カルチャー
特集「BOOKWORM’S DELIGHT 本をめぐる冒険。」
NO.919
2023年10月5日
今年の夏もしんどかったですね。もう10月だけど、東京もようやく日差しと風が気持ちよくなり、秋の足音が聞こえてきた。やろうとも思わなかったアレコレへの意欲が芽生えて、なんでもかんでも「○○の秋」って言いたくなるのもわかるなぁ、なんて秋という季節の懐の深さや便利さに思いを巡らせたりしてますが、シティボーイ的にはやっぱり「読書の秋」。最新号は、本の虫たちへ贈る、3年ぶりの本の特集です。
手に取る本は、文芸でもいいし、好きな誰かのドキュメンタリーでもいい。ページに1行だけの詩集でも、眺めて没頭するアートブックでも。
本を愛する気持ちと、本に対する物欲に枠組みなんかいらないでしょ、ということを考えてたのかそうでもないのか、今回のメインは制作スタッフたちが「これが好き!」「今、気になる!」という本、本の作り手、書店の話を詰め込みまくった、多種多様・雑多なコラム集です。どうぞお好きなように、興味の湧くページで手を止め読み入って、お気に入りの本を見つけてください。
ここでは28本のコラムの中からランダムに5つをダイジェストでご紹介。
ADVENTURE 01
そろそろActual Sourceの正体をちゃんと知りたくない?
独自のデザインプロダクトや「A24」のマーチャンダイズなどで知っているシティボーイ&シティガールも多いでしょう。Actual Sourceという存在を。いまや世界中から注目され、日本でもコラボアイテム制作のラブコールを送るブランドやメーカーが続出している彼らについて、確かなことを知っている人は果たしてどのくらいいるのだろうか。彼らが本作りから興り、身を立て、パブリッシングレーベルでもあり、今も本のデザインを切望しているということを。
日本中・世界中のデザイン事務所が持っていると言っても言い過ぎではないであろう『Shoplifters』シリーズをはじめ、〈NIKE〉のこの先50年の未来予想図を描いたオフィシャルブック、彼らが見込んだ作家たちのアーティスト・ブックなど、Actual Sourceが出版する本は魅力的なものばかりだ。そして、彼らが拠点とするアメリカ・ユタ州のプロボという聞き慣れない街には自然が溢れ、仕事の仕方さえも羨ましくなる。なぜプロボなのか、どうやって今の人気を得てきたのか、Actual Sourceの由来・原点などなど、現地でじっくり取材をして色々なことを詳らかにしたのがこのページ。
ちなみに、POPEYE ONLINE STOREではActual Sourceとの企画を画策中。ご期待ください。
ADVENTURE 02
いつかケルンのヴァルター・ケーニッヒでアーティストブックを買いたい。
本や読書の特集というと文学・文芸に比重が置かれることも多いですが、この特集では「アートブックというのはいったい何なのか?」「どういうふうに写真集や図録やZINEを選び、付き合っていけばいいのか」ということを考えるページをしっかり作っています。この『ヴァルター・ケーニッヒ』のページもその1つです。
制作のリサーチ段階で『twelvebooks』や『POST』といった日本のアートブック業界でも重要な店・ディストリビューターたちから、「それなら絶対に外せない」「世界で最も重要な存在の1つ」として話にあがったのがケルンのアートブック専門店&出版社『Walther König』(日本語読みだと“ウォルター・ケーニッヒ”と書かれることもありますが、特集ではドイツ語の発音に近い“ヴァルター・ケーニッヒ”としています)。1969年に創業した老舗です。2000年の歴史をもつ美しい古都・ケルンへの取材の旅を決めた理由の1つは「コーヒーテーブルブック」という文化。ほら、ヨーロッパの洒落た人の家を見ると、本棚じゃなくて、ソファの前のコーヒーテーブルとか、スツールとかの上に、アートブックが数冊積まれてあったりするじゃないですか。日本で暮らす僕らからすると馴染みがまだ薄いけど、その様子は妙にナチュラルで、家主の感性や興味が自然な形で表されている。こういうライフスタイルの形成を70年代から支えてきたのが『ヴァルター・ケーニッヒ』だといいます。果たしてどんな人がいて、どんな本屋なのか。
ADVENTURE 03
アメリカ文学を地図で読もう。
