FOOD

私のBEST3DISHES/市川実和子

市川実和子とシンプルの極致な3皿。

2021.04.07(Wed)

text: Miwako Ichikawa
photo: Naoto Date
edit: Ryoko Iino
2018年5月 853号初出

『オーバカナル』のグリーンサラダに初めて出会った時は本当に驚いた。運ばれてきたお皿の上には、すっきり、こんもりと盛られたサラダ菜とドレッシングだけ。緑色が目に鮮やかで、葉は柔らかく、ほの苦く、サラダ菜ってこんな味がするのだなぁと思ったのを憶えている。そして食べ終わると、またすぐに食べたいって思っていた。

 今回ご紹介する3皿、シティボーイたちにはどれもこれも物足りないものなのかもしれない。子どもの頃からやけに味覚が淡白で、酒の肴のようなものばかりを好み、ふりかけパックの中でいちばん好きなのは「ごま塩」だった私は、そもそも、いろいろなものが入っていたり、たくさんの具材がのっていたりする食事を求めることがあまりない。たとえばラーメン。いろいろのっていると、つい「具があると気が散るなー。麺とスープに集中したいなー」って思ってしまう時がある。そんな人間が外食をしていてよく思うのは、たくさんの食材を合わせて楽しむ料理は数あれど、その真逆のメニューがある店は少ないということ。

 サンドイッチも、最近は色とりどりにぎっしり詰まった豪華なものばかりで、あれはあれで良いけれど、私が食べたいって思うのは実にシンプルだったりする。その中のひとつ、『ヴィロン』のジャンボンキュイ・ブール。パリッとしたバゲットに挟まれているのは、たっぷりのバターとハムのみ。それはそれはしみじみ美味しくて、顎が疲れるくらい噛み締めながら、ぼーっとしてしまうほど。

 そしてもうひと皿。通名「あんみつ屋さん」の名の通り、甘味屋で食べるものは「あんみつ」とばかり思っていたけれど、ある日、豆かんという存在に気がついてからは、そればかり頼むようになってしまった。寒天の香りの良さと、お豆のほっくり、黒蜜の風味。それぞれが美味しい、『みはし』のようなお店のじゃないと、さみしい結果になってしまうので要注意だけれども、そうじゃないかぎり、豆かんはいくら食べても飽きることがない。すかっと清々しいくらいシンプルなひと皿の存在は、きらきらと豪華な食べ物ばかりの今、新鮮な存在なのではないのかなと思う。そんなお皿に出会うたび、何度でもじっくり向き合いたいと私はいつも思う。

文・市川実和子

1. 『オーバカナル』のグリーンサラダ
赤い椅子、黒板のメニュー、ギャルソン。全部がさながらフランスで、旅行気分。暖かい季節はぜひともテラス席に座りたい。¥660

東京都千代田区紀尾井町4-1 新紀尾井町ビル 1F ☎03•5276•3422 
10:00~23:00(LO22:30)、日・祝~22:00(LO21:30) 無休

2. 『ヴィロン』のジャンボンキュイ•ブール
ヴィロンの“顔”であるバゲットレトロドールに、フランス・バイヨンヌ産のピエール・オテイザのハムをサンドしたこの店の定番。テイクアウトもいいが、2階の真っ赤な座席で食べるのもよし。¥874

京都渋谷区宇田川町33-8 ☎03・5458・1770 
9:00~22:00 無休

3. 『みはし』の豆かん
創業73年の人気店。じっくりと炊いたホクホクのえんどう豆と歯触りがしっかりとした寒天、それにすっきりくどくない蜜の組み合わせは大人の味わい。餡がなくても満足! ¥570

東京都台東区上野4-9-7 ☎03・3831・0384 
10:30~21:30(LO21:00) 不定休

プロフィール

市川実和子

いちかわ・みわこ|女優、モデル。1976年、東京都生まれ。モデルとしてデビューした後に、映画やテレビドラマへの出演など女優としても活躍する。現在はモデルの他、文筆など多方面で活動中。
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