TOWN TALK / 1か月限定の週1寄稿コラム

【#1】ガスボンメタボリズムの衝撃

執筆:久保寛子

2026年10月14日

山梨にやばい場所がある、友人たちから何度か聞かされるうちに、この場所への興味が高まっていった。
GASBON METABOLISMは、ガスアズインターフェイス株式会社が、カメラの三脚メーカー「VELBON」の工場跡地を利用して2022年より始めたカルチャー複合施設だ。
1000平米を超える敷地内には、ギャラリーやカフェ、ビール醸造場や飲食店などが存在する。
12月の凍てつく寒さの中、休館日にも関わらず、スタッフの揚妻さんが快く敷地内を案内してくれた。
ガスボンを一見してまず思い出したのは、自身が大学院時代に留学していたテキサス州、ダラスのアートシーンだった。
ホワイトキューブに限られない多様なアート空間、そこで毎週のように行われるパーティー、規格外サイズのアート作品。
ダラスで見た景色や匂いが山梨県北杜市で蘇った。

そしてもう一つ個人的な感想として。
私は2017~2023年の間、広島市で夫の水野俊紀と共に「オルタナティブスペース コア」というスペースを運営していた(現在は友人が運営を引き継ぐ形で続いている)。
始めた当初は現代アート中心のスペースとして始めたが、続ける中で様々なジャンルの面白い人たちと出会い、スペースは思いもよらぬ方向に進化していった。
コアで知り合った友人企画の音楽イベント「基町ブロックパーティー」は今も定期的に開催される広島の名物パーティーだ。

ある空間を公共に開く。そこに人が集まり、人が人を呼ぶ。
人々の属性やキャラクターが場の空気を形作っていく。
空間は所有者の意図を超えて生き物のように動き始める。
それは自分にとって制御不能で困難なことであると同時に、とてつもなくスリリングで興味深い体験となった。

ガスボンメタボリズムの名前に掲げられた「メタボリズム」は「新陳代謝」を意味する。
大きな生命体を構成する細胞のひとつひとつのように、ガスボンにいるモノやヒトたちはみな個性的で美しく、生き生きと輝いている。それはその空間を始めた西野さんが、有機的に育てていく、場作りの醍醐味を深く心得ているからに間違いない!と私は思った。

その後、ガスボンにて個展《赤土》&スペシャルパーティーを開催させていただいたのだが、そのことについてはまた改めて書きます。

プロフィール

久保寛子

くぼ・ひろこ|1987年、広島県生まれ。テキサスクリスチャン大学美術修士課程修了。現在は千葉県旭市を拠点とし、先史芸術や民族・民俗芸術、文化人類学などにまつわる学説のリサーチをベースに、ワイヤーメッシュや農業用シート、防風ネットなどの工業製品を用いて彫刻作品を制作する。自然の脅威や遺物の破壊と再生、周縁化されてきた女性の表象などをテーマに、神話や祈りがかたちをなす偶像や、人々の暮らしの中から生まれた実用品に宿る美について、作品を通じて現代的な視点から再考を促す。Casa Wabiレジデンスアーティスト(2025年)、広島文化新人賞(2022年)、六甲ミーツ・アート公募大賞(2017年)受賞。KAMU KANAZAWA(石川)、おおさか創造千島財団(大阪)、株式会社 IZAK(富山)などに大型作品が収蔵されている。2017年より広島で『オルタナティブスペース コア』を運営している。

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