特集内には「両観音」と呼ばれる仕様のページがあります。ページが左右にバカっと開いて、その内側にさらにビジュアルがあったり、読み物があったりする、いわゆる豪華な作りです。このページがまさにそれで、アメリカを描いた地図が左右に開きます。その中には、アメリカ文学を深く掘る濃ゆ〜い何かが待っているのです。地図自体も細か〜く読み解く面白さがあります。小説の舞台・題材として重要な10のエリアのこと、『オン・ザ・ロード』や『キャッチャー・イン・ザ・ライ』といったいわゆる名作はアメリカの中のどのあたりを巡った話なのか、などなど。
ADVENTURE 17
世界で一番雑誌が集まるロンドンの「HY MAG」へ潜入。
『ポパイ』は雑誌なので、もちろん気になる雑誌のコラムもあります。ここ、やばくないですか。雑誌の所蔵数のギネス記録を持っていて、1850年に刊行されたイギリスのファッション誌『The TATLER』とか珍しいものもあれば、〈ベネトン〉が1991年から発行している『COLORS』のバックナンバー、『The New Yorker』などのメジャーどころも揃っている。雑誌好きなら、ロンドンに行く際にはぜひアポ入れて訪れてみたい、知る人ぞ知る名所(移転計画中とのことなので、本当に行く人はしっかり問い合わせを!)。
ADVENTURE 24
ポパイの大先輩がめちゃくちゃクールなZINEを作っていた。
そのZINEは最近、突然、東京のアートブックフェアや、僕たちが好きな本屋さんに並び始め、どうにも気になる存在だった。「これはZINEで〜」なんて店主たちから説明を受けるのだけど、その写真の強さ・伝わってくる何か・写真家の興味関心の眼差しの特異さが、どうにも見過ごせない。端的に言うと、気軽な形態なのにクオリティが高すぎる。誰が作ってんだ?、と思ったら僕たちの大先輩・粕谷さんだったから仰天したわけです。
1976年に創刊した頃から10年間『ポパイ』を作り続けた粕谷誠一郎さんは、雑誌や写真集の黄金期を駆け抜けた編集者。同様に他誌で活躍していた編集の尾崎靖さん、アートディレクターの白谷敏夫さんと2020年に「Dear Film Project」というインディペンデントな出版レーベルを発足し、彼らが共に仕事をしてきた大御所写真家たちのフィルムを整理して作ったのが、僕らが見入ったZINEたちだったわけ。制作のコンセプトはレーベル名に現れています。詳しくはぜひ本誌で。きっと今の若いシティボーイ・シティガールたちにとっては、このZINEで知る、時代を築いてきた素晴らしい写真家の方々もいることでしょう。
11月のTOKYO ART BOOK FAIRの前に。
アートブックフェアの正体を知ろう。
特集はもちろん、コラム集だけじゃありません。
「What is THE ART BOOK FAIR? アートブックフェアで欲しい本を見つける方法。」というページでは、4年ぶりに開催されたLA ART BOOK FAIRへ。湘南を拠点にするアートブックのパブリッシング・レーベル「Bong Sadhu」が初めて出展するということで、運営する若き2人、ペインターの金田大巧さん・写真家の百野幹人さんに本場の様子や、体験したこと、実感したことをルポしてもらいました。
編集は、アートブックフェアを主宰する『PRINTED MATTER』やこのイベントを長きに渡りよく知る『オンサンデーズ』の草野象さん。草野さんによるエッセイでは、そもそもこのイベントってどんなコンセプトで始まったのか、何を目的とし、どんな本を売っているのかが、語られています。11月に開催される東京のアートブックフェアに行く人は、ぜひ事前にチェックしてほしいページです。
ちなみに、Bong SadhuがLAで買ってきた本やグッズの一部は、『オンサンデーズ』で販売するようですよ。数に限りがあるので売り切れ御免!、ということで。
いつになっても、本屋さんは僕らのワンダーランド!
日本全国のさまざまな書店を取材・紹介する「本屋は僕らのワンダーランド!」。このページを持っていればしばらくは書店めぐりに困ることはなさそうです。大阪や沖縄などの本屋さんを目掛けて旅をする、というのもいいですね。この特集を脇に抱えて、驚きと発見に満ちた読書の冒険へと踏み出してみよう!
発売中!
POPEYE 11月号「本をめぐる冒険。」
小説やエッセイから、ドキュメンタリー、詩集、写真集、ZINEなどのアートブックまで。本誌スタッフが世界中をリサーチして、今欲しい本、好きな本の作り手や書店をたっぷり詰め込んだ1冊。この特集を地図に、君だけの本をめぐる冒険へ出掛けよう。
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