カルチャー
【#2】私が中華圏のポップスにハマった時
執筆: 関谷元子
2021年12月19日
text: Motoko Sekiya
edit: Yukako Kazuno
90年代の最初の頃、はじめて台湾に行きました。
当時、サルサという音楽が大好きだった私は、ニューヨークで生まれたサルサの多くのミュージシャンを生んだカリブ海の島、プエルトリコに似ているなあ、などと親しみを感じ、では、ここにはどんな音楽があるのだろうと思い、台北のレコード店に行き、人気の台湾の歌手をくださいと言いました。
そして、たくさんのアルバムを買ったのですが、その中で、カッコ良いではないか、と思ったのが、ロー・ターヨウ(羅大佑)というアーティストの「原郷」というアルバムであり、その中に入っていた「火車」という曲のMVでした。火車は汽車の意味です。
ここにはどのような意味があるのだろうと思い、このかたにインタヴューをしたい、と思うようになりましたが、台湾にツテはありません。
そして月日が過ぎ、東京で行なわれた音楽祭のために来日した一人の音楽業界の人に出会うことができました。ランディ・チャン(張培仁)という人で、今に至るまで台湾音楽業界を牽引してきたすごい人です。さっそく台湾に行き、ランディさんの会社を訪ねました。
その時、ランディさんは、魔岩(マジック・ストーン)という会社をスタートさせた所でした。台湾のクリエイティヴなアーティストとともに、北京のロックをリリースするんだと言っていました。
北京には面白いロックがあるんだよ、と嬉しそうに話してくれたランディさん。マジック・ストーンがリリースしたのは、こんなアーティストです(一部です)。
まずは、タン・ダイナスティ(唐朝)、これぞハード・ロック・バンド。
4人のメンバーは180センチ以上、ほとんど笑わないし、そりゃあ威圧感ありました。来日した時、インタヴューでは、日本人的にいえば喧嘩売っているみたいで、大丈夫かとハラハラしましたが、飲めば気のいい若者でございました。
そして、ドウウェイ(竇唯)。もともと黒豹というバンドにいましたが、マジック・ストーンからはソロで出ました。一度、彼のリクエストで北京で焼肉を食べに行ったことがあります。静かでシャイだけれど、気遣いもやさしさもあり、素敵な人だったのを覚えています。90年代中華圏を席捲した女性シンガー、フェイ・ウォン(王菲)の最初の旦那様と言われることもありますが、彼自身も北京ロック・シーンでリスペクトされていた人でした。
私が本格的に中華圏にハマり始めた90年代、台湾のポップ・シーンを見ると、香港の、映画にも出て歌うスターたちがそれはそれは大人気でした。そして、一方で、アイデンティティを表現するアーティストが登場しました。
この時代、台湾は、87年に戒厳令が解除され民主化された時期です。若者が、自由に音楽で表現できる、そんな時代を迎えていたんですね。
この時期に、台北にも北京にも香港にも行くことで、それぞれの音楽の面白さを感じることができたのは、貴重な体験です。
今、台湾のポップスをお好きなかたなら、フリーでアプリをダウンロードでき音楽が聴ける音楽プラットフォーム、StreetVoice.comをご存じかもしれません。ここには自身の曲を投稿でき、ここに曲が載ったことで有名になったアーティストも多くいます。https://streetvoice.com/
それから、日本のアーティストも結構ライヴをしたことがあるかと思います、Legacy、レガシーというライヴハウス、https://www.legacy.com.tw/page/topic
それから中国でも成功している音楽祭、SimpleLife、これらを主催している会社のボスが、ランディ・チャンさんなんですね。
さて、めくるめく中華圏ポップスの渦の中に巻き込まれた私は、ついにロー・ターヨウという大物アーティストにインタヴューすることになりました。彼はその頃香港でレコ―ディング・スタジオを経営していたので、香港でのインタヴュー。そして、そのインタヴューの最初にローさんが言ったのが、「僕は客家人だ」。
え?台湾人でもなく中国人でもなく客家人?しかも何故それを最初に言うの?ということで、私の頭の中には???マークがたくさんになりました。そこから深く面白い中華圏の音楽の魅力を少しずつ知ることになったのです。
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