トリップ
ホノルルに行こうか、マイアミに行こうか。
2021年5月2日
photo: Kazuharu Igarashi
text: Toromatsu
edit: Yu Kokubu
![『ホノルル』と『マイアミ』](https://popeyemagazine.jp/wp-content/uploads/2021/05/0-1.jpg)
さすがにコロナ禍が長すぎて、旅に行きたさがマックスだ! もう非難を承知で行くことにする! とはいえ、ルールやマナーを守ってこそのシティボーイ。悩みに悩んだけど、遂にホノルルとマイアミへ向かってしまった。
![雨模様の湘南の海](https://popeyemagazine.jp/wp-content/uploads/2021/05/PS_4650-1-1600x1067.jpg)
イノウエ国際空港から外に出たときのキブン、というほどではないかもだけど、海沿いの国道134号に着くとワクワクする。というのも実は湘南だ。片瀬海岸から江の島までの約1kmの道だけでも、サーフボード置き場のあるマクドナルドがあったり、ハワイ・ホノルルから上陸したパンケーキ屋や、フロリダ・マイアミ発のロブスター店があったりするから、結構”旅をしている感”を味わえる。しかし、そんな店たちを横目に向かうのは別のホノルルとマイアミ。ここで言う『ホノルル』は定食屋で、『マイアミ』はしらす丼の店のことなのだ。
![大衆食堂『ホノルル食堂』の外観](https://popeyemagazine.jp/wp-content/uploads/2021/05/PS_4621-1600x1067.jpg)
双方捨てがたい良い店だけど、今回は陽で色褪せたグリーンの屋根と平屋の佇まいがひと際異彩を放っているこの街の大衆食堂『ホノルル食堂』へ。外から中が見えなくてちょっと入りづらいが、サーフィンの腕前もA級だった茅ケ崎出身の歌手・尾崎紀世彦や、作家の村上春樹も通った1959年から続く名店。今もこの道40年の67歳を迎えた2代目・清水政夫さんと、妻の由美さんが週5日しっかりと店を開けてくれている。
![『ホノルル食堂』のメニュー表](https://popeyemagazine.jp/wp-content/uploads/2021/05/PS_4540-1600x1067.jpg)
![](https://popeyemagazine.jp/wp-content/uploads/2021/04/PS_4608.jpg)
![](https://popeyemagazine.jp/wp-content/uploads/2021/05/PS_4551-1600x1067.jpg)
![](https://popeyemagazine.jp/wp-content/uploads/2021/05/PS_4624-1600x1067.jpg)
ガラガラドアを開けて店内に入ると、ラジオもテレビも流れていないからなかなかの緊張感。でもそれもまた旅に来たみたいで悪くない。お目当のメニューは地元の人たちがみんな頼んでいる『白身魚とえびのかき揚げ天丼』か、尾崎紀世彦が特にお気に入りだったという『アジフライ』か。さっきホノルルかマイアミか迷ったばかりなのに、ホノルルに入っても再び二択が待っている。しかし探すとアジフライの文字がなく、聞くと味やサイズが季節で異なるのを懸念して『ミックスフライ』に変えたのだそう。悩んだあげくかき揚げ天丼にして、いかにも頑固一徹そうな政夫さんに気になる店のネーミングについて伺った。
![先代が営んでいた『ホノルル食堂』、当時の写真](https://popeyemagazine.jp/wp-content/uploads/2021/05/PS_4531-1600x1067.jpg)
「親父がこの店の前からやっていた海の家の名前が『ホノルル』だったんだよ。小学校のときからそこで働かされてたから大変だった。軍隊あがりの親父だから厳しくてさ。そのくせ、客には愛想がいいんだよ。おれはダメだな、話しかけられるとめんどくさいんだ。黙って食って早く帰ってくれって思う(笑)」
![『ホノルル食堂』の店主の政夫さんと奥さんの由美さん](https://popeyemagazine.jp/wp-content/uploads/2021/05/PS_4619-1600x1067.jpg)
少し申し訳ない気持ちになりながら運ばれてきたかき揚げ天丼を黙って頬張る。これが大正解。かき揚げにかかっているタレは、水あめとみりんを用いて作っているらしく甘さが食欲をかきたてられるし、魚介で出汁をとった味噌汁もしみる。つい緊張して伸びていた背筋が猫背になって、丼を片手にがっついてしまった。
![『ホノルル食堂』のかき揚げ丼](https://popeyemagazine.jp/wp-content/uploads/2021/05/PS_4560.jpg)
「テレビを付けると、うるさいから消してくれっていうし、静かなのが好きなんだよね」と由美さん。政夫さんと一緒になる前は幼稚園の先生や、ヘルパー、難聴者の手助けもしていたそうでさすがの気配りだ。「しゃべるのは苦手だけど最近の若い人たちはあまり話しかけてこないから良い。写真を撮ってネットに載せたりしているだけだし、それがきっかけで別のお客さんが来てくれたりするからありがたいんだよね」と政夫さんから意外な言葉が。大らかな人柄も垣間見ることができたから、調子に乗ってもうひとつ質問を投げかけてみた。
![『ホノルル食堂』の店主政夫さん](https://popeyemagazine.jp/wp-content/uploads/2021/05/PS_4601-1600x1067.jpg)
「ハワイに行ったことがあるかって?あるわけないだろ。海を渡ったのは修学旅行の九州が最後!」とピシャリ。やっぱり一筋縄じゃいかない感じ。冗談でもオーダーでシュリンプなんて言わないように!
![『ホノルル食堂』の店主政夫さんと奥さんの由美さん](https://popeyemagazine.jp/wp-content/uploads/2021/05/PS_4585-1600x1067.jpg)
毎日熱心に朝8時から仕込みをして、休みの日も魚の仕入れを欠かさないという大真面目な『ホノルル食堂』を後に、お腹はいっぱいだけど忘れてはいけないマイアミの前を通る。“せっかく湘南に来たんだから、どうしてもしらす丼が食べたい”という人はホノルルから鎌倉方面へ徒歩4分の『マイアミ貝新』に行くといい。店内撮影はあえなく断られてしまったけど、2代目店主の井上満文さんが「創業は1961年。はじまりは飲み屋だったけど、しらすが流行りだして丼ぶりで出すと人気になって気付くとしらす丼の店になった」と教えてくれた。看板メニューの生しらす丼は言わずもがな、黄身を落として、卵かけご飯のようにして食べる『ゆでしらす丼』もおすすめ。
![『マイアミ貝新』の外観](https://popeyemagazine.jp/wp-content/uploads/2021/05/PS_4631-1600x1067.jpg)
![『マイアミ貝新』](https://popeyemagazine.jp/wp-content/uploads/2021/05/PS_4637-1600x1067.jpg)
ホノルルかマイアミを目的に湘南に訪れるもよし、江の島観光のついでにホノルルかマイアミに立ち寄るもよし。ただしどちらの旅先も緊張感をもって心してかかろう!
インフォメーション
ホノルル食堂
◯神奈川県藤沢市片瀬海岸3-24-25 ☎0466・24・3223 11:00~14:00 月・金休
インフォメーション
マイアミ貝新
◯神奈川県藤沢市片瀬海岸2-17-21 ☎0466・23・3960 11:00~17:30 不定休
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