ファッション

確かにこれは変わったお手入れだ!【後編】

2022年3月29日

実用とシック。


photo: Naoto Date, Aaron Wynia (Toronto)
illustration: Hiroaki Seto
coordination: Aki Takabatake (Toronto)
text: Shintaro Kawabe
2022年4月 900号初出

④レザージャケットって乾燥機に入れちゃっていいの?

 カチコチになったレザージャケットはどうお手入れしていますか? とレザーブランド〈CCU〉のデザイナー金子翼さんに聞いてみたら、とても理にかなったテクニックを伝授してくれた。「“革”にしていく中で、乾燥機に長時間かけて柔らかくするミリングという工程があります。その原理を基に、ミンクオイルを塗って油分を含ませてからコインランドリーのドラム式乾燥機を回せば、コシが抜けて柔らかくなるんです」

-用意するもの-

1.「ミンクオイルを薄く布巾につけて、革の全体に均等に行き渡るように馴染ませます。その後、1日ほど置き、乾かします」
2.「コインランドリーのドラム式乾燥機に低温でかけます。10分ごとに縮みがないか確認し問題がなければ1時間ほど回します」

-AFTER-

教えてくれた人

金子 翼 さん

〈CCU〉デザイナー
レザーシャツジャケットをメインに作るブランド〈CCU〉のデザイナー。ブランド名は地元岩手県の祭りチャグチャグ馬コからとった。

⑤タコも洋服も酢漬けにすれば柔らかくなる。

 糊がパリパリについた新品のディッキーズって硬くてちょっとはきにくい。そんな悩みに、代々木上原の古着店『SINOT』の木村謙太さんがトリッキーな解決策を教えてくれた。「デッドストックを着用しやすくするために研究を重ねたフランス人のディーラーさんに聞いたやり方で、肉やタコと一緒で洋服も酢に漬けると酸性になって柔らかくなるし糊も取れると。酢は消臭効果もあるんでスニーカーの酢漬けもできますよ」

-用意するもの-

米酢でもできるけど、塩分が多いほうが柔らかくなるので白ワインビネガーを使っている。

1.「まず、一度水通しします。ぬるま湯が入ったバケツに裏返した洋服を浸して、ゴシゴシと洗ってください」
2.「このバケツならビネガーをキャップ2杯ほど入れます。一度揉み洗いしたら、糊を浮かせるために約20分間、酢漬けします」
3.「20分たったら軽く揉み洗いをして、水で洗い流します。そして最後は天日干しです。服についた酢の匂いが取れるんです」

真水よりぬるま湯のほうが
柔らかく仕上がるので
おすすめ~。

教えてくれた人

木村謙太 さん

『SINOT』バイヤー
フランスのヴィンテージのワークウェアをメインに扱い、お店のデッドストックも基本酢漬けしてから出すのでいい風合いで着やすい。

⑥手に塗った流れでベルトにもニベア。

「毎日ニベアのハンドクリームで革小物を保湿しています」と『MONK』店主の阿部渉さん。肌のカサつきが気になる年頃になり、手にたっぷりニベアを塗るようになったことから、余ったクリームを革小物にニギニギし始めた。それからはや2年、毎朝のルーティンになり手も革小物もしっとり滑らかに。

-用意するもの-

必要なのは、ニベアのハンドクリームオンリー。阿部さんはいつも保湿できるように、持ち歩く。

教えてくれた人

阿部 渉 さん

『MONK』オーナー
珍しいクラシックなアイテムが揃う下北沢の古着屋『MONK』の店主を担う傍ら、自身のブランド〈PUBLIC SPHERE〉も手掛ける。

⑦自転車でついた汚れは自転車のつもりで。

 自転車に乗るのは好きだけど、パンツの裾にチェーンの油汚れがついたときは最悪の気分だ。取りづらい汚れだけど、自転車が好き過ぎて7台も所有する〈アンスラックス〉の中野亮介さんは、なんと自転車用のパーツクリーナーで綺麗にしていた。「餅は餅屋といいますか。自転車の部品を綺麗にするほど強いのでスプレーの分量が多いとパンツの色も落ちてしまいます。やり過ぎに注意ですが、ちょっとの汚れだったら消えますよ」

-用意するもの-

モータースポーツの部品メーカー〈WAKO’S〉のブレーキ&パーツクリーナー。これが一番。

教えてくれた人

中野亮介 さん

〈アンスラックス〉デザイナー
デザインから縫製まで一人で作るイージーパンツの専業ブランド。新代田のお店の前に置いてある自転車は全部中野さんもの。

⑧お手入れは脱いだ直後から始まっていた。美しいセンタークリースのつけ方とは。

 デニムにも綺麗なセンタークリースをつける尹勝浩さん。その方法はというと、なんとデニムを脱いだ直後、洗う前、干す前と、執拗にアイロンをかけていたのだ! 「出掛ける前だとアイロンの蒸気がジーンズから抜け切らずまだ繊維が不安定な状態ではくことになるので、帰宅して脱いだ直後に手入れします。パンツ一丁でやることもありますね。それに湿った状態のほうが折り目をつけやすいので洗濯後、糊をつけてアイロンしてから乾かします。面倒に思われるでしょうが、日々当たり前のように行っていると、やがて自分とデニムだけが対峙する時間が習慣になりますね。ヨガの感覚に近いでしょうか」

-用意するもの-

-アドバイス-

細いデニムはセンタークリースが取れやすいので、跡が残るようにラインに沿って縫っている。しばらくたって生地の色がほんのり変わってきたら、抜糸する。

教えてくれた人

尹 勝浩 さん

ファッションディレクター
小学生の頃からアイロンがけが好き。リビングには常にアイロン台が出してある。重曹信者で洗濯にはもちろん歯磨きにも使用する。

⑨ソースが飛んだら炭酸水をかける。

「BBQには炭酸水が必須アイテム。すぐにかければ、ソースのシミがある程度消えるんです」と教えてくれたのは、BBQ大好き『Young』店主の石橋誠也さん。お手入れ好きの奥さんに教えてもらって以来、飲食店でケチャップなどの油汚れをつけてしまったときも、炭酸水をオーダーして処理をする。「もし炭酸水がなかったら、バッグの中に忍ばせている〈タイド〉のシミ抜きペンを使います。シミは絶対に嫌!」

-用意するもの-

石橋さんはウィルキンソン派だけど、炭酸水ならなんでもOK。〈タイド〉のシミ抜きペンはアメリカで出合ってから手放せない。
アマゾンで買えますよー。

教えてくれた人

石橋誠也 さん

『Young』店主
昨年の2月に世田谷ボロ市通りにオープンした古着屋さん。アメリカのBBQグッズにも目がなく、〈weber〉のグリルを愛用中。