カルチャー

なんだ、この本屋は!?/栃木の『bullock books』と参宮橋の『Vektor shop』

Bookshops are Wonderlands!

2023年10月24日

本をめぐる冒険。


photo: Kazufumi Shimoyashiki(bullock books), Naoto Date(Vektor shop)
illustration: Tact Sato
text: Ryota Mukai
2023年11月 919号初出

電車やバスじゃ辿り着けない、
山奥の森に現れる秘境的本屋。

bullock books@栃木・矢坂

bullock books
店前の庇など、独自に増築したところも少なくない。入って左側にあるギャラリー兼カフェスペースもそのひとつだ。秋になると一面紅葉の景色も楽しめる。
bullock books
店で飲めるコーヒーには那須塩原のコーヒースタンド『COFFEE ONTARIO』の豆を使用。ドリップバッグも買える。最近はバードウォッチングにハマっているそう。

 一本道の山道を車で走り抜け、森の奥に突如として現れる緑溢れる平原に佇む素朴なログハウス。まるで『ウォールデン』のソローが暮らす世界だが、ここは栃木だ。店主の内田有香さんは大学で写真を学び『青山ブックセンター』に勤めたあと、実家の敷地で物置となっていたこの小屋を改装して店を開いた。写真やアートの棚を担当したこともあって、その手の本が充実。まさかこんな山奥で川内倫子さんや、五木田智央さんの作品集にじっくり目を通すことになるとは! 店の奥には、J・G・バラード好きだという内田さんらしくSF専門の棚や、イベントをしてもらったイラストレーターのマメイケダさんや浜松の村上製本が手掛ける本も。テラスでゆったり読書に耽れば、わざわざ来てよかったと思うはずだ。

PICK UP

3冊の本
左/建築家・長谷川明さんのプロジェクトブック『ACCEPT CHANGE AS INEVITABLE』。製本は村上製本。
中央/内田さんおすすめの写真集『マイハズバンド』。写真は潮田登久子さん。
右/工芸・ジュエリー作家、小室えみ香さんの初の作品集『pneuma』。

インフォメーション

bullock books

bullock books

店先の庭で村上製本による製本教室を開催したことも。

◯栃木県矢板市長井1840 ☎なし 10:00~17:00 不定休

Instagram
https://www.instagram.com/bullockbooks/

15冊で一つのパッケージで、
アートを文脈とともに買う。

Vektor shop@参宮橋

Vektor shop
本の他には、ヴィンテージのマガジンラックやアメリカのクリエイティブユニット「First Last」と作ったオリジナルのTシャツ、フランスのカセットプレーヤー「we are rewind」も。京都「小川珈琲」と製作したショップオリジナルのブレンドコーヒーも飲める。
Vektor shop
最上段のデ・クーニングから底はパウル・クレーまで、バウハウスを中心に広がったアートの世界が垣間見える。分売不可の全15冊。気になるお値段は14万3000円也。

 6月にオープンした、アートブックやレコードを扱うキオスク『Vektor shop』。中央でひときわ異彩を放つのが、ナイロンのベルトでガチッと固定された本の束。なんとこれで一つの売り物だ。「カルチャーとその文脈を知るには本が一番」というオーナー南貴之さんの言葉どおり、「バウハウス」をテーマに選書されたという15冊は背表紙を読むと確かに繋がりが見えてくる。直球のバウハウス本にデ・クーニングにときたら、お次は双方に関連するデ・ステイルといった具合。このパッケージスタイルは選書を担当する『twelvebooks』濱中敦史さんと、アートブックのオンライン古書店『ATELIER』の早水香織さんによるもの。じっくり眺めてアートの広い世界を想像してみない?

PICK UP

画集と作品集
1冊で買える本も。
左/彫刻家リチャード・セラによる画集『RICHARD SERRA DRAWING』。
右/デザイナー、エットレ・ソットサスが撮影した作品集『THERE IS A PLANET』。

インフォメーション

Vektor shop

Vektor shop

28日から11月3日まで、さまざまなキュレーターによる本のフリーマーケットを開催。詳細はInstagramで確認を。

◯東京都渋谷区代々木3-38-10 ☎なし 11:30~19:00 水休

Instagram
https://www.instagram.com/vektorshop_tokyo/