カルチャー
あの人のリーディングリスト。Vol.1
選書:大久保佳代子
2021年10月23日
text: Kayoko Okubo
edit: Yukako Kazuno
あの人は今どんな本を読んでいるのか? 気になる人たちに最近読んだ本を教えてもらう新連載「あの人のリーディングリスト」スタート! 第一回は大久保佳代子さん。
『120の遺言』
樹木希林著
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樹木希林さんがテレビのインタビューや雑誌の取材などで語った120個の言葉が載っている一冊。嫉妬深く欲深い人間である私を程よく諦めさせてクールダウンをさせてくれます。「もっとこうなりたい」「こんなはずではなかった」と思うのではなく、自分を俯瞰して「こうしていられるのは大変ありがたいこと」と思うようになると自分が楽になると。年を重ねる毎に、染み入る言葉が増えていきます。日々生きることが、ややしんどく感じたら手に取ります。程よく肩の力を抜かせてくれ、生きることをもっと面白がってやろうと思えるようになります。
『ハイパーハードボイルドグルメリポート』
上出遼平著
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Netflixで配信されていたこの番組が大好きで、書籍化されたこの本も購入。「ヤバい世界のヤバい奴らは何を食ってんだ?」がテーマのドキュメンタリーグルメ番組。番組では描かれていなかった裏話などが書かれていて、ヤバい飯もさることながら胸焼けするほどのエピソードが満載。「リベリア 人食い少年兵の廃墟飯」など登場する人々のほとんどの行動が「生きるため」に直結していて、「生きるとは」どういうことかと考えさせられます。両親を殺され、復讐のため人を殺し、盗みをしながら生きていく日々。信じがたい過酷過ぎる人生が、同じ地球の同じ時間に実在していることを知り、特に何をするわけでもないけど、間違いなく幸せな環境で生きている自分は、本当に幸せなんだろうか…?いや彼らより明らかに幸せなんだけど、気持ちがソワソワモゾモゾしてきます。「極端にヤバい人たちについて考えることは、極端に平凡な我々について考えることと表裏一体だ」と。死ぬまでの数十年間、どう生きていくべきだろうか?知らないより断然知っておいたほうがいい現実を知ることができます。
『水たまりで息をする』
高瀬隼子著
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風呂に入っていない。シンプルだけどパンチのある1文で始まるこの小説。夫が「風呂に入りたくない」と言いだしたことから一気に生活が崩れていきます。日常における「風呂に入る」という通常の行為がひとつ欠落してしまうだけで、人も生活も社会との関わりもここまで変わってしまうとは。そんな日常と、細い溝はあるものの地続きで繋がった世界にうっかり潜む恐ろしさに脅かされながら、夫婦のあり方、夫婦で居続けるということはどういうことなのか考えさせられます。何をもって正常で何をもって異常なのか。生理的にもっとも嫌悪感を覚える尋常じゃない体臭を前にしても、無理矢理お風呂に入れたり、病院へ連れて行ったりしないのは、妻の愛情からなのか。それとも妻自身も狂っているのか。狂うということは、感情の爆発の先にあるのだろうか。「夫が人生の全てとは思わない。けれど、夫がいてくれたらそれでいい、と思っている」という文章が。どんな状況になっても必要とする存在。こんな関係性の夫婦になれるのならぜひとも結婚してみたいと思いました。
『ゆかい痛快!動物の子育ての世界』
パンク町田著
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様々な動物の子育てを味のあるイラストと共に絵日記風に書かれた一冊。動物好きな私にとっては、良い意味で最高のトイレ本です。カエルだってミズダコだって、どんな動物も子供を育てるために必死です。キタオポッサムは20頭以上の赤ちゃんを産みますが乳首が13個しかないため、争奪戦に敗れた子は命を落とします。カバキコマチグモの赤ちゃんは、初めての脱皮を終えるとママを食べ始めます。ママは抵抗せず30分で絶命してしまいます。人間からしたら信じられない行動ですが、人間が当たり前だと思うのはおこがましいと思えてきます。トイレで排泄をしながら、生き残ることのシビアさや家族には色んな形があっていいんだという多様性を学んでいます。ちなみに、コアラは盲腸内で作られた離乳食を肛門から直接赤ちゃんに与えるらしいです。
プロフィール
大久保佳代子
Twitter: https://twitter.com/ookubonbon
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