LIFESTYLE

Go with the 風呂〜 Vol.10/韓国伝統サウナ スッカマ【後編】

写真・文/大智由実子

2021.10.25(Mon)

photo & text: Yumiko Ohchi
background artwork: Fujimura Family
edit: Yu Kokubu

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しばらくして、さらに山奥の別のスッカマに到着した。車を降りておじさん達はそこの受付のおばさんに事情を説明してくれた。スッカマラブの可哀想な日本人の面倒を見るバトンはおじさん達からおばさんへと渡された。優しそうなおばさんは笑顔で私を迎え入れてくれた。車で連れてきてくれたおじさん達に何度もお礼を言い「カマゴルがリニューアルオープンしたら絶対にまた来るからね!」と再会を約束してお別れした。

こちらがそのスッカマ。後で調べたら「黄土チャムスッカマ」という店名らしい。

おばさんに案内され、受付で料金を支払い館内着とタオルを受け取る。ジェスチャーで「ロッカーはこっちでシャワーはあそこ。スッカマはこっちから行けるよ」的な案内をしてもらっている時、ひとりの若い女性のお客さんが入ってきた。その女性は常連さんらしく、おばさんに挨拶をして話をしていた。するとなんと、その女性が私を見て「日本から来たんですか?」と日本語で話かけてきたのだ!日本人どころか外国人観光客ゼロの韓国の山奥のスッカマでまさかの日本人と遭遇??と思いきや、その女性は韓国人で、なにやら以前数年間東京に住んでいたんだとか。なんたる幸運…スッカマの女神降臨。

気がかりだったソウル市内へどうやって戻れるのかを聞いてみると、一応バスが通っていてそれに乗って市内まで行けるとのことで、とりあえず一安心。しかしバスの時刻表を見てみると、その時すでに夜7時を過ぎていて、最終バスまであまり時間はなかった。

「せっかく来たのに時間足りないな〜」と、時計を見て焦っていたら、なんと受付のおばさんが「私が仕事上がって帰る時、一緒に車で市内まで送ってあげようか?」とのありがたいご提案。またもや女神降臨!なんなの?スッカマって神々や天使が集まる神殿なの??

おばさんに「カムサハムニダ!」と伝え、女神にスッカマを案内してもらった。読めなかった高温・中温・低温の札も教えてもらった。もう何も怖いものはない。

若干場末のゲットー感が漂うが中は気持ちいい夜のスッカマ

すっかり辺りが暗くなった山奥のスッカマで、国籍を超えた人々の優しさに触れ、私はえも言われぬ怒涛の安心感に浸っていた。スッカマの中もまるで母の温かい胎内にいるかのような優しさと居心地の良さで、カマゴルのおじさん達と受付のおばさん(全員中身はきっと天使)、そして日本語を話せる女神、と奇跡のような出会いに感謝の涙がこみあげてきた。

しかも、その時は折しも日韓貿易紛争の真っ只中で政治面において日韓関係はバッチバチの最悪になっていて不買運動なんかも起こっている最中だったのだ。「韓国にサウナ入りに行ってくる」なんて呑気なことを言う私を「今は危ないからやめなよ」と止める人もいるくらいの時期だったにも関わらず、私が出会った韓国の人たちはみんな信じられないほど優しかった。

スッカマを出て外の空気を吸いに行き、BBQコーナーで焼肉を楽しむ人々を尻目に森の中で空を見上げると、暗闇の中からまん丸のお月様が微笑みかけてきた。その日は満月だった。私の心もすっかり満たされ、火照った顔でにんまり月を眺めていたら、遠くから「ニホンジ〜ン!」と呼ぶ声が。どうやらおばさんが仕事を終えてこれから帰るところで、私を探しているようだ。そういえば、まだ名前を言ってなかったな、と思いつつ「は〜い!」と返事をして急いで服に着替えておばさんの車に乗り込んだ。

クパバルという駅まで送ってもらう道中の車内では、言葉の壁がありながらもどうにかコミュニケーションを図りたい一心で、知っている限りの韓国語(主に韓国料理の名前)を並べて必死に韓国への愛と感謝の意を伝えた。お互いもどかしさを感じながらも好意は伝わったのか、駅についてお別れする時は「カムサハムニダ!」を連呼しながらハグをして別れた。

私はその日出会った人たちから、政治情勢とか、国籍だとか、言葉の壁だとか、そんなの全部ぶっ飛ばしたところにある、もっと根源的な、人間と人間の心の触れ合いや損得勘定を超えた相手を思いやる気持ちを教えてもらった。

ここまでが、私の人生初体験スッカマ・ドタバタ珍道中のお話。

そしてその2ヶ月後の2019年11月、リニューアルオープンしたカマゴルランドを目指して再び韓国へと飛んだ。そこでついに念願のカマゴルランドを体験できたわけなんだけど、ぶっちゃけ良過ぎてその2ヶ月後にもまた行った。もう中毒っつーか、ほとんどビョーキで結局のところ新型ウィルスにストップかけられるまで行きまくった。

ここにそのリニューアルオープンしたカマゴルランドの様子をお見せしますね。

大人気のカマゴルランド。
この縁台でくつろぐ。レジャーシートで縄張りアピールしとかないと荷物とか勝手にどかされる。
炭窯に木材を詰めているところ。パズルみたいにミッチミチに詰め込んでいた。
木材を詰め込んだらレンガで閉じて火を入れる。
数日経って木材が炭になったら窯が開けられる。この段階ではまだ灼熱で数メートル離れていてもかなり熱い。しかしこの窯場の周りの熱を求めてみんな腰掛ける人気スポット。
リニューアルしたピッカピカの食堂
食堂ではスッカマ上がりの身体に染み渡る美味しい韓国料理が頂ける。

残念ながらパンデミックが始まって渡航が制限されてからは韓国に行けておらず、カマゴルランド始めスッカマの現在の営業状況はわかっていない。(たぶんネットで調べればわかるのかもしれないけど、韓国語読めないのでスミマセン)

いつか近い未来、また気軽に韓国へ行けるようになった際にはぜひスッカマに行ってみて欲しいな。てか、私が行きたいんで、マジで頼むから早くこの状況よ、変わってくれーーーー(祈)

執筆者プロフィール

大智由実子

2012年よりMARGINAL PRESS名義で洋書のディストリビューションを行ってきたが2017年に活動休止し、世界中の様々なサウナを旅する。サウナライターとして花椿webにて『世界サウナ紀行』を執筆する他、サウナ施設の広報も務めるなど、サウナまみれの日々を送る。のちにサウナのみならず銭湯や温泉などお風呂カルチャー全般に視点が広がり、個性強めなお風呂を探究して現在に至る。そしてついに4年の沈黙を破りMARGINAL PRESSとしての活動を再開。一発目は本連載にてアートディレクションを手掛けるFujimura Familyの写真集『PROOF OF LIVING』を出版する。

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