トリップ
【#4】ON THE ROADERS 〜Yosemite to San Francisco〜
執筆: 〈Bong Sadhu〉Taikou Kaneda, Mikito Hyakuno
2023年11月7日
photo: Mikito Hyakuno
text: Taikou Kaneda, Mikito Hyakuno
edit: Eri Machida
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10月発売の本誌でも取り上げて頂いたように、僕たちはLA ART BOOK FAIRへ出展するため夏の間、太平洋の反対側の地に滞在していた。そして、そのフェアが終了した後、1週間ほどロードトリップに出かけた。総距離3500kmの旅。仲間たちが撮った写真を添え、このスペクタクルな旅の記録を、計4回に分けてまとめてみた。今回で最終回となる。
4. Yosemite to San Francisco
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翌日、晩飯で食べ切れなかった爆大ピザを片手に、宿からヨセミテへと車を進めた。タイオガパスロードに入る前にMono Lakeの丘上で景色を眺めた。この州道120号線は僕らの旅のルートから向かうヨセミテへの入り口で、シエラネバダ山脈を通るため、標高は3000メートルにも及ぶ。8月にも関わらず気温は13℃程で、前日のDeath Valleyとは対照的だった。溶けきれなかった雪が山頂付近にはまだ残っている。溶けた雪たちは流れの速い川、滝を作り出す。足元に目をやると削れた石たちが唯一無二の色味をしていたので採集した。
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標高2000メートル程の地点まで下っていくと、水は冷たいが湖にギリ入れたので水浴びもした。全身で壮大な自然を感じ過ぎて、人生で1番デカい声で叫んだ。崖に登りデカい岩に腰をかけ自然と一体化する。近くに自生していたsilver sageが光に反射し輝く。
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何ならヨセミテでの運転が1番楽しかった。たくさんの針葉樹林を駆け抜ける爽快感が堪らなかった。見える湖はオアシスのように見え、途中にある人々が集まるスポットはどれもユートピアであった。我々も何度も降りて散策しては、この理想郷を体感し、極楽を堪能していた。ビジターセンター前に訪れた川辺でのチルアウトが素晴らしかった。今回が1番ゆっくりと国立公園を楽しめたのではないだろうか。まさに百野のユートピアドライブ。
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ヨセミテが最終地点の国立公園だったのは、僕らにとって素晴らしい出来事でしかなかった。何故かって、人にちゃんとは説明はできない。この旅を体験してきて分かることだから、言葉にする必要もないと思っている。アンセルアダムスの写真集を見ていただけでは語れない。
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気づけば夕方で、ビジターセンター周辺を散策し、食事を取った。この日が暮れてしまうことに少し寂しさを感じてしまった。帰り際に満天の星を堪能、1時間以上その場に滞在して眺め続けた。大量の流れ星に、明らかな隕石まで皆で目撃してしまった。もちろんUFOも確認済みだ。
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ヨセミテを出てからサンフランシスコまで直行はせず、Stocktonの街の宿まで走った。今まで通ってきた田舎の街たちに比べ、郊外の少し殺伐とした雰囲気の宿であった。疲れていたのですぐに眠りにつく。
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翌朝、近くのレストランで食事をとり、最終目的地であるサンフランシスコを目指した。ジャック・ケルアックではないが、ロードトリップの最終地点にこの街を選んだのも、なかなか粋ではないだろうか。
大都市へ向かうハイウェイの渋滞に癇癪しながらも、しかし着実に車は進む。乾いた丘陵にPalm Tree。ようやく西海岸に戻ってきた気がした。サンフランシスコを案内する道路標識も目に入り、ハイテクな高層ビル群が遠目に見え始めた。
