カルチャー

【#1】World Music Cruise

執筆: 関谷元子

2021年12月12日

text: Motoko Sekiya
edit: Yukako Kazuno

InterFM897の「World Music Cruise」という番組でお話をしています。世界をクルーズしながら、その土地土地のいろいろな事と音楽を紹介していこうという内容です。
たとえば、11月半ばに取り上げたのは、南米のペルーでした。
ペルーといえば、インカの遺跡マチュピチュが有名ですね。このマチュピチュはどうして作られたんだろう、といったお話をしながら、番組後半では、チーチャという音楽を紹介しました。

南米のコロンビアが生んだクンビアという音楽があります。
あの、2拍子でユル~い音楽にハマったかたもいるのでは、と思います。
このクンビアがペルーに行って、いろいろ混ざってできたのが、チーチャなんですね。
そのチーチャの今は亡き大スター、チャカローンの曲はこんな感じ。

いいですよね~。歌謡性高しですね。ラテンですね。
そして、最近、日本では、メリディアン・ブラザーズ&コンフント・メディア・ルナの「地上に平和を」というアルバムがリリースされたのですが、これは、「コロンビアの謎モンド集団」などと言われている、クンビアやサルサなどを混ぜてエレクトロニックに仕上げたメリディアン・ブラザーズが、コロンビアの伝統的なクンビアを奏するコンフント・メディア・ルナと一緒に出したアルバム。

このアルバムの1曲名に収録されている曲「テンサキージョじゃ殴られるかもよ」はこんな感じです。

気持ちよいです。いつかライヴで聴いて、この音楽に身体をあずけてみたいと思います。
「World Music Cruise」では、毎回世界の色々な場所の音楽をご紹介していますが、もちろん、私がすべての音楽を知っているわけではありません。今回はこの国を取り上げよう、と決めてから、色々探して本を読んだり音楽を聴くわけです。
そして、へえ~、とか、ええっ?と思うような音楽に巡り合える喜びがあります。

特に、日本のレコード会社が熱心にリリースしているワールド・ミュージックの作品には、丁寧なライナーノーツが付いていることが多くて、知識も増えて音楽も楽しめるんですね。
最近、そんな日本盤を色々聞いていて、感動したアルバムがあります。
北アフリカのマグレブ地方にシャアビという大衆音楽がありますが、その中のモロッコのシャアビの父といわれるホスィン・スラウィの、生誕100年の今年、日本でアルバムがリリースされたことなのです。

ホスィン・スラウィさんは、若くして亡くなったのですが、彼がフランスに住んでいた1948年から50年というたった3年の間に録音した30数曲のみが残っていて、そして今回日本盤「The Father Of Moroccan Chaabi」に収録されたのが、そのうちの16曲。

このアルバム、なんと、一人の日本人が10年をかけて研究し、制作したものです。その情熱に敬意を表したいですし、中身を聞いてみれば、それはそれは引き付けられる音楽が詰まっているのです。このCDを制作したかた、DESERT JAZZさんと仰るようですが、その制作過程や思いは、このかたのブログで読むこともできます。もちろんライナーノーツでも。

そして、そのアルバム「The Father Of Moroccan Chaabi(モロカン・シャアビの父)」に入っている曲の中でも、わりと西洋的な香りがする曲だと思いますが、「アララ・イラリ」という曲はこんな感じです。

いかがでしょうか。
世界にはまだまだ興味深い音楽がたくさんありますし、コロナ禍でも次々と音楽が作られ、そして発表されています。そんな音楽を聴きながら、今はなかなか行けない世界のどこかに想いを馳せるのも、なかなか良いものだ、と思います。

プロフィール

関谷元子

せきやもとこ | 音楽評論家。桐朋学園大学音楽学部卒業。CBSソニー(現・ソニーミュージック・エンタテインメント)入社。その後フリーランスの音楽評論家に。ワールド・ミュージックを専門としているが、1990年前後から台湾をはじめ中華圏のポップスを主に紹介している。現在は、InterFM897『World Music Cruise』 選曲構成・DJ、国士舘大学講師、Podcastスキアジ出演、原稿執筆、イベント制作司会など。中華圏とのコーディネートも行なっている。