園の彫刻前

2023年12月14日

photo: Keisuke Fukamizu
text: Ryusuke Kurokawa
edit: Toromatsu

サッカー帰りと思われる子どもたちとすれ違う
キャッチボールをする大人
ただ駆けていく少女たち
見慣れた公園の景色だと通り過ぎていくはずが
屹立する像に思わず足を止める
一眼レフを持った男性は気づくことなく通過していった
美術館巡りをする前に
日常を巡る必要性が顕れる
無意識に東京に気がつくのは難しい

昨日なんとも思っていなかったものが
今日のすべてだと思えることがある
知らないことをなじるより
これから知れる余地に乾杯
みんなが知っていて自分だけが知らないこと
自分だけが知っていてまだみんなが知らないこと
そうした二つの間にずば抜けたものが落ちている

そういえば半年前にも足を止めた彫刻があった
近所のあの像とこの像に通ずるものを思い
調べてみれば同じ掛井五郎さんの作品だった
家にあるのと同じような距離感で何区にも美術が潜む
贅沢東京
街と人のなかに
確かに
ずっと生き続けていく

インフォメーション

玉川野毛町公園

昭和31年に開園した掛井五郎の彫刻がふたつある公園。かつてはゴルフコースだったという立派な広さの地に人工芝のコート、野球場、プール、テニスコート、子供のための野営コーナー、古墳もあり、近くには等々力渓谷もある。令和5年度末の開園予定をめざし、ここはもうすぐ新しい公園として生まれ変わるらしい。

◯東京都世田谷区野毛1-25-1