不思議なレコードを生み出す WATZMANNって何者?
2023.05.18(Thu)
photo: Hikari Koki
text: Koji Toyoda
coordination: Hikari Hakozaki
2023年6月 914号初出

ドイツの伝説的な実験音楽ユニットとして知られるMimirのメンバー、エルケ・スケルターのソロプロジェクト。このアートアルバムは、NYのMoMAで展示されたことも。¥55,000(ロスアプソン☎03·6337·1595)
『ロスアプソン』で不思議なレコードを発見! ケーキボックスのような箱を開けると、威風堂々とした山のジオラマがドデン! とお目見えする摩訶不思議な作り。なんなんだこれ? この一枚を製作したのはオランダのレーベル「Watzmann」。一体どうしてこんなレコードを作ったのか。理由が知りたくてコンタクトしてみると、すぐさまオーナーのルネ・ハイドさんから返事が返ってきた。
「わぉ、よく見つけたね。それはVegetarian Bavarian In Exileの作品『Ja Soa Schmarrn』。僕にとってもお気に入りの一枚なんだ。なにせ100枚限定で、一枚一枚、友達や仲間とおいしいランチやディナーを食べながら手作業で作ったからね。針は落としてみた? 山にぶつかるといったんジャンプして盤の上に戻ったり、あるポイントで短くループしたり。予測不可能に進行するから、不協和音のような面白い音楽が流れるんだよ。他にも、盤上で短編映像を見られるゾエトロープ(回転のぞき絵)型レコードや再生すると絵柄が動いて見えるピクチャー盤。Tシャツでくるんでリリースしたものなど、アンチ・レコードなチャレンジをたくさんしているんだ」
なぜそんなことを? って質問には「僕にとってレコードとは、革新的な芸術を作るために必要不可欠な道具なんだ」ときっぱり。世にもアートなレコード体験をしたくなったら「Watzmann」の旧作をまず漁ってみるのが得策かもね。
オランダの映画祭で知り合った映像作家と共作したFelix Knothの作品。19世紀末に流行したゾエトロープ(回転のぞき絵)を装着。盤が回転すると短編映画が楽しめる。

日本人のノイズアーティスト、Aubeの作品も密かにリリース。再生すると盤面にプリントされた水紋が端の方に向かって動いているように見える。ズバリ、テーマは「波紋」。

ノイズユニットVance Orchestraの作品は、古いSP盤にコーティングをして上から新たに溝をプレス。コーティングが不完全な部分に針が落ちると、元のSP盤の音が聞こえる。