TOWN TALK / 1か月限定の週1寄稿コラム
【#4】美しい心地よさ
執筆:マテウシュ・ウルバノヴィチ
2026年2月1日
僕にとって、アニメーションスタジオやデザイン事務所に属さないでいる最大のメリットは、「ほぼどこにでも住める」ということです。物価や保育サービスの有無など、考慮すべき外的要因はいくつかありますが、例えば今後2年間は北海道に住むと突然決めたとしても、移住することに大きな妨げはありません。
一方で、日本ならどこでも良いということではなく、自分の心境に良い影響を与え、創作活動に前向きに取り組める場所は限られているようです。僕の描いてきた絵からは、その明確な証拠が見て取れます。ですから、アートのロケ地探しをするときは、いつも「心地よさ」のアンテナも張るようになりました。この近所は、暮らしにも適しているだろうか? 景色は僕の創造性を刺激してくれる? この雰囲気は、今後数年間、家族を育んでくれるだろうか。
独立後、僕らはそのような「良い場所」に恵まれ、何度か引っ越しました。江ノ島の近くで風光明媚な2年間を過ごし、清澄白河で江戸文化に浸りながらさらに2年間を過ごし……。そして、最近まで僕たちを支えてくれたのは深大寺です。
初めてロケハンで深大寺を訪れたとき、その美しさに驚きました。境内を歩くと、まるで秘密の魔法の場所に足を踏み入れたような、凛とした気分になります。それはもしかすると、こぢんまりとしていて、小さな谷間にひっそりと佇んでいるからかもしれません。周囲の公園や植物園は、その感覚をさらに高めていますし、美しいお寺、そしておそらくそれ以上に周辺のお店や蕎麦屋からは、時代を超えて培われた日本の雰囲気がたっぷりと漂っています。それは、僕がいつも探し求めているものです。さらに素晴らしいのは、深大寺が生き生きとした観光地でありながら、生活の場としての地元らしさという魅力も持っていることです。
何百回も歩き、何千枚もの写真を撮り、そしてたくさんの絵を描いた今でも、もう一度訪れ、何か新しい発見や視点を見つけたいと振り返る場所です。引っ越してからも深大寺で集めた写真から頻繁にインスピレーションを得ていますし、現在執筆中の本のベースにもなっています。
でも、もしかしたらもっと大切なのは、家族であの場所で過ごした数年間が、心温まる散歩と、文化や自然の温かさに満ちた、贈り物になったということでしょう。
僕は周囲の美しさを見つけ、アートを通して表現し、それで生活をしています。そのためちょっと変わったコンパスで、住み暮らす場所を探してきました。しかし、その感覚は、おそらく多くの人にとっても大切なものかもしれません。日々の暮らしを経験する場所が、人の個性や自分自身、世界に対する感情にどれほどの影響を与えているかということについて、いつも驚かされるのです。
プロフィール
マテウシュ・ウルバノヴィチ
ポーランド出身のイラストレーター。アニメ制作会社〈コミックス・ウェーブ・フィルム〉入社後、アニメ映画『君の名は。』など数々の作品で背景美術を手がける。2017年に独立し、『東京店構え』、『東京夜行』などの作品集を刊行してロングセラーになる。
Instagram
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Official Website
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