ファッション

ルシアン・スミスの活動から目が離せない。

2021年9月19日

photo: Koki Sato
coordination: Shimpei Nakagawa
text: Koji Toyoda
2021年10月 894号初出

ルシアン・スミス

 NYアートシーンの〝若き仙人〟、ルシアン・スミスがかっこいい。25歳のときに描いた油絵が39万ドルで落札。一気にスターダムを駆け上がると思いきや、その片道切符をゴミ箱にかなぐり捨てて、モントークに引っ込んでしまった。欲や権力、しがらみとは無縁のこの郊外で、サーフィンしたり、たまに絵を描いたり。次世代のアーティストをサポートするプラットフォーム「STP」の運営のことを考えたり。超健康的な生活の中で、アートを制作することの本当の意味を探っている。その一方で別のプロジェクトも進行中だとか。


Q. Vivien Ramsayのことを教えて。

ルシアン・スミスの母のブランド

「これは母が2016年に立ち上げたブランド。彼女は長年ファッションに携わってきた人物で、業界におけるサステイナブルのあり方を常に探っている。オーガニック&リサイクルコットンを使ったTシャツとボクサーブリーフ、靴下だけの展開なんだ。パッケージは食品保存用パッケージを参考にしたもので、生分解性プラスチックだから地球にも優しい。母に頼まれて、僕がデザインしたものだ」。3Pボクサーブリーフ¥9,350、3Pボーイブリーフ¥9,350、3Pソックス¥8,800(すべてエス)

Q. STPのマーチャンのテーマは?

〈エス〉キャップ

「これまでに『クリスピー・クリーム・ドーナツ』や『NPR』のロゴをサンプリングしてきたし、このトートやハットにプリントしたスマイリーロゴは、デンマークの反核運動のロゴから拝借したものだ。つまり商業的なものに対する、僕なりのパンクロック的行為。でも、グッズが先行するのは活動の障害になるから、近々“イズム”を継承した〈サービング〉という別ブランドを立ち上げるよ」。キャップ各¥8,800、パーカ¥19,800、Tシャツ¥9,900、トート¥7,700(すべてエス☎03·6459·2105)

Q. WOOLRICHと何かを作っているの?

「幸運なことに2022年にカプセルコレクションを作るんだよ。コンセプトは“〈ウールリッチ〉を『STP』が研究する”というもの。僕たちが彼らの過去のアーカイブの中から10〜15型選んで、洋服を再構築していくわけさ。写真のカラフルなハットは、その“前夜祭”みたいなものだ。僕の大好きなイタリア在住の帽子デザイナー、アリス・ナヴァリンに、〈ウールリッチ〉の端材を渡して作ってもらった7点だけのハンドメイド品なんだよ」


「ファッションを手掛けることは、アート制作に近いんだ。ペインティングだったらキャンバスなど材料、服だったら生地を準備して、プロジェクトごとに最適な人材を集めるという感じだね。最初は僕がデザインしたグラフィックをありものボディに載せる作業だったけれど、アンダーウェアのブランド〈ヴィヴィアン ラムゼー〉では、パターン作りについても関わっているよ。洋服が出来上がるまでのプロセスを学んだおかげで、〈ウールリッチ〉とコラボレーションピースを作らせてもらえることになったんだ。アルパカベストやバッファローチェックを裏地にあしらったパーカなど、どれも遊び心のあるラインナップになっている。世界中の人が着ることを想像しただけでワクワクしちゃうよ」

 と、早くも心持ちはファッションデザイナー。洋服という武器を手に入れた芸術家が、ファッションという大海をどうサバイブするのか。僕らは彼の洋服を着ながら見届けたい。だって、その辺のデザイナーズなんかより抜群にお洒落でしょ?

プロフィール

Lucien Smith

1989年、LA生まれ。クーパーユニオン美術大学を卒業後、現代美術家のダン・コーレンに師事。有名無名問わず、アーティストが作品を発表できる場としてデジタルアートプラットフォーム「STP」(SERVING THE PEOPLE)を2015年スタート。ブログにポッドキャスト、オンライン/オフラインの展覧会を仲間と運営している。