ファッション
古着のABC。- Vol.1 –
[A] About A to Z./古着の思い出、景色、本企画のこと。
2021年3月9日
古着の景色を見ていると、
思い出すことがある。
初めて古着店に行ったのは10年前。僕はその時、埼玉の片田舎の学校に通う中学生だった。特に洋服に興味があるタイプではなかった。両親は洋服好きだったけれど、古着を着るタイプではなかった。当時の僕は服より海外サッカーに興味があり、読んでいた雑誌といえば『Number』『footballista』などで、いつも夜更かししてリーグ戦を観ていた。海外サッカーの移籍市場をいち早くキャッチする手段としてツイッターを日課的に見ていたある日、タイムラインに『下北沢の古着屋ベスト10選』的な記事が流れてきた。いったんテキトーに読み流したのだが、翌日から、僕に異変が起きた。授業中も、部活中も、大好きなサッカーの試合を観ている時でさえも、なぜか”下北沢”というワードが頭から離れなかったのだ。
僕は休日、初めて下北沢に足を運んだ。一人旅のような気分だった。たくさんの洋服店が立ち並ぶ下北沢で、古着屋かどうかも分からぬまま片っ端から服屋に入店した。一人で都内へ買い物に行くこと自体が初めてだったので、孤独感に襲われたのを覚えている。古着屋特有の匂いは意外と好きだったけど、店主と常連客の会話から漂う内輪感的な雰囲気に尻込みしたし、やばいヤサに入ってしまったかのような独特の空気感にもやられた。日も暮れ、「ここに寄ったらもう帰ろう」と決めて最後に入店したのが、下北沢の中でも歴史のある『HAIGHT&ASHBURY』というお店だった。何回かお昼のテレビで見たことあった気がした。そのお店で<リーバイス>のボアジャケットを買った。(当時はわからなかったけど)1990年代後半の、ブルーが少し色落ちした8000円くらいのボアジャン。ここは店員さんが気さくで、初めて目を見て接客を受けることができた。ジャケットが欲しかったわけじゃないし、似合ってるかもわからなかったけど、孤独感と虚無感の埋め合わせに勧められるがままに買ったのだ。これが僕にとっての、初めての古着体験。
申し遅れましたが、筆者である「僕」の名前は佐久間駿、24歳。あの時店員さんにビビっていた僕は、今スタイリストになっている。優しかったヘイトの店員さんや、なかなか格好いい’90sのボアジャンのおかげで服が好きになり、ボアジャン以降はとにかく古着屋に通いまくって、古着屋のブログを毎日散策(当時はインスタグラムがそんなに普及してない)して、本屋では『古着特集』的な雑誌を探して情報を吸収する日々を送った。とにかく古着に夢中になっていった。
僕にとって『古着』は特別な存在です。服が好きになった原点だし、スタイルを探求する糸口だし、今の職業へ導いてくれたジャンル。そして、ただただ夢中になれる最高の趣味でもある。
今日から古着の連載が始まる。連載名は『古着のABC。』で、古着のあれこれをBC仕立てで紹介していくシンプルな企画です。辞書のようにタメになる読み物もあれば、くだらなすぎる小さなミニコラムもあれば、もちろんスタイリング企画もあって、服だけじゃなく古着屋で買えるインテリアなんかも登場する。たくさんの識者の方々の力をお借りして、みんなが楽しめる古着の記事を作っていきたいと思っています。
最後に、この記事に写真を提供してくださったのは、昨年オープンしたばかりの下北沢『mu』さんと、目黒『demo_ore』さんの2店。どちらもオーナーさんが買い付け時に撮影したもの。これを読んでいただいてるみなさんは妄想したことがあるのかな? 僕らが今着ている古着はどこからやってきたんだろう? とか、どこの国のどんな人が着てたんだろう? とか、なぜそれを手放し、今ここにあるんだろう? とか。一見古着とあまり関係ないこの景色にも、”古着の醍醐味”がたくさん詰まっています。この写真群をピンチアウトしながらそんな妄想をしてみるのも、古着の楽しみ方の1つだと僕は思う。
以上、長々とお読みいただきありがとうございました!この連載で「Z」が訪れる頃には、僕もちょっとは古着ツウになれてるのかな、なんて今は夢見てる。
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次回、4月下旬配信予定〜
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