カルチャー
【#3】受講内容、そして悩んでいたこと。
2021年8月29日
text: Maya-Aska
どうも、眞弥飛鳥です。
前回話したファンデーション・コースでは映像ベースの作品が私のポートフォリオの大多数を占めていましたが、大学一年生になってからはより多様な作品制作をしています。
グラフィック・コミュニケーション・デザイン・コースの第一部は導入過程で、人々を繋ぎ合わせる空間を設けることが目的でした。いかにして共通点の無い者達の架け橋となり、誰もを疎外しない包括的なコミュニティ築き上げることが最大の要件でした。グラフィック・コミュニケーション・デザインの「コミュニケーション」部分に焦点を当て、物理的な制作より理論的な問題解決を求める課題でした。
二学期は五つの専攻分野に分かれており、それぞれが独特の工程と技術を有する物でした。 私は以下のような順番で受講しました。
– Image (映像) : 写真撮影と編集テクニックを問われます
– Creative Computing (デザイン演算) : コーディングを用い、デザインを構築します
– Reading & Writing (読みと書き) : 文章の内容と表現の形態を探索する授業です
– Time-Based Thinking (時間を基にした思考) : 洒落た言葉を使っていますが、動画、つまりストップモーション、アニメーション、映画等の扱いについて
– Type (タイポグラフィ) : 文字の書体、配列、風貌についての技芸です
多様性に富んだカリキュラムになっており、理工学的な要素も取り入れた授業もあります。学生の作品も多種多様で、一人は編み物をしたり、もう一人は音楽を作曲していました。
Oera バッジ
これはCreative Computingでデザインしたピンバッジです。空想の技術を運用し、アクセサリーを形作れとのお題でした。私は肺の癌細胞をいち早く認知出来る作品を考え、適用しました。
Regeneratio
Regeneratioは転生と再生についての短編映画です。とんぼのライフサイクルとイエス・キリストの一生を平行させた映像です。リンクはこちら https://www.youtube.com/watch?v=5AJIJVgr6hQ
話は変わりますが、私はこの大学一年目、デザイナー/アーティストという職業について大分悩みました。シンガポールの Straits Times の調査によるとシンガポールでは1000人中、71%がアーティストはコロナ禍で一番不要な職業だと述べています1。医者やNGOで働いている者達とは社会への貢献度が違います。アート・デザインは社会での居場所、価値に意味があるのでしょうか?芸大に通っているのは勝手な自己満足でしか無いのでしょうか?質問が頭の中で積み上がり、自身のアイデンティティに疑問を抱きました。そんな靄の中を照らし出した一筋の光が英国のThe Guardian の一記事でした2。
ロンドンにあるウェルカム・コレクション (Wellcome Collection) の『グラフィック・デザインはあなたの命を救えるのか?』と言う展示会の批評です。グラフィック・デザインと健康の関係性を探り、展示のスタートを切るテーマは煙草です。一方では商業主義に徹した煙草の煌びやかな宣伝があり、反対側には製品デザインがどの様に消費者の数を減らしたのかが語られています。煙草のパッケージを「一番嫌な色」、人呼んで Pantone 448C で包み、表と裏にはグロテスクな黒ずんだ歯、タールに犯された肺の写真等を貼っています。オーストラリア国内の調査ではそのパッケージが導入されてから三年で10万人煙草の利用者が減ったとされています。なお、このデザインは他の国にも持ち込まれ効果があったそうです。
デザインが小さな歩幅であっても確実な一歩で人々を助け、社会を向上しようと努力しています。私自身芸術に支えられた事を忘れていました。深い共感を呼び覚ます音楽、セラピストの役割を果たす絵画、不平等を訴えるポスター。私はアートはミクロの規模で生活に潤いをもたらし、精神的な傷を癒し、マクロのレベルでは変化、革命を起こす物だと解釈しています。
皆さんはどう思いますか?
そして芸術に助けられた事はありますか?
1 Tai J. 2020, 8 in 10 Singaporeans willing to pay more for essential services: Survey, Straits Times, viewed 24 August 2021 <https://www.straitstimes.com/singapore/manpower/8-in-10-singaporeans-willing-to-pay-more-for-essential-services>
2 Wainwright O. 2017, Can Graphic Design Save Your Life? review – thrills, pills and big pharma, The Guardian, viewed 25 August 2021 <https://www.theguardian.com/artanddesign/2017/sep/07/can-graphic-design-save-your-life-review-wellcome-collection-london>
プロフィール
眞弥飛鳥
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