TOWN TALK / 1か月限定の週1寄稿コラム

【#2】動きのあるオブジェ

執筆:ニコラ・ユタナン・シャルモ

2026年2月20日

Scan from the book Mzuri published in 2026 by Coolnvintage.

Scan from the book Mzuri published in 2026 by Coolnvintage.

第2回のコラムでは、見た目の美しさだけでなく、その機能や宿すイメージにも魅了されているオブジェについて書きたいと思います。ギャラリーに展示している作品と同じように、敬意と愛情をもって接している存在です。そのひとつは台座に置かれてはいませんが、私の人生においては同じくらい特別な位置を占めています。それはランドローバー・ディフェンダーです。

現在、私は110ステーションワゴンと90シングルキャブ・ピックアップの2台を所有しています。どちらもケズウィック・グリーンとタマー・ブルーというオリジナルカラーのまま大切に残されています。私が集める多くのオブジェと同じように、その価値は「そこにある」という存在感だけでなく、刻まれてきた歴史にも宿っています。

私はこの6年間、日常的に運転をしてきました。実は運転を覚えたのは日本に来てからで、それ以前はフランスでも他の国でも運転したことがありませんでした。きっかけは息子の誕生です。家族を好きな場所へ連れていける自由や機動力が必要だと思うようになりました。同時に、写真家としての仕事では重い機材を運べる車も必要でした。

最初の車に迷いはありませんでした。ディフェンダーは長いあいだ、映画やドキュメンタリー、ラリーの映像、そしてあの独特なシルエットを通して、私の想像の中に存在していたのです。6年前に探し始めたとき、理想の一台を見つけるのは簡単ではありませんでした。最終的にイギリスから輸入することになりましたが、右ハンドル仕様は日本にぴったりでした。東京のガレージの協力を得てコンテナで到着し、数か月後には公道を走れる状態になりました。

もちろん、所有には予想外の出来事や時折の故障もつきものです。しかし、その予測不能さもまた魅力の一部になっていきました。ディフェンダーの構造はシンプルでアナログ。直感的に理解できる作りです。時間が経つにつれ、不具合の原因がどこにあるのかがわかるようになり、ときには自分で修理もできるようになります。そうして関係は「所有」から「伴走」へとゆっくり変化していくのです。

この車を持つことは、国境のないコミュニティの一員になることでもあります。
これまでに伝説的なレースを走ったドライバーや特別な車を所有するコレクターたちと出会う機会にも恵まれました。
そしてこの旅は、まだ始まったばかりのように感じています。

運転そのものも特別な体験です。窓を開けて日本の田園風景の中を走ると、道路や環境とつながっている感覚があります。現代の車ではなかなか得られない体験です。快適さが優先されるあまり、運転していてもどこか同乗者のように感じてしまうことさえあるからです。
ディフェンダーは、運転が身体的な行為なのだと思い出させてくれます。主体的な参加を求められるのです。

やがて1台では足りなくなり、より小型で軽量な90ピックアップを加えました。
東京の狭い道や限られた駐車スペースにもぴったりです。

もし結論があるとすればとてもシンプルです。可能ならクラシックカーに乗ること。
かつて夢見た車を手に入れること。
本当に大切にするオブジェは、思いがけないほど多くのものを返してくれるのです。
人生は一度きりなのですから。

プロフィール

ニコラ・ユタナン・シャルモ

パリ生まれ。現在は東京を拠点とするキュレーター、写真家、クリエイティブディレクター。約10年間日本に暮らし、大手工場と共同で日本限定で生産するアパレルブランド〈Sillage〉を設立した。その後、国際的なブランドとファッションイメージやストーリーテリングを手掛けるクリエイティブエージェンシーを設立し、その後、アンティークと現代のものが並ぶ、クラフトと時間を大切にする空間〈Galerie 21〉をオープン。 作品は一貫して旅の伝統と手作りのものの力を探求している。

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