カルチャー

私的にいいとこ、詩的なところ。Vol.1/レストラン・オークラ

2022年4月14日

photo: Keisuke Fukamizu
text: Ryusuke Kurokawa
edit: Toromatsu

おおきく広がる駐車場が地方を思わせる
青と赤の既視感のない看板
目もとまで白い毛で覆われた犬の陶像
街というより町でときおり見かける実寸の犬の陶像
郷愁がふと沸き上がる
中も外もこれだけの大きさがあるので
お昼時でもまず並ばずに入れるのではないか
どんな名店でも並んで入るようでは野暮になる

ドアを抜けると調度品やドレッシング
パンフレットなどが並び
地方のクラシカルなホテルに来たような
入り口というよりロビーといったたたずまい
飲食店ではまず見ることのない白熊の剥製
突然の旅行気分
天井がやけに高い
脈々と流れる息遣いを感じる

昭和の日差しがそこに残ったまま落ちている
平成生まれや令和生まれがここに来たとして
懐かしいと思うのか新しいと思うのか
人はときとして未来より過去に焦がれる
こちら綱島はかつては芸者が行き交った花柳街だったそう
見る影もなく今日アスファルトにマンション
土に沁みた三味線の音や
杯からこぼれた酒が最後に残るのはオークラか
昭和の夢のすべてを詰め込んだようなレストラン
行ってみたかった
が後悔になる前に

インフォメーション

レストラン・オークラ

日本における洋食レストランの草分けとして1965年に誕生。創業当時は駐車場に鯉を浮かべた池を設けていたというが、ほとんどの内外観を変えることなく綱島の地に根付き今もリーズナブルな洋食を提供。ニンニク醤油で食べるハンバーグは一度食べるとヤミツキになること間違いなし!

◯神奈川県横浜市港北区樽町1-22-24 ☎045-531-7619

Official Website
http://ksg-okurahonten.com/