ファッション

2021年、古着屋がオープンラッシュ!【後編】

学芸大学の「MOOD」と、代々木八幡の「sinot」

2021年9月14日

photo: Hirokazu Kobayashi
text: Shintaro Kawabe
2021年10月号 894号初出

色味もギミックもベリーアメリカンな古着。

古着屋『MOOD』

 店舗を持たずにポップアップショップとして営業していた古着屋さん『MOOD』が、学芸大学駅のすぐ近くに店を構えたのは4月。でも、せっかくオープンしたばかりなのに基本、週末しか開いていない。というのも店主の櫻井恒平さんは平日は別の洋服屋さんで働いているから。「そっちは古き良きアメリカのカントリーウェアの雰囲気を大切にするお店です。その一方で、いい意味でいい加減な雰囲気のアメリカも好きで(笑)。自分のお店に並んでいるのは、そんな古着が多いかもしれません」

 買い付けているのは、主に’80 年代から’90 年代の〈エル・エル・ビーン〉や〈GAP〉などのレギュラー古着がメイン。しかし、どれもやけにカラフルだし、〈EASTPACK〉でも〈JANSPORT〉でもなく〈EASTSPORT〉と書かれたウエストポーチや襟と袖の生地が二枚重ねになっている〈フルーツオブザルーム〉のTシャツなど、一風変わったアイテムが多い。そして気づいたのだが、この店、プルオーバー率がやたらと高い。「確かに言われてみれば……。とりあえずかぶっちゃえばなんとかなるだろうという感じにアメリカを感じてしまうのかも」と櫻井さんのおおらかな人柄も店のセレクトによく表れているみたい。

インフォメーション

MOOD

内装は櫻井さんの友人で、古道具屋さんの『TOKYO DANCE.』を営む土居健さんが手伝っていることもあって、居心地も最高。開業に向けて買い集めてきた什器もポップなデザインが多い。
○東京都目黒区鷹番3-7-13 ☎なし 13:00〜21:00 火〜木休、月・金は不定休 Instagram: @moodnafurugi


ヴィンテージ品をモダンに提案するニューショップ。

 最近の古着の主流は’80 〜’90 年代のレギュラーもの。そんな中、’50 年代以前のヴィンテージをメインにしているのが、この『sinot』だ。この9月に代々木八幡に実店舗をオープンしたばかり。店主はヴィンテージショップに勤めていた経験を持つ木村謙太さんと家具屋でも働く野口尚史さん。中学校時代に知り合い、大学生のときに店を営むことを約束した27歳の同級生コンビだ。

「ヨーロッパの’30 年代から’50 年代にかけてのワーク、ミリタリー、スポーツウェアを主に買い付けています。僕も木村も古くてボロい服が好きなんです」と、野口さんが見せてくれたのはボロボロのワークジャケット。「これは恐らく、’40 年代のもの。当時の人たちは、服を直しながら大切に着続けていたことが顕著にわかる一着です。片方の袖口がちぎれてしまって補修したようですが、そこだけ違う生地を縫い付けていて。1か所だけ色味が異なっているのも今見るとかっこいいです」。野口さんの話を聞いていると、単なる傷や汚れだと思っていたところに、これまで着てきた人の歴史を感じるし、奇抜なデザインにも思えてくる。古い服には今では見ない作りや素材も多く、どの服もモードブランドのように見えてくるから不思議なもんだ。

インフォメーション

sinot

取材時は内装工事の真っ只中。全部自分たちで作っていた。そして、9月6日に無事オープン!洋服の他にも、フランスで買い付けた花瓶やマグカップなど、雑貨も並んでいて楽しい。
○東京都渋谷区元代々木町54-1 ☎03·5738·8853 12:00〜21:00 無休 Instagram: @sinot.clothing