ファッション

ミヤコ・ベリッツィのNY古着通信。

2021年11月19日

僕らの古着ワンダーランド。


photo: Omi Tanaka
coordination: Shimpei Nakagawa, Momoko Ikeda
text: Shimpei Nakagawa
2021年12月 896号初出

ここはいつ来ても新しいものに出合えるブルックリンの大好きなお店。
さーて何買おう?

10ft Single By Stella Dallas
日本人オーナーが営むブルックリンの人気ショップ。前のページに登場したモデカイもお気に入り。系列店の『Stella Dallas Living』ではヴィンテージファブリックやラグ、ブランケットなども扱う。○285 N 6th St., Brooklyn ☎718·486·9487 12:00~19:15 無休

古着を買う人

Miyako Bellizzi

ミヤコ・ベリッツィ|1988年、サンフランシスコ生まれ。コスチュームデザイナー、スタイリスト。広告や雑誌でのスタイリングの他、サフディ兄弟の『グッド・タイム』『アンカット・ダイヤモンド』、HBOで配信中の『シーンズ・フロム・ア・マリッジ』など映画やドラマの衣装も担当するNYの売れっ子スタイリスト。

今日は最近お気に入りのモノトーンに、赤を差し色にしたスタイル。靴以外はすべて古着ね。このあと広告撮影の現場に行くから、パンツは動きやすいメンズのトラウザーズ。TシャツはeBayで見つけたもので、コテコテの「New York」グラフィックがナイスでしょ。

 ハロー、日本のみんな。私はミヤコ。NYを拠点に、映画やドラマの衣装デザインやファッション撮影のスタイリングをしてる。特に古着が大好きで、ほぼ毎日全身古着がマイスタイル。ちなみにミスター・モデカイとも仲良しで、映画『グッド・タイム』では一緒に仕事もしたわ。そんな私が、今日はこの街の大好きな古着屋を紹介したいと思う。

長年通っているのもあって、この店にはお決まりのルートがあるの。真っ先に向かうのが奥のヴィンテージセクション。私にとって欠かせない定番アイテムのニット、Tシャツ、シャツ、パンツのラックにまずはザーッと目を通して、気になるものはひとまずピックアップ。

 実はコロナの影響でNYにあるヴィンテージショップは少なくなってるの。もともとこの街に並ぶ古着はある程度セレクトされてしまっているから、古着は〝掘る〟というよりは〝選ぶ〟感覚に近いかな。それでも’50 ~’60 年代のクラシックなものや、’90 年代のストリートウェアは他の都市に比べてたくさんあって、そこはNYらしさだと思う。

メンズのトラウザーズは欠かせない。

 私は映画やドラマの衣装のアイデアソースにも古着を使うから、週1回はブルックリンの『Urban Jungle』や『L Train Vintage』などのスリフトショップに行くし、スポーツやストリートウェアだったら’90 年代のカルチャーものを中心にセレクトする『Procell』、パンクでエキセントリックなアイテムなら『SEARCH & DESTROY』へ。『Procell』は〈アレキサンダー・ワン〉や〈ナイキ〉ともコラボしてたよね。最近友達がグリーンポイントに開いたLara Kolejiのように、デザイナーズブランドのヴィンテージを扱うお店も今のNYでは勢いがあるかな。

最近見つけたモーターサイクルジャケットは20ドルなり。

 そんななかでも、今日遊びにきた『10ft Single By Stella Dallas』はマイフェイバリット。ここは日本人がオーナーで、レギュラーからヴィンテージまで幅広く、いつも収穫があるから長年通ってる。自分のコレクションの中でも、特に気に入ってるものはここで見つけたものが多いの。

万里の長城グラフィックなんて最高。

 私の古着探しで大事な要素は生地。どの古着屋でも、まずは気になる生地やユニークなプリントものを探すの。その後はニットやカーディガン、シャツ、トラウザーズといった自分の定番に目を通す。自分の軸があれば迷わなくて済むでしょ。ちなみにこの冬はVネックのカシミヤのニットにボタンダウンシャツとトラウザーズみたいな、年配のビジネスマンスタイルが自分のムード。モノトーンで、シンプルにまとめたいかな。古着の楽しさって他の誰ともかぶらないスペシャルな一枚を探すこと、それに尽きると思う。

誰かみたいにならなくていい。それが古着の楽しさでしょ?

誰かになろうとするんじゃなくて、面白い、楽しいと思う自分だけの一枚を見つけられる。だって古着って自由なんだから。


これはもともとスタイリング用に買ったバイカージャケット。
試しに着たら少し肩が落ちるサイズ感が絶妙で、結局自分用にしちゃった。
このメッセンジャーバッグはスリフトで発掘。仕事柄カバンは毎日のように持ち歩くんだけど、これは軽くて重宝してる。
 ’80年代前半の〈NIKE〉のボウリングシューズは履き心地が抜群。去年からハマっているニュートラルカラーっていうのもGOOD。
大好きなニットポロは数えきれないほど持ってるの。なかでも心を掴まれた最近の2着がこれ。
ストライプのボタンダウンシャツも大好き。このシャツは色味がいいし、薄い生地だから夏にぴったり。冬でも差し色として使えて大活躍なの。

本日の収穫も上々ね。残念だけど私が買っちゃうから、みんなは買えないけど。

第2次世界大戦くらいの時代のパジャマパンツだと思うんだけど、
生地もプリントも美しい。はき心地も良さそう。
念だけど私が買っちゃうから、みんなは買えないけど。このTシャツは、コットン素材のアメフトシャツ的なパターンがユニーク。そこに乗っかる万里の長城のグラフィックはまさにオンリーワンね。
ニットポロには弱くて、見つけると買わずにはいられないの。
今日もはいてるけど、ストライプのトラウザーズは、動きやすさと上品さを兼ね備えたアイテム。撮影現場にもぴったり。
数えきれないほど古着を持ってるけど、このピンクのベストの色、生地、パターンの組み合わせは見たことない。すごくクール。