ファッション

ヴィンテージじゃなくていい。毎日はく、ブラックジーンズ。

平野太呂さんのニュー&オールドストーリー。

2021年11月11日

僕らの古着ワンダーランド。


photo: Taro Hirano
text: Neo Iida
2021年12月 896号初出

NEW
〈パウエル・ペラルタ〉のアロハシャツ
スケボー由来のTシャツ

右/重ねた上の2枚は『スラッシャーマガジン』の兄弟マガジン、『スラップ』のオリジナルTシャツ。交流があった太呂さんは、2000年代に倉庫に連れていってもらい、好きなのをごっそりもらったそう。黒いTシャツは高校時代、下北沢の『バイオレントグラインド』で新品で購入。トミー・ゲレロが着ていたのと同じもの。英字の意味もわからず買ったが、のちに「人種差別反対」と書いてあると知った。左/スケートボードメーカー〈パウエル・ペラルタ〉製のアロハシャツ。太呂さんが好きだったスケーター、ランス・マウンテンの十八番の技が描かれているのが気に入って、高校時代に新品で購入。「捨てられないけど、派手な性格じゃないからあんまり着てないです」と太呂さん。

OLD
〈リーバイス〉のブラックジーンズ505

ヤフオクで買い揃えた古着。左ページで着ているのも合わせて全5本。必死で探しているわけじゃないけど、ウォッチリストに入れておいて時間ができたらチェックしているそう。同サイズ、同レングスだけど一本ずつはき心地が違うらしく、太呂さんの中ではスタメンが決まっている。

 平野太呂さんは、「高校時代に買った服は今も持っているし、最近は同じ型の古着のブラックジーンズをずっとはいていますよ」と言う。ご自宅を訪ねると、キッチンのカウンターに丁寧に折り畳まれた服の山ができていた。

「高校生の頃、スケートビデオを観てマーク・ゴンザレスやトミー・ゲレロが着てる服が欲しくなって。どこで売ってるんだろうとあちこち探して、スケボーショップでTシャツを買ったり、古着屋で似たようなスウェットを買ったりしていました。スケボー由来のものは、やっぱり捨てられないですね」

 Tシャツの胸のロゴは見事にスケボー一色。アロハシャツは別軸? と思いきや、よく見ればトリックをキメるスケーターが描かれていた。高校時代から好きなものがブレていないって、わりとすごいことな気がする。当時の服装を聞くと、「〈スラッシャー〉なんかのスケボーTシャツやパーカに、〈リーバイス〉の501。靴はその時々で履きたいスケボーシューズを選んでました」とのこと。脳内で再現してみたら、ほぼ今の太呂さんだった。

「好きなファッションが変わってないんですよね。メゾン系になったことも、カラス族になったこともない。服作りをする友達も多いのでデザインのある服も素敵だなと思うけど、僕自身はTシャツにジーンズ、みたいな服が好き。何が基準なんだろうと考えると難しいけど、着ていて落ち着くかどうかかなあ」

 早々に好きなものが固まった太呂さん。以前はブルージーンズ派だったけれど、約3年前から古着のブラックジーンズに鞍替えした。軸はそのまま、ブルーからブラックへ。

「うちはジーンズも普通に洗って乾燥機にかけるので、程よい色落ちの古着を買ってもすぐ薄くなってしまうんです。賞味期限が短いなあと思っていて、行き着いたのがブラックジーンズ。ブルーと違って色が落ちてもカッコ悪くならないし、仕事で毎日はいても控えめな感じがちょうどいい。ヤフオクで、インチとレングスが合うものを見つけたら買っています。今は5本をローテ中」

 そう言ってコーヒーを淹れてくれた今日の太呂さんも、やっぱりブラックジーンズだった。こだわりはあるけれど、あくまで普段着。ヴィンテージには食指が動かないという。

「『いいジーパンはいてるでしょ』っていう感じは、自分にはいらないかなと思ったんです。大人だから、お金さえ出せばいい服は買えるけど、ヴィンテージおじさんにだけはならないようにって常々思っていて(笑)。だって、古着なのにハレの日にしかはけないって本末転倒でしょ。僕が集めてるブラックジーンズはどれも3000円くらい。毎日はけて、気兼ねなく洗えるのがいいんです」

ちなみに靴だけは未だ定番が決まっていないそう。てっきり〈バンズ〉だと思っていたけど、〈バンズ〉の中でも色々あるんだとか。

「昔と今とで作りが違うんですよ。昔のはすごく丈夫で、ボロボロになっても水が入らないけど、最近はすぐ穴が開いちゃう。〈ニューバランス〉はフカフカ過ぎるし、滑りたいときにサッと動ける、それこそブラックジーンズみたいな靴があるといいんですけど」

 よい靴見つかりますように、と祈りながら平野邸を後にした。年代とか希少性みたいな、誰かが作った価値で服を選んでないところがカッコよかった。ガンガン着て、洗いまくってるところも。基準は自分の中にあるから、好きな服なら毎日だって着られる。その時間を刻みながら、どんな服も古着になっていくんだ。

プロフィール

平野太呂

ひらの・たろ|1973年、東京都生まれ。主な作品に写真集『POOL』(リトルモア)、インタビューと写真を手掛けた『ボクと先輩』(晶文社)、星野源との共著『ばらばら』(リトルモア)。水辺の同人誌『off the hook』発行人。