カルチャー
【#2】これからの建築家はローカルを変える
2022年10月24日
text: Tomohiro Okusa
以前、静岡県沼津市の店舗・住宅デザイナーである藤原慎一郎さんを取材したときのこと。事務所立ち上げ当初は仕事がないので、まず好みのカフェを自らつくり、そこに来たお客さんに「名刺を渡し、営業していた」という話を聞いた。
このカフェの空間が好きで集まるお客さんたちは、すでに藤原さんのデザインセンスと通じる人ということになる。だからこの営業は、効率的だし、コミュニケーションがとりやすい。そして藤原さんが手がけた“近い感性”の店舗同士は横のつながりが生まれ、沼津周辺での活性化につながっていく。
(※藤原さんは2015年に若くして急逝されました)

建築というと、例えば前川國男さんや丹下健三さん、さらには安藤忠雄さん、隈研吾さんなどのスター建築家やその作品を思い浮かべるかもしれない。だけど、そうではないスタイルで活動する建築家がローカルにいるのだということに気がついた。

コロカルに「リノベのススメ」という連載がある。さまざまな建築家にリノベーションの実例を自ら綴ってもらうものだ。ローカルでは、新しく建てなくても、建物は余っているのである。一戸建てをはじめ、廃墟となったビル、倉庫、廃校になった小学校・中学校舎、蔵や銀行の跡地なんてものもある。そうした「遊休不動産」をリノベーションというかたちでカフェ、宿、コワーキングスペース、シェアオフィスなどさまざまなものによみがえらせる。

最近の記事を紹介すると、北九州の団地リノベ、函館の土蔵ギャラリー、JR日南駅の居場所づくり、熊谷のソーシャル空き家などなど。
そんな建築家の思考を追うテキストが、とてもおもしろい。建築家はロジカルに話を展開できるし、一方で自分が手塩にかけた「子どもたち」の話なので思い入れがあってアツい。
彼らは建物自体のハードをつくりながら、その先の利用のされ方などのソフト面にも気を配り、自らその場に乗り出すことも。そもそも建てる目的(時に建てないという選択も!)が、コミュニティの創出や地域再生だったりするので、これからの社会における気づきにあふれている。

これまでもスター建築家は、社会に大きな影響を与えてきたと思う。しかしこれからは、大袈裟かもしれないが、リノベマインドを持った若き建築家が日本のローカルをつくっていくのではないか、とすら思っている。
プロフィール
コロカル編集部(大草朋宏)
コロカル編集部|2012年、日本の「地域」をテーマに始まったウェブマガジン。「ローカルは楽しい! ローカルはカッコいい! ローカルは進化している!」という視点を、集合的なかたちにして日々発信。すぐれた実践で課題を乗り越え、新しい生き方、働きかたを見つけて暮らす人やコミュニティの存在とそのストーリーを伝えている。
Officilal Website
https://colocal.jp/
おおくさ・ともひろ|1975年、千葉県生まれ。フリーランスの編集者・ライターとして活動しながら、コロカル編集部に所属。昨年、金沢に移住し、ローカルでの活動も模索中。
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