カルチャー

私的にいいとこ、詩的なところ。Vol.14/シティライツブックストアとその周辺

2023年10月27日

photo: Keisuke Fukamizu
text: Ryusuke Kurokawa
edit: Toromatsu

ピンクと金髪が混じり合った猫のタトゥーの女
チリチリロン毛にサングラスの男が順番に詩を朗読し
その足元で寝転ぶ青シャツ黒髪のホームレス
これが路上で起きている
これを見ながら酒を飲み歓声をあげる見物人たち
詩がこんなに雑に扱われる素晴らしき世界が
詩が酒や音楽やファッションと同列に咲く余地が
サンフラシスコの街角にはあった
I got the San Francisco blues
Bluer than Eternity

彼はそう書いた
看板を撮っても仕方がない
渡す宛てのない土産を買っても仕方がない
そこにケルアックが座っていた
そこでギンズバーグが本を開いた
匂い
移り変わろうと消しきれない匂い
匂い
青い

色褪せたケルアックの写真
だれも目もくれず
不釣り合いな音楽に揺れて恋路恋路
喧騒にまぎれてカウンターでロックをあおる
ここがどんなところかもう誰も知らないようだ
梁に貼られたケルアックと目が合う
初めて来たはずなのに
やっとここに帰ってきた気がした

インフォメーション

シティライツブックストア

シティライツブックストア

詩人ローレンス・ファリンゲティが1953年に創業した、自社出版物も多く手掛けるビートカルチャーに精通するブックストア。このシティライツブックストアの脇を入った路地には酒場。ポエトリーリーディングが日常的におこなわれている様があまりに印象的だった。

◯261 Columbus Ave, San Francisco, CA 94133