カルチャー

【#4】ドーナツなんかいらないよ

2021年9月1日

ときどきわけもなくやってくる小さな衝動。
どぎつい、濃厚な中華料理やラーメンが食べたくなる感じに似ていて、この本を手に取る。つまり、刺激を欲してるのだ(たぶん)。

最後に紹介する本はこちら。

「ドーナツなんかいらないよ」(国書刊行会)

最初にこの本に出会った衝撃は忘れられない。凡庸なタイトルに騙された。まさか”おかしな”作品だとは思いもよらず、のっけから作者に一本取られた。ちなみにこの本を読んでも、ドーナツが食べたい!とはならなかった笑。この本の凄さは他にある気がする。というより、この本、ドーナツなんてどーでもいいのだ、おそらくストーリーなんてどーでもいいのだ。

なにせ作者の絵が凄まじい。表紙から裏表紙までくどい、くどすぎるほど綿密なモノクロの絵を、ぼんやり眺めるだけで満足に浸れる。でも眺めているうちに不思議となんだか落ち着く、クスッと笑えてしまう。
作者のほうもストーリーなんてどーでもいいのだ!いーからこの混沌を味わえ!(そんな傲慢ではないと思うが)とニヤリとして描いてるんじゃないか?と思ってしまうくらい、絵がものすごい。

とにかくおかしいのだ。隅々までおかしい。おかしいがたくさん潜んでる。狂気を味わいたい方は是非、おすすめだ。

プロフィール

長田真作

ながた・しんさく|1989年、広島県生まれ。絵本作家。2016年に『あおいカエル』(文・石井裕也/リトル・モア)でデビューし、現在までに30冊以上の作品を手掛けてきた。去年8月、『ほんとうの星』と『そらごとの月』を2冊同時刊行し、話題を集めた。