カルチャー

みんなのレコード買い付け物語。/『CARIB RECORDS』店主・平本高志

2023年5月19日

illustration: Minoru Tanibata
text: Takashi Hiramoto
2023年6月 914号初出

アテが外れて意気消沈。
窮地から救い出してくれたのは
スパイダーマン!?

 ジャマイカで買い付けを始めたのは17年前。日本人が首都キングストンでやっている有名な宿があって、最初はそこの人に古いレコードを売っている場所を教えてもらいました。だけど、2回目からは自分で販路を開拓しようと、まず目指したのは一軒のレコード屋。今、ジャマイカにはレコード屋ってほぼないんですよ。でも、当時はまだ少しだけあったので、店に聞けば芋づる式にレコードを扱っている人を教えてくれるんじゃないかと期待して。でも、行ってみたらやってなかったんですよ(笑)。途方に暮れて店先に座っていると、「お前、レコード欲しいのか?」と声をかけてくれたのが一人のジャマイカ人。僕が試聴用の「コロンビア」のポータブルプレーヤー「GP3」を持っていたので、話しかけてくれたみたいです。

 実は、ジャマイカには海外からレコードを買いに来る人を世話する“レコードマン”って仕事があって、彼もその一人だったんです。しかも、’80〜’90年代にスパイダーマンという名で活躍した知る人ぞ知るアーティストでした。今も仲良くさせてもらっているんですけど、僕がジャマイカでちゃんと買い付けできるようになったのは、彼のおかげと言っても過言じゃない。実際、その後は彼と一緒にレコードを持ってそうな民家を訪ね歩くというのが、僕の買い付けの基本になりましたから。

平本さんとスパイダーマン。彼はかつてスーパーマンという人とコンビで活動をしていた。

 ただ、見つかったとしても、9割はゴミみたいに扱われているんですけど。たまに普通のおばあちゃんの家でLLANS THELWELL AND HIS CELESTIALSの『MUGHEAD SKA』みたいな名盤がきれいなまま見つかることもありますが、それでも大量のゴキブリやネズミとの遭遇は避けられません(笑)。

 ちなみに、帰るときには、いつも日本から持ち込む「GP3」を、レコードマンたちが所有しているレコードと交換します。みんな欲しがるので。だから、まず「GP3」をヤフオクで買うというのが、僕の買い付けの1段階目です。

プロフィール

平本高志

ひらもと・たかし|2006年、大阪で『CARIB RECORDS』をオープン。スカ、ロックステディ、レゲエなどジャマイカ音楽のレコードを扱っている。店頭では’60〜’90年代のオリジナル7インチを中心に、再発盤やLPも取り扱っている。

◯大阪府大阪市浪速区難波中2-8-71 2F ☎06·4308·5229 13:00〜18:00 火・水休