フード

コッポラ一家とスパゲッティ。

2021年4月10日

illustration: Kenta Kaido
text: Keisuke Kagiwada
2015年9月 821号初出

コッポラ一家とスパゲッティ。

 川島なお美風に言うなら、コッポラ一家の血はトマトソースでできている。念のためコッポラ一家について説明しておくと、フランシス・F・コッポラをその大黒柱とし、息子のローマン、娘のソフィアで形成される映画監督一家のことだ。

 そんな彼らは、なぜか揃いも揃って自身の作品の中で「トマトソースのスパゲッティを作る」というシーンを撮っている。フランシスなら『ゴッドファーザー』、ソフィアなら『SOMEWHERE』、ローマンに至っては、映画ではないが、監督したダフトパンクの「Revolution 909」のPVはほとんどがこの料理を作るシーンだ。興味深いのは、決まってそれは家族の絆を再確認する局面において登場するということである。

 その理由を探るべく調査を進めていると、驚くべきことが判明した。なんとフランシスは食品メーカーを経営しており、そこでも様々なタイプのトマトソースを販売しているのだ。どうしてそこまでこだわるのだろうか? どうやら、このソースのパッケージに描かれた少女がすべての鍵を握っているらしい。その正体はフランシスの母、イタリア・コッポラだ。

 そこで彼女の自伝的なコラム満載のレシピ集『私はイタリア ママ・コッポラのパスタブック』を読んでみると、2つのことがわかった。この一族の絆が『ジャポネ』の麺よりも太くて強いこと、そして、その傍らにはしばしばママ・コッポラによるトマトソースのスパゲッティがあったことが。

 お袋の味を食べて、自らの出自に思いを馳せる。そんな瞬間を誰だって経験したことがあるはずだ。家族の絆を再確認する局面において、この料理を作るシーンが登場するのには、きっとそんな意味があるのだろう。ゴッドマザー、恐るべし!