FASHION

マルタン・マルジェラが自身の服作りを語った映画が公開。

2021.09.17(Fri)

photo: Kazuharu Igarashi
text: Ku Ishikawa
2021年10月 894号初出

「シルエットで大事にしたのは肩と靴だ」。日本の作業員を見て思いついたタビブーツなど。

 ついに、である。2008年の〈メゾン マルタン マルジェラ〉の20周年を記念するショーを最後に、突然ファッションの世界から姿を消したマルタン・マルジェラ。彼に密着したドキュメンタリーが公開される。顔こそ出ないものの、過去の資料を開く様子を撮るカメラには傷跡のある手がしっかりと映り、本人の肉声が当時を振り返る。「私の服を好きな人が、必ずしも私の趣味と合うかどうかは別」など本音をぶっちゃけているのを聞いて驚きながら、劇中では少ししか語られることのなかった彼の現在とこれからについて、この映画を監督したライナー・ホルツェマーさんに聞いてみた。

「現在は一人でパリのアトリエにこもり、ドローイングやコラージュ、彫刻作品を作ることに夢中になっています。それらの作品は今年の10月にパリの『ギャラリー ラファイエット』で展示を行うことが決まっています。彼の身なりについて言えることは、デザイナー時代にはキャップをかぶることで有名でしたが、メゾンを去ったときに本当に突然去ったのでアトリエに置いてきたそうで、それ以来キャップをかぶっていないということですね。ファッション業界に戻るかどうか? ブランドを立ち上げることはないと断言できます。今の生活で、自分で時間をコントロールできることに喜びを覚えているからです。『ファッション業界のカレンダーによって、時間が決められていたことに非常にストレスを感じていたから、引退したときはすごくホッとした』と話していましたからね。ただ、このことについてマルタンと話したわけではありませんが、いくつかの服だけデザインしてほしいと依頼したら、OKを出すかもしれません」

プロフィール

ライナー・ホルツェマー 映画監督

1958年、ドイツ生まれ。監督作品に『ドリス・ヴァン・ノッテン ファブリックと花を愛する男』(2016)、『マグナム・フォト 世界を変える写真家たち』(1999)が。

インフォメーション

『マルジェラが語る“マルタン・マルジェラ”』

約200時間ものマルタン・マルジェラへの取材映像を中心に、過去のコレクション映像や、マルタンが大学卒業後に働いていたジャン=ポール・ゴルチエ、元マルジェラモデルであり現在は映画監督のサンドリーヌ・デュマなど、マルタンと親交が深い著名人へのインタビューで構成。マルタンの容姿で見えるのは手だけだが、その理由について、監督のライナー・ホルツェマーは「長年手を使って仕事をしているから、動きがとても美しいんです。同じ動きを何千回と繰り返してきたのだろうな、と想像できます」と語る。9月17日より全国順次公開。
配給: アップリンク
©2019 Reiner Holzemer Film ‒ RTBF ‒ Aminata Productions
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