トリップ
あらためて遊歩大全 #11 / バックパッキング入門編
2021年10月30日
photo: Hiromichi Uchida
illustration: Hisashi Okawa, Naoki Shoji
edit: Kyosuke Nitta
2014年12月 812号初出
ムック本『僕たちはこんな本を読んできた』好評発売中!
ウルトラライト旋風の到来。

Hike light, Go simple.』
刊行:2011年2月25日
著者:土屋智哉
版元:山と溪谷社
認知度を高めていったバックパッキングだが、同時期に『地球の歩き方』をはじめとしたガイドブックや格安のパックツアーを販売する旅行業者が現れ、海外渡航が大衆化。これにより言葉の意味が“バックパック一つで外国を巡る貧乏旅行”という方向に脱線していった。だが、その一方で本筋である“自然回帰”の究極ともいえる概念が’92年に出現する。フリークライマーであり、ロケット工学博士でもあるレイ・ジャーディンによる著作『PCT ハイカー ハンドブック』。ここで発表された“ウルトラライト”という提案は、食料や水、燃料を除いたバックパックの総重量を8・5ポンド(約3・9㎏)にまで軽くするという革新的なものだった。
この運動にハマったのが、当時総合アウトドアショップでバイヤーをしていた土屋智哉さんである。彼はアメリカでの買い付けで目の当たりにしたこの新しい風潮を広めたいと一念発起し、三鷹にウルトラライトの専門店『ハイカーズデポ』をオープン。それから年に一度のペースでアメリカのロングトレイルを歩くようになり、その経験を加えて『ウルトラライトハイキング』を2011年に著した。
靴はローカットの軽量トレッキングシューズ。バックパックは40~50ℓの容量で1㎏以下。環境によっては雨除けのレインフライを工夫してフロアレスシェルターにアレンジし、長距離のハイキングでは現地で食料を調達するなど、軽量化のヒントを詰め込んだ。それまで、歩行で得られる喜びよりも重装備がもたらす疲労感のほうが上回っていたが、不要なものを持たないというシンプルな思想によって体への負担を軽減。『遊歩大全』『入門』『教書』の3冊が訴えてきた“できる限り軽く”という考え方を、現代版にアップデートした。
Basic Equipment

現代的なハイカーが多いアパラチアントレイルを歩くスタイルを代表してピックアップ。ヒゲがないのは数日おきに街に下りて食料を買い込み、リフレッシュをするために風呂に入って散髪をするから。背負うのもタフで雨に強い800g以下のバックパック。ストーブもアルコール仕様になり、シェルターとスリーピングバッグを足しても約2㎏と軽い。休憩時はサンダルに履き替え、お腹が減ったら、脂肪とタンパク質が豊富なピーナッツバターをそのままペロリ。

Windrider 2400

Ex Stove

Twin Sisters

Mountaineering
Versalite 6

Mono

PeanutButter
著者・土屋智哉さんに聞く、制作のきっかけ、ウラ話、伝えたかったこと。
「“ウルトラライト”というフレーズを初めて聞いたのは、2001年ですね。総合アウトドアショップ『OD BOX』のバイヤーになって、買い付けでアメリカの総合展示会に行った際、〈ゴーライト〉のブースでこの大きな動きを目の当たりにしました。提唱したのは、’70年代にヨセミテの岩壁に挑んでいた伝説のクライマー、レイ・ジャーディンで、彼は’80年代後半からミニマムなスタイルで次々とアメリカの代表的なロングトレイルを踏破し、PCTをはじめとした長距離歩行の体験記録をもとに荷の簡略化を提唱。その後ライトウェイトの方法論をまとめた『Beyond Backpacking』で、ウルトラライト思想が確立されたとされています。山を歩いて自然と一体化するのが目的だったバックパッキングが、道具と一緒に伝わることで生活道具を詰め込んで歩くことになり、いつからか海外への極貧旅行という意味に変容。その2度にわたる曲解が、軽量化によって元の“自然との一体化”に戻ると知って、衝撃的でしたね。本を出すにあたって“ハイキング”にこだわった理由は、国や人種によって意味合いが変わらない世界共通言語だからです。簡単に言うと遠足と同じこと。弁当と水筒を持って、Tシャツとスニーカーで、裏山にハイキングに行こうと言えば誰でもわかる。米国の本場のロングトレイルでも遠足と変わらず、歩き続けるのではなく数日おきに街から街を移動する感じ。疲れたら街で休めばいい。これは、芦沢さんや田渕さんが“バックパッキング”という言葉で伝えてきた歩行の文化を原点に戻す考え方であり、未来に繋がるカルチャーとして伝えていきたいですね」
プロフィール
土屋智哉
つちや・ともよし|1971年、埼玉県生まれ。慶応大学で考古学を学んだ後、アウトドアの専門店に入社。そこで知ったウルトラライトに感化され、三鷹に『ハイカーズデポ』をオープン。日々軽量化の可能性を模索している。
ピックアップ

PROMOTION
僕とアイツの無印良品物語。
2025年3月11日

PROMOTION
きみも福祉の仕事をしてみない?/介護福祉士・永田麻耶さん
2025年3月24日

PROMOTION
きみも福祉の仕事をしてみない?/訪問介護ヘルパー・五十嵐崚真さん
2025年3月24日

PROMOTION
L.L.Beanの春の装い。
L.L.Bean
2025年3月7日

PROMOTION
屋外でもアイロン、キャンプでも映画。
N-VAN e: を相棒に、オンもオフも充実!
2025年3月7日

PROMOTION
“濡れない、蒸れない”〈コロンビア〉の新作スニーカーで春夏のゲリラ豪雨を乗り切る。
2025年3月7日

PROMOTION
“チェキ”instax mini Evo™と僕らの週末。
FUJIFILM
2025年3月4日

PROMOTION
堀米雄斗が語る、レッドブルとの未来予想図。
Red Bull
2025年3月17日

PROMOTION
足取りを軽くさせるのは、春の風と〈クラークス〉の『ポールデンモック』。
2025年3月3日

PROMOTION
きみも福祉の仕事をしてみない?/社会福祉士・高橋由茄さん
2025年3月24日

PROMOTION
謎多き〈NONFICTION〉の物語。
2025年3月28日

PROMOTION
この春、欲しいもの、したいこと。
Rakuten Mobile
2025年3月7日

PROMOTION
〈adidas Originals〉とミュージシャンの肖像。
ASOUND
2025年3月19日

PROMOTION
Gramicci Spring & Summer ’25 collection
GRAMICCI
2025年3月11日

PROMOTION
春から連れ添う〈イル ビゾンテ〉。
IL BISONTE
2025年3月3日

PROMOTION
〈バウルズ〉というブランドを知りたい。
vowels
2025年3月15日

PROMOTION
いいじゃん、〈ジェームス・グロース〉のロンジャン。
2025年2月18日

PROMOTION
〈Yen Town Market 〉がFCバルセロナの新コレクションを展開! 街というフィールドを縦横無尽に駆け抜けよう。
2025年3月21日

PROMOTION
夏待つ準備を。
Panasonic
2025年3月11日

PROMOTION
フレンチシックでカルチャー香る〈アニエスベー〉で街へ。
agnès b.
2025年3月11日

PROMOTION
きみも福祉の仕事をしてみない?/保育士・佐々木紀香さん
2025年3月24日

PROMOTION
〈OLD JOE〉がソール・スタインバーグとコラボレーションするんだって。
OLD JOE × SAUL STEINBERG
2025年3月7日