ライフスタイル
いい仕事ってなんだろう?/Sho Shibuya
自分の決めたルーティンは何があっても継続する。
2023年4月17日

「誰にも頼まれていないですけど、タイムズが
印刷され続ける限りは続けると思います」
365日、その朝の日の出を当日の新聞「ニューヨーク・タイムズ」(以下、NYT)の1面に描く。このルーティンをずっと続けているのが、ペインターのSho Shibuyaさんだ。彼は朝5時に目を覚まし、自宅の屋上で朝日を撮影。目覚ましの白湯とフルーツと一緒に、NYTのウェブ版に目を通す。そして4マイルのランニング後、いつものニューススタンドで紙のNYTを買って、冷水シャワーを浴び、瞑想後に朝食を作る。この生活習慣を続けるのもすごいけど、そこからルーティンの本番であるペイント作業に取り掛かる。今や、世界各地で展示が開かれるほど有名になったペイント作品は、本家NYTにも取り上げられ、パンクの女王パティ・スミスからもラブコールが届くようになった。この“日課”が、彼の地位を確立したのだった。
「続かなかったことはありますよ。建築もそうだし、勉強も、当時やってたブレイクダンスも。数えたらキリがないです」
在学中にグラフィックデザインに興味を持ち、出版社で雑誌のエディトリアルデザイナーに。独立後は数年間東京で活動した後、グラフィックデザイナーとして成長したいという思いのもと、27歳のときに渡米する。「面接を受けても何言ってるかさっぱりなレベルの英語力でしたが(笑)」とはいうものの、わずか3か月でデザインの腕が買われ大手エージェンシーのインターンに。その後はデザイン事務所を渡り歩き、2016年にスーツケースブランド〈Away〉のアートディレクターに。
「実は朝型生活にシフトしたのはこのタイミングで、それまでは夜中2時に寝て、朝8時に起きて眠い目を擦りながら会社に行く感じでした。でもあるとき、河原温さんの『Today series』という日付が描かれた作品を見て、時間をテーマに日々を記録してみたいと思ったんです。それで、NYTシリーズの原型となる月曜から日曜までをカタカナで表現するペイントを始めました。それを続けるためにお酒も平日は減らして、17時に退社するために朝早く出社するようになった。当時は自分がルーティンを守っているという感覚はなかったですが、今思い返すとそこで基礎ができたと思います」
そして2020年4月、コロナ禍を機に、NYTのシリーズを作りはじめた。4月にその習慣は約1200日を超えた。いやいや、今日はいいでしょ、と言ってくるもう一人の自分もちゃんといるらしい。そこは普通の人たちと変わらない。それでも続けられる秘訣はあるのだろうか?
「究極を言うと、やらないという選択肢をなくすということですかね(笑)。雪が降ろうが、気温がマイナス16℃だろうが、走りに行きますし、絶対その後に冷水シャワーを浴びる。やることが決まっていると時間だったり頭に余裕が生まれるからか、新しいことに挑戦したくなる。誰にも頼まれていないですけど、NYTが印刷され続ける限りは続けると思います。人生のミッションだと思ってます」
Shoさんが言うように、ルーティンを続けるコツや楽な方法はないけれど、その分、継続することは、どこかでいい仕事に繋がっているのかもしれない。
Sho Shibuyaの仕事内容
朝のルーティンを終えて、9時頃にはスタジオに来てその日の朝焼けのペインティングを始める。ペイント後のドライも含めて2~3時間ほど。その後はメールの確認・返事をしたり、描いた作品の撮影、新しいアイデアを練る時間も作る。17時頃には帰宅。


延べ1200枚以上ある中で、
特に思い入れの強い作品。

ロシアがウクライナへの侵略を開始した2022年2月24日に、その侵攻を伝えるニュースに憤りを感じ制作した一枚。
これまでにも、度々この戦争に関する作品を作っている。

2020年5月24日制作。アメリカ国内の新型コロナ感染症による死者の数が10万に迫ったこの日、NYTの1面は犠牲者の名前だけで埋められた。この記事をきっかけにフルページにペイントする現在のフォーマットが誕生した。
プロフィール

Sho Shibuya
ショー・シブヤ︱1984年、千葉県出身。2011年にNYに移住。2018年には自身のクリエイティブエージェンシー「Placeholder」を立ち上げるなど、もともとは雑誌のエディトリアルデザインや広告、ブランディングなどを手掛けるグラフィックデザイナー。2020年、コロナ禍で様々なニュースが飛び交い新聞の紙面も混沌としている中で、ふと自宅の窓から見た朝日が美しく、そのコントラストを表現しようと、NYTシリーズを作り始める。パティ・スミスやサラ・アンデルマンなどの著名人や、〈Saint Laurent〉、〈A.P.C.〉とのコラボレーションも。日本でも、2022年に伊勢丹新宿店にて展示されるなど、世界各地で展示される。
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