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サンフランシスコに入った僕たちは、とりあえず市街地を目指した。久々に味わう都市のカオスな車通り、次から次へと立ちはだかる急勾配な坂道。少し手に汗が滲んでいるが、ハンドルをそのまま握る。一旦車を停め、一度訪れてみたかったCity Lights Booksellers へ。ビートの聖地には、当代の詩人たちが熱い交流を交わしていたであろう空間が、今もなお残されていた。剥げたフローリングの床、壁に残った傷、木の棚から薫る匂い。自分らと年の変わらなそうな若いお客さんが熱心に本と睨み合っている。彼らが残した情熱は時代が変わろうとも人から人へ、この街に脈々と受け継がれているのだろう。
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他にも気になるお店に寄り買い物を済ませ、丘の向こうの海岸線に出た。The city of the fogと呼ばれるだけあって霧が辺りを覆っている。真夏であるはずなのに、気温もかなり低い。サーフポイントを眺めていると、ダウンヒルをカマすスケーターが通り過ぎる。この土地の印象的な風景が見れた。
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市街地から少し離れた宿に荷物を置き、その日のディナーのため夜は再び街へ戻った。最後の夜。移動中のUberの車内で旅の思い出を回想した。いろいろあった。かけがえのない出会いも、ちょっとしたトラブルも。自転車は盗まれたし、眼鏡もモーテルで無くした。常に移り変わっていった街たちは、過ぎゆく時間を加速させる。あっという間の数週間。色褪せることのない思い出たちだ。
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暖色の光が灯され、混沌と煌びやかな雰囲気が入り混じる通りが現れた。ミッション・ディストリクト。僕の敬愛するアーティストたちを生んだ街。テラス席が立ち並び、あちこちで賑やかな話声、雑音、グラスが交わる音が響き渡る。道路に座り込み缶ビールを飲む若者、テーブルでワイングラスを交わす男女。僕たちは通りに面したスパニッシュ・レストランで食事を取った。タンゴの生演奏と共に大皿のパエリアをサングリアで流し込む。
店を出てから少し歩いていると、現地のスケートクルーの一向に声をかけられた。軽く談笑をし、これからバーに行くとのことだったので、僕たちもついていった。「日本から来て、ロードトリップをしてた。そして明日帰るんだ」と伝えると、「この街へようこそ」という言葉と共に、グラスに注がれた大量のビールをもらった。店を出てからも店前で缶ビールをたくさん飲んだ。明日日本に帰らなければいけないという現実から逃れたかったのかもしれない。徐々に夜が深まり出したころ、明日のフライト時間が頭に過ぎり始めた。惜しみながらもみんなに別れを告げ街を後にする。最後にとても刺激的な夜になった。道端での偶然の出会いから、そのまま流れに身を任せられる都会の楽しさもやっぱ好きだ。
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最終日。ひどい二日酔いで目が覚める。寝過ぎた。焦りながら荷物をまとめ帰りの準備をしたせいで、惜しむ間もなくホテルを出ることになった。そのまま東海岸へ向かう仲間に別れを言い、側に付けられた車に乗り込む。強い日差しが降り注ぐ中、空港に着いた。スムーズにチェックインを済ませ、ひと段落つく。長い旅が終わってしまった。
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次はどこの見知らぬ土地を冒険するのかな。飛行機の窓から、どんどん小さくなっていく陸地を見ながら考える。旅を続けよう、それは人生だから。美しい写真と共に、心の中で未だこの思い出たちは、路上を歩き続けている。
プロフィール
金田大巧
かねだ・たいこう|2001年、湘南生まれ。ペインター、アーティスト。個人での展示や制作活動の傍ら、友人の百野幹人とパブリッシャーBong Sadhuを運営、国内外のアートブックフェアにも参加。根っからのアーセナルサポーター。
Instagram
https://www.instagram.com/taikoukaneda/
https://www.instagram.com/bongsadhu/
プロフィール
百野幹人
ひゃくの・みきと|2000年生まれ、辻堂湘南出身。主に写真家としての活動の傍、パブリッシャーBong Sadhuを運営。またDJコレクティブ Million Dollar Soundsのメンバーでもあり、活動は多岐に渡る。
Instagram